平成15年度 第21回現代俳句新人賞 松本 勇二(まつもと・ゆうじ)
1956年生まれ。愛媛県出身。松山市在住
83年「虎杖」入会。
91年「海程」投句開始。同年「虎杖」賞受賞。
95年「海程」新人賞受賞。同年「海程」同人。
98年台16回現代俳句協会新人賞佳作。
99年松山俳句協会評議員。
2000年愛媛県俳句協会理事。
02年「虎杖」副編集長。
句集「直瀬(なおせ)」
現代俳句協会会員。
「夏 野」 松本勇二
翡翠を見し日の昼のパン照るや
巣に垂れし藁にすがりて眠るかな
負けた子が逆さまに立つシャボン玉
日に直にちから授かる雲雀かな
人逝きて合歓の樹上に二、三日
中年を黄色の塀で仕切る初夏
鷺の雛黴のかたまりとして立てり
木を揺すり白南風を呼ぶ山の民
岬青し沖に子狐ほどの闇
さすらいと言って照れたり青葉木莵
鍬の柄に靴干し暮れる夏の家
夏蓬日盛りは根に沈む魂
スイッチは背中の辺り原爆忌
夏野稀に白き衣の父祖見せる
青空へ帰る途中の捕虫網
徘徊の鮎にあらわる大海原
延々と道掘り起こす夏かな
鮮やかに蘇るはず茄子の馬
定住へ熊蟬の穴三つほど
台風のいつも空虚な目に見らる
瓢箪と老人が照る村かな
百代の過客と言いて涼みおり
こんもりと森に詰まっている真夏
神官と鴉がふわり滴りぬ
野分過ぎ最初に息をするうさぎ
空蟬になりしか風がよく通る
来し方を欅に語る蟬の殻
色褪せた鵯たちに過ぐ晩夏
星月夜腹出して寝る野のねずみ
我が夢のかけらを拾う星月夜
※句は現代俳句データベースにもアップされています。
※略歴は受賞時点のものです。