平成6年度 第12回現代俳句協会新人賞 河 草之介(かわ・そうのすけ)
昭和8年1月北海道浦河町生まれ。
昭和25年から句作。
昭和27年「緋衣」入会、34年同人。35年同誌終刊。
昭和40年「氷原帯」同人。41年から44年まで編集に携わる。
昭和41年第4回風餐賞(新人賞)受賞。
昭和44年第16回氷原帯賞受賞、平成4年同誌退会。
昭和51年から「広軌」同人現在に至る。
現代俳句協会会員。
「家族」 河草之介
地球回る音に引かれて残る雪
時が震え斜めに雪が降っている
一日風を吸わせて冬の靴しまう
長雨や対岸で購う花の種
春を喜び無口つらぬく針葉樹
百歳の雛百を越す雪解なか
犬派猫派に家族が分かれ万愚節
水芭蕉言葉すくなの順に並び
防火扉をいくつも潜り恋の猫
どこ捜しても金槌が無い春の昼
象の中の小さい象に桜散る
霧重しカレーライスを箸で食う
妻を空気にたとえるも愛夕桜
蟻登る木の沈黙を見ていたり
江戸川乱歩と棲み分け暑し中二階
流木と父が流れて行き晩夏
擬似餌のような夏服で出て非行して
遠泳の真中にいて籖を買う
やわらかな家族冷麵音たてて
行く夏や長女の部屋に恋の音
鰯雲裏から誰か見ていたり
刑務所までの不孝通りを秋桜
コスモスのはかなさばかり眼鏡替え
木のことわざ水のことわざ鳥渡る
秋冷や家族落ち合う駅があり
胃を切られ寒い身長計らるる
共働きの目と目で話し葱を買う
涙もろき冬木一族一列に
雪国や金庫に臍の緒をしまう
根雪来て木のたましいが木を離れ
※略歴は受賞当時のもの。
平成11年までは「現代俳句協会新人賞」。応募資格に年齢制限がない。