平成3年度 第9回現代俳句協会新人賞 中里麦外(なかざと・ばくがい)
1943(昭和18)年群馬県前橋市生まれ。
1964年ごろより俳句に手を染め、1972年「石人」入会。後同人会長。「諾(う)の会」会員。群馬県現代俳句協会理事。
1981年群馬県文学賞。
1982年現代俳句協会評論賞佳作。
1983年現代俳句協会評論賞。
1988、1990年現代俳句協会新人賞佳作。
1991年、現代俳句協会新人賞佳作。
1987年句集『吹虚集』。1990年『阿含』。他に『村上鬼城の研究』『長谷川零余子』『相葉有流』。
「九鬼(くかみ)」 中里麦外
花吹雪いかな身の毛のよだつらむ
鬆(す)が廻りたるまま春が春惜しむ
ものの微に入って彼岸の身繕い
百叩きされたる春を思い出す
死の刺のふっと芽吹くは迂闊なり
言の葉も契りたる夜は紅葉す
前生は木枯しならむ笛を吹く
萱を負うもののあわれに目覚めけむ
鎹(かすがい)に咲いたる花を人に秘す
草食の身から出た錆甘からむ
元出羽の鬼の乳首を吸わむとす
雁首を揃えたる日の永かりき
鶏頭へわが血も寂と通うらむ
みな白地着ている村を素通りす
骨格のおぼえめでたき草を焼く
老瀑を吹き割り急ぐものに化す
蓮にのりそこねたる身をいつくしむ
夏の日の零るる砂をこぼし飽く
おのが香に酔いたる花を小脇にす
枕物狂いは舞いて霞刷く
円内に打ちたる水を打ち殺す
日に晒すものなき午後と思いけり
老螢身は紅白にひかるべし
魂萠えのわが君は何手玉にす
逆上りするたび吉野葛に触れ
夢に夢立ちたる虹をわたりゆく
鬼解(かみと)きの滝はうたるる声を出す
玉蜻蛉不思議な面の前を過ぐ
百(もも)つ瀬に沈めたる身の花あかり
刈萱の主(ぬし)はすずろなものを吐く
※略歴は受賞当時のもの。
平成11年までは「現代俳句協会新人賞」。応募資格に年齢制限がない。