昭和56年度(1981)第28回現代俳句協会賞 齋藤美規(さいとう・みき

1923年12月6日 – 2012年12月26日
本名 齊藤克忠(まさなお)。
大正12年12月6日新潟県下早川村(現 糸魚川市・現住地)に生まれる。
昭和16年 旧高岡高等商業学校時代に先輩に誘われて出席した句会が契機となり、俳句を始める。
昭和17年 「寒雷」に入会し投句を始めるも、戦中戦後の事情等により、昭和33年まで作句を中断。
昭和35年 中野弘一主催の「海峡」に入会。
昭和36年 和知喜八主催の「響焰」に入会。森澄雄代選の寒雷集巻頭に入る。
昭和39年 「寒雷」暖響会作家(同人)に推挙される。
昭和45年 森澄雄の「杉」が創刊され、同人として参加。第一句集「花菱紋」上木。
昭和56年 俳誌「麓」を創刊し、主宰。「響焰」「杉」「海峡」の同人を辞退。第28回現代俳句協会賞受賞。
平成18年 第6回現代俳句大賞受賞。

著書 
句集「花菱紋」「鳥越」「地の人」「路上集」「桜かくし」「海道」「白寿」「六花集」「春の舞」等俳論「俳句の風土」等

第28回現代俳句協会賞受賞作  齋藤美規

葉桜となる山海の大荒れに
人が通れば樹の上の法師蟬
鈴虫の甕が置かれて昼と夜
冬至の日人あかあかと通るなり
晴天の三日つづけて餅を食ふ
紅梅や火の絶えしあと杳として
雪解ける越後の山をさらけ出し
二羽飛んでもともとの二羽通し鴨
かはたれは山のあかとき竹煮草
人が田を朝からあるく油照
道へ出て木の夜叉ぶしの豊年か
芋の秋おもしろきとき寺の鐘
穭田に一戸婿とりむすめゐて
雪嶺や鶏鳴渚までとどく
指のする端末装置笹子ゐて
怖ろしや雪国に畦現はるる
字ひとつ霞の中に山と海
雀隠れといへり日曜百姓は
ひるまへの屋根に人ゐる田を植うる
青柿が青し線香二本づつ
授業参観日父が来て棗の木
蛇穴に入りてしまふ老婆の死
雪山の障子をひらきたるかたち
冬夜母右眼見えぬと見せにけり
雪の上を人があるいて雪の果
ベッド空いてる梨棚の剪定夫
榛の花日月通る傘さして
すこし垂れ流し春田の養豚場
手庇を何回したり春の山
どこからも人の出て来る甘藷の芽