平成20年度 第26回受賞者 岸本由香(きしもと・ゆか)

昭和39年、兵庫県生まれ。兵庫県在住。
平成 6年、「青玄」入会。
平成 9年、神戸新聞俳壇最優秀年度賞受賞。
平成10年、青玄新人賞受賞。
平成19年、現代俳句新人賞佳作。
「暁」「球」所属、現代俳句協会会員。

「鶴鳴く」  岸本由香

花堤ぼんやりと人恋ひたれば
蝶を野に飼うて三人姉妹かな
烏賊に軟骨わたくしに骨なきところ
身ほとりを冷ますあやめを植ゑにけり
夕桜あけたてしづかなる人と
木簡の欠片ここにも養花天
羅や水族館に鰭あまた
梅雨の夜の標本室に匂ひあり
黒髪を減らす父母冷やし飴
この道の果ては洋館夏の蝶
晩涼や桐の箱より大首絵
雑技団育ちの童色鳥来
いちじくに指密会を見てしまふ
好色のまことしやかにとろろ汁
ぬくめ酒町屋跡より鶴の骨
木賊どれほど我に等しき一駄とは
母の帯の鶴かうと啼く夕冷に
流星を見しと机のうへにメモ
月の庭幾度も思ひ出す鼻梁
仏壇を閉ぢれば闇や雁の声
てのひらに受けるならくちあけの雪
ころおんと鶴鳴く千代紙を買ひに
猩猩緋纏うて雪を踏みしめむ
ゆふさりの雪に風呂敷濡らさぬやう
凍鶴になるらむ此処に鶴折らば
うすらひや息づかひはた翅づかひ
鳥籠に鳥ゐてしづか涅槃雪
きんいろのスープを皿に抱卵期
春眠のさめぎはに聞く鳥のこゑ
花の種買ふためだけに靴を履く

※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。