令和2年度 第38回現代俳句新人賞 北山 順(きたやま・じゅん)

・1971年(昭和46年)2月14日広島県生まれ(満49歳)
・2016年(平成28年)句作を始める。俳句総合誌や各種ネット句会への投句。参加自由な句会への出席など。
・2020年(令和2年)「街」入会。今井聖に師事。
 現在、「街」会員。

 

「平熱が違う」   北山 順

ブラウスの飾りテープに野分立つ
鰯雲大きく旅費の浮きそうな
賢治忌の臭みを消されたるジビエ
アキレス腱に幾度も触れる鵙日和
其処此処で着替えていたる秋祭
後輩ができたと笑う草の花
アレンジの酷き戯曲を着ぶくれて
義士の日のテディベアよりふとノイズ
唇は歪なパーツ雪催
遠火事や話術巧みな人憎む
絨毯に描く人差指の歌
紫のマフラーを振り応援す
色も形も任され母の日記買う
皆の初笑いとなりて眠られず
獅子頭町の境を折り返す
神主がくれた蜜柑を持て遊ぶ
冬林檎そもそも平熱が違う
Y軸の果てなく豆を打ちにけり
葉牡丹や腰反り返るほど笑う
てらてらと照りたる涎春の土
孕鳥くだらぬ二択迫られる
十数え終え紫雲英田を去りにけり
掌の蚕実習最終日
霾やコロポックルの服を縫う
荻窪の朧へ水を買い求む
清明や連なり確かなる手足
紫はゆっくり褪せる春の雷
ダブルスのぽこんぱこんと陽炎える
奥付の日付は未来寺山忌
制服の女子リフティングせし五月
たかんなや園児らの顔ぼかされる
転校生を冷やした胡瓜にて誘う
夾竹桃割れども赤は濃ゆき色
子と父を木々の遮る貸ボート
コンセプト通り海月の癒す部屋
十薬の一際低く咲かんとす
友の子と同じ名の薔薇だと思う
短夜のラジオネームにある自虐
居候麦茶を沸かし始めたる
日雷モツ煮をはさむコッペパン
逆転のナイターおむつ持ち上がる
美容師が戻ってこない大夕焼
引き摺られたがる子犬や夏の果
車掌役演じる少女広島忌
炭酸に噎せる広東語や残暑
墓参黒飴二つ濡れており
白芙蓉ときに前任者の気配
後ろ手にゆっくり回る踊りかな
鹿よぎる夜や製本の美しき
ガス台が傾いている流れ星

※句は現代俳句データベースに収録予定です。
※略歴は受賞時点のものです。