平成22年度 第28回現代俳句新人賞 月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)

1965年 長野県生まれ。92年よりアメリカ合衆国ニューヨーク市在住。
2002年 詩歌のウェブサイトにて連句・短歌・俳句と出会う。句作開始。
2004年 「海程」入会。以来金子兜太に師事。
2005年 「豆の木」参加。
2006年 「青山俳句工場05」参加。
2008年 海程新人賞受賞。「NY句会」・「方舟」(NY)参加。
2009年 豆の木賞受賞。「卵の会」参加。 「豆の木」「青山俳句工場05」「卵の会」「方舟」(NY)「NY句会」「湯島句会」ほか多数のネット句会に所属。
現代俳句協会会員、「海程」同人。

「ハミング」    月野ぽぽな 

  蛇穴を出て青空の青沁みる
  ふくらはぎの深さに藤の花咲けり
  白木蓮ときには濁るため歩く
  ぶらんこの鉄に戦歴あるだろうか
  陽炎はとてもやわらかい鎖
  さんしゅゆの真昼は遠い風の地図
  鈴鳴らすように旅人汗をかく
  あめんぼう宇宙ぽろんとさざなみす
  短夜のグランドピアノ獣めく
  ピッチカート蛍ピッチカート蛍
  先すでに草になりたる髪洗う
  舌先の尖る泰山木の花
  夏の魚銀色よりも静かなり
  その中に崩落の音花カンナ
  泣くために溜めておく息夕花野
  手紙読む月の樹海をゆくように
  山里に霧の気配りゆきわたる
  母たちは朝顔色にほほえみぬ
  少年の扉やわらかキリギリス
  黄落す光が重たすぎるとき
  まひるまの淡き骨格秋しぐれ
  自らに逆らうかたち稲光
  爪で剥がした痕であり朝の月
  狼の目に中世の風ありぬ
  毛皮より短きいのち毛皮着る
  傷口に触れないように山眠る
  みずうみは凍てて翼の昏さかな
  春の鳥水平線をつまびくよ
  桜咲く乳房あることたしかめて
  佐保姫のハミングをするときは風

※句は現代俳句データベースに収録されています。
※略歴は受賞時点のものです。