平成元年度 第7回現代俳句協会新人賞 竹貫示虹(たけぬき・しこう)
昭和4年1月13日船橋市生まれ。
40歳から俳句を作り始め、昭和46年京鹿子に入会。
昭和50年同人、京鹿子新賞。
昭和51・53・55・61年京鹿子大賞。
昭和53年句集『ひゞき川』上梓。
昭和56年現代俳句協会会員となり、昭和60・61年新人賞佳作。
「昭和極月」 竹貫示虹
コピーの街で裸木に触れてゐる
切株のじんじん寒しにぎりめし
降り止みし朝は絵本にもどる橇
ふきのたう大きな足がやつてくる
ものさしに母の旧姓梅つぼむ
白梅や老来の肘張るもよし
煙突が立ち大根の首寒し
一頭の雲を放ちし春隣
くもり空節分過ぎの鰯燒く
芽仕度のゆつくりたしか神楽笛
雁帰る机のまはり散らかして
蟻穴を出て古墳より人の声
うやむやに喉を過ぎたる海雲かな
太芹や近道をせし遠まはり
フルートをやはらかく持つ花林檎
同穴のおもひ微に入るかすみ草
蟻地獄普摂の額をかかげたる
足跡に雲ゆかしめて澄む植田
衣被生きうつしとはむごきこと
日に燒けぬところ愛しも一季節
新涼の出口と青く矢印す
坂道のむかうは見えず迎鐘
闇の杉踊り太鼓へ立ち上る
竹やぶの向う九月の空細身
大原時雨色眼鏡かも知れぬ
小春日に釘打つ音し聖痕なし
蛹ともならず白障子に籠る
数へ日の踏切の棒下りてくる
凩につかまつてゐるポプラの木
昭和極月海底の三八銃
※略歴は受賞当時のもの。
平成11年までは「現代俳句協会新人賞」。応募資格に年齢制限がない。