平成28年度 第34回受賞者 赤野四羽(あかの・よつば)


・昭和52年7月23日、高知県高知市生まれ。現在三重県在住。
・平成23年(2011)東日本大震災および福島第一原発事故に衝撃を受け、散文では表現しきれない「なにか」を託して句作を始める。
・平成27年(2015)ミニ句集「世界を俳に」をマルコボ・コムより上梓。
・平成28年(2016)第三回摂津幸彦賞佳作。

  命を運ぶ        赤野四羽

真っ青な海に倫理が滴れり
鉄線花譲るべからず濡れ歩け
油照兵士は壁と壁になる
水浸しの紫陽花父盲いたり
侮辱せよ真白い夏服に着替え
百合の木や生は沈黙ならざりき
神のみが水母正しくおそれけり
ページ繰る音の軽くて秋の蛇
あらばしり幸福語らしめる夜
失われたものは還らぬ山葡萄
ゆるゆると歩め鶫は遅れくる
悔しさのような病や銀杏散る
熟したるおとが零れる星月夜
茄子の馬とうとう姉の夜がきた
少しだけ約束してよ虫篭に
月を知る鳥は夜には従わぬ
毛皮きて少女はきんいろに濡れる
雪女祝うひかりの濃い淡い
誠実に鼬の罠は降りてくる
吸殻のようなからだで鮃食う
もう何度ストラップの熊よみがえる
短日や視線たがいに縛りあう
君だけの時間にもまた雪が降る
悦楽や凍蝶重なりあわず落つ
掘りつづけ枯野の果ての自由かな
あまい指からだのなかに遠蛙
下萌や昏いところにある兆し
意志はさて飛んでいくのか蜆汁
永き日に肩甲骨のみぎひだり
ホットドッグ頬張り赤い花種蒔く

※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。