昭和53年度(1978)第25回現代俳句協会賞 友岡子郷(ともおか・しきょう

昭和9年9月1日、神戸生。本名 清。29年夏より作句、初め「六甲台」「青」「ホトトギス」「かつらぎ」等に投句。33年以降「青」の編集を担当、波多野爽波に師事。43年「青」を辞し、飯田龍太の「雲母」に投句。49年「雲母」同人。52年「第1回雲母選賞」受賞。また、43年より学生時代の仲間と同人誌「椰子」を発行。
句集『遠方』(44年刊)

第25回現代俳句協会賞受賞作  友岡子郷

(昭和53年度作品)
八月広島もちの木はふと暗し
ヒロシマ忌水にきらめく鮠(はや)を見て
デッキに吾子この赫日は夏の某
草の実や海は真横にまぶしくて
ゐのこづちいづこに居ても一落暉
石臼干す帰燕のあとのがらあきに
家見えてふいの火明り栗林
刈田星かぶりて雷児忌はいつぞ
春萱に氷(ひょう)の山(せん)その氷(ひ)のひかり
蛇崩れの坂を水仙負ひ下る
春の村風のはざまの直炎(ひたほのほ)
潅仏に青潮さはりなくながれ
石屋より鏗(こう)と音花ふぶくなり
空とぶ花いくたりも辛子(からし)に噎び
浜靱(はまうつぼ)耳しんしんと沖はあり
通し鴨まひる音なき石山と
橋も雫し雨つばめ鳴き移り
血を採って涼風に置く籠うさぎ
癒えたれば白(はく)地図一枚の涼しさ
帰らむに藺(い)田の稲妻つづくなり
(昭和52年度作品)
枇杷青しうしろに廻す帯の総
汐まねき夕日の家路はるかかな
父の寂しさ水なきプールの鉄梯も
父に肖(に)るはさびしからねど青嶺聳(た)
一燕ものこさずに去り鍛冶の町
皓として臥すのみの父野分中
秋彼岸麓の馬の紺に見ゆ
やまなみの一つ岩山歳の市
十二月潮路晶々たるを見て
小米雪こころのかよふまで漁師と
(昭和51年度作品)
白雨過ぐ樹の爪あとは山の鳥
木場泊り蕾の百合の一束と
蜜柑島喨々の音いくたびも
冬の日の蠟石あそび船くるまで
古毛絲玉日当るは楢林
白き凧韻きて真夜に覚めしなり
春風の壁ひとの名か船の名か
(と)の海の痩せ島なれどつばくらめ
立消えの腕ほどの榾春の炉に
(を)ごころの騒立つ潮路春の北風
(昭和50年度作品)
つばめ巣にもどと夕潮真白に
窓大きくて夏雲の悲喜も見ゆ
走馬灯草いろの怨(えん)流れゐる
幼き問ひと涼風に噎(むせ)ぶ日ぞ
白州三人踊りの櫓ひそと組む
船数へながらすすきの銀の中
つばめ去る空も磧も展けつつ
林檎箱とどきて三日海も平ら
空席があり冬山の紺の襞
潮迅しと葉牡丹の畑より

「現代俳句協会会報 No.86 1978年10月号」より