平成30年度 第36回現代俳句新人賞 なつはづき(なつ・はづき)

・昭和43年(1968)6月22日、静岡県生まれ。
・平成20年(2008)母の影響により俳句を始める。
その後、ネット句会、神奈川県現代俳句協会のブロック句会、現代俳句協会の火曜教室(講師:対馬康子)等で俳句の経験を積む。
・平成28年(2016)「青山俳句工場05」(代表:宮崎斗士)に参加。
・平成29年(2017)「奎」(代表:小池康生)入会
・現代俳句協会会員、神奈川県現代俳句協会幹事(横浜ブロック ブロック長) 

「からだ」     なつ はづき

はつなつや肺は小さな森であり
五月来る鉛筆すべて尖らせて
夏あざみ父を許すという課題
森はふとひかがみ濡らし楸邨忌
右手から獣の匂い夏の闇
地に刺さる喪服の群れよ油照り
日傘閉じここに暮らしがあった海
ふと触れる肘ひんやりと原爆忌
身体から風が離れて秋の蝶
夕花野ことば何処へも飛び立てず
宝石箱に小さき鏡野分来る
母の背が饒舌になり鰯雲
チンアナゴみな西を向く神無月
まどろみの隙間ふくろう息継ぎす
次々とひとりのかたち綾取りは
バイオリンソロは佳境に冬木立
日向ぼこ世界を愛せない鳩と
我儘はひとことで足る冬かもめ
沈黙の明るく置かれ晩白柚
端っこの捲れる笑顔シクラメン
雨水とは光を待っている睫毛
ミモザ揺れ結末思い出せぬ恋
クッキーの微かな湿り鳥雲に
リストカットにて朧夜のあらわれる
花疲れ鳴りっぱなしのファの鍵盤
初鰹祖母が最後に笑った日
昨日から革命中のなめくじり
薔薇百本棄てて抱かれたい身体
蟻地獄母を見上げている少年
まなうらに白夜の記憶頰打たれ

※句は現代俳句データベースに収録されています。
※略歴は受賞時点のものです。