平成29年度 第35回現代俳句新人賞 赤羽根めぐみ(あかばね・めぐみ)

・昭和47年7月9日、栃木県栃木市生まれ。東京都在住。
・平成17年(2005)「俳句の缶づめ」への投句をきっかけに作句スタート。「いつき組」に参加。
・平成20年(2008)「軸」入会。秋尾敏に師事。24年「軸」同人。「軸」新人賞、29年努力賞受賞。
・平成26年(2014)「南風」(津川絵理子・村上鞆彦 主宰)入会。
・現代俳句協会会員、全国俳誌協会会員。

 

 

 

 

 

 

「おりてくる」    赤羽根めぐみ

生と性と死と朝の蜘蛛おりてくる
松田優作帽子の下から薄暑
海図貼る喫茶を冷房に沈め
関心は縫い目の如しひるまの蚊
水筒鳴らす山椒魚が居る
桜桃忌椅子に甘えている男
紫陽花の履歴の白にゆきあたる
天からの折れ釘を手に向日葵畑
味噌汁の味噌の重力秋に入る
糸瓜忌の鞄変形して軽し
空蟬の裂け目に声のような糸
流星の子らを率いて横断す
熟睡の猫の酸っぱさ秋の雨
黒出目金は壁に額を秋深し
ずれている林檎の種や摩天楼
冬晴の果てなきノート折れば海
同じ文脈を来て白鳥に流木に
ストーブに惑星たちの椅子が無い
寒晴れの粘土めきたる病み上がり
首の裏つめたしフランス製インク
受付の花瓶に似合いそうなセーター
うさぎ抱かれて足首を交差する
サンドイッチの面積を囀りぬ
白梅は切手の位置に会いに行く
薬屋のカエルの濡れていて卒業
初虹やハムのかたまりに刃
8ギガの春夕焼を出力す
赤インキ淋し遅日の指の腹
晩春の迷子の記録水を買う
葉桜やロックフォールに星の息

※句は現代俳句データベースに収録されています。
※略歴は受賞時点のものです。