平成16年度 第22回現代俳句新人賞 奥山 和子(おくやま・かずこ)
1954年生まれ。香川県出身。三重県在住。
94年地元「鉾杉」にて投句開始。
98年「海程」にて投句開始。同年、「木」に入会。
2001年「卵の会」にて投句開始。
現代俳句協会会員。
「硝子壜」 奥山和子
目覚めかなぜんまい谷より風の来て
迷路には抜け道のありふきのとう
三月の土竜の土を踏みにゆく
春キャベツやわらかく抱く不安かな
柿若葉どの葉も小さな傷をもつ
春の鶏昔眼医者の裏の庭
花時の真っ白な皿配りおり
青梅のみんなかたまり反抗期
なめらかに台詞はじまる夏柳
雨蛙小さな時間膨らます
真夜中の方向音痴なめくじり
雨三日祈り過ぎたる時計草
蛇苺油断で伸びる親不知
干魚の顔尖りいる半夏生
薄羽蜉蝣磨ききれない硝子壜
刹那かなからすうり科の花の貌
手のひらのトマト畑の余熱もつ
どこまでが夏夕焼けの悲鳴かな
村に住むきっかけとなり糸とんぼ
思い通りにならぬ朝顔鍵探す
朝採りのこのにがうりのきりょうよし
どの木にもひぐらし軸として私
きりぎりす悪態ついてふり返る
追い風にならぬ静けさ鬼やんま
新しいふうせんかずらの魔法かな
つまずくに丁度いい石彼岸花
どこまでも皿を並べて星祭り
それからの物語ありちちろ虫
包丁の切れ味ためす冬銀河
小春日のもめん豆腐の油断かな
※句は現代俳句データベースにもアップされています。
※略歴は受賞時点のものです。