2002度 第57回受賞者 あざ 蓉子(あざ・ようこ)

昭和22年、熊本県生れ。玉名市在住。
昭和54年「天籟通信」に入会。
昭和63年、第12回天籟通信賞受賞。
平成2年、第22回九州俳句賞受賞。
平成12年「豈」「船団」入会。
平成8年、第37回熊日文学賞受賞。
平成10年「花組」創刊主宰。
平成13年、第6回中新田俳句大賞「スウェーデン賞」受賞。
句集『夢数へ』『ミロの島』『猿楽』

第57回現代俳句協会賞受賞作  あざ蓉子

あおぞらの蝶は木の股記憶して
蝶々は平城京を揺らしけり
怨霊に肛門あるべし春の暮
麦秋や家族写真の二・三枚
落球と藤の長さを思いけり
午後からの言葉垂直ねむの花
ノートには不思議な鳥の来ていたり
ざぶざぶと蝸牛の視力なり
裂くような背中のうしろダリアかな
六月のアジアの傘にうずくまる
半身とか夏の暮とかラムネ玉
恐竜のなかの夕焼け取り出しぬ
空蟬の百並びたる戦意かな
戦中の靴にまひるの夏の蝶
遠泳のあの冬晴れにぶらさがる
黒日傘のままであった草原
月の砂漠の劇場ほど泣きぬ
退屈な茄子の体を洗おうか
天上に茗荷のふえることのあり
秋彼岸足音ばかり空ばかり
大皿に霧ただよいし妣の国
百物語から曼珠沙華一本抜いた
紅葉山だんだん足が長くなる
公達のぞろぞろとゆく虫の籠
桃の影踏んでいもうと五・六人
草原の雲混みあっている中華鍋
体じゅう十月の魚図鑑
桔梗など兵隊ごっこ佳境なり
韓国(からくに)にうさぎのはねる日和かな
梟のしばらくは闇それからも闇
快晴の冬木少年探偵団
ぼたん雪鳥より鳥の生まれけり
訳を話せばうさぎ百匹ふえた
そしてまた椅子動かして梅の花
雛の夜やいずこより来る顔かたち
雛の日の雛人形に骨のあり
胃腸より長き廊下や桃の花
尾のごとくものを燃やせり春の暮
お手玉のなかの空気と桃の花
全身のごとしうしろの桜山
はくれんの吐く白昼の男なり
原っぱへ死にゆくボール春の暮
和箪笥にもの申しいる蜆蝶
六月の猫は曇天水をのむ
少年の夏夕暮れのフエキノリ
僧の来て掃きわけている蟻その他
人体は階段である黒揚羽
ポンポンダリアきのうも今日も猫舌
夏の蝶シートベルトによく触れる
空蟬のなかは青空市場かな

※受賞者略歴は掲載時点のものです。