平成17年度 第23回現代俳句新人賞 高橋 修宏(たかはし・のぶひろ)
昭和30年生まれ。東京都出身。富山市在住。
平成7年より作句。同9年より鈴木六林男に師事し、「花曜」入会。
平成11年、第23回花曜賞受賞。
平成12年、「花曜」同人、第7回西東三鬼賞受賞。
平成13年、「豈」に参加し同人。同年、第2回現代俳句協会年度作品賞受賞。
平成14年、第22回現代俳句評論賞、第31回花曜賞受賞。
平成15年、第32回花曜賞受賞。
平成16年、第17回北日本新聞芸術選奨受賞。
平成17年、詩集「水の中の羊」により第3回北陸現代詩人奨励賞受賞。「花曜」解散。
著作:句集「夷狄」、詩集「呪景・断章」「夏の影」「水の中の羊」
現在、現代俳句協会会員、俳誌「豈」同人、詩誌「大マゼラン」同人。
(有)クロス(企画デザイン会社)を経営し、クリエイティブディレクターとして活動中。
「亜細亜」 高橋修宏
蹠よりはみ出してゆく雪解川
麦踏むやメフィストフェレス背後より
陽炎の高さに少女歌劇団
煉獄は菜の花明りかもしれぬ
遊ばれて昭和に戻るしゃぼん玉
苜蓿踏みし者より兵となり
涅槃図に行方不明の父の居て
黄沙降るたびに波立つ石舞台
土踏まず空恐しき桜かな
天に浮くひとりのときの桜鯛
蜃気楼途中に鬚を生やしおり
麦秋や紙飛行機は戻らざる
羽抜鶏跳べばあらわになるアジア
黒揚羽昼の厠に入りきらぬ
余命とは未だ逢わざる槌の子ぞ
地震(ない)を待つ千のまいまい記紀の山
螢の火また結び目が見えており
月光のあと恍惚となめくじら
蛇苺ここに国家のはじまれり
漂うており炎天の朱の鳥居
青空のさみしさ匂う天瓜粉
八月や指紋をひとつずつ消して
天の河その一滴に鱶泳ぎ
油断して芒は舌を見せにけり
抱擁の影を出てゆく草の絮
かたまりて星雲をなす葡萄の実
林檎から原理が洩れてしまいけり
管楽器みな淫らなり十三夜
文楽の雪の昏きにある乳房
浮きあがる夜は抹香鯨かな
※句は現代俳句データベースにもアップされています。
※略歴は受賞時点のものです。