平成24年度 第30回現代俳句新人賞 中内 亮玄(なかうち・りょうげん)
・昭和49年(1974) 福井県生まれ。福井市在住。
・平成13年(2001) 「狼」同人。
・平成14年(2002) 「海程」入会、金子兜太に師事。
・平成18年(2006) 現代俳句協会会員。
・平成21年(2009) 第12回北陸現代俳句賞受賞。
・平成22年(2010) 第28回現代俳句新人賞佳作。
・平成24年(2012) 第47回海程新人賞受賞、「海程」同人。
「ゲルニカ」 中内亮玄
フクシマや晩夏の海の黒より黒
蜩は僕らを刻むように鳴き
少年の如し眠り二百十日
ケータイ握り海のどこにも繋がらず
春玉葱のひとつ耐え難い孤独
風がある昔誰かの蒼だった
桜散る余白をすべて手離して
青春が星を流してしまいけり
君ひとり桜はいつも風の葬
しゃれこうべ空梅雨雑居ビルの奥
本当は泳げないのですかたつむり
木漏れ日や買い物がてら飛び降りる
陽炎や戦争知らず英霊と呼べず
それぞれの寝覚めカワウソも兵隊も
明け易し少女に新品の手足
依願退職耳が軋んで真葛原
その曲の名も知らないのです月見草
十五夜のみんな普通に生きる歌
サンダルをひっかけ彼女戦場へ
いつまでもサイレン降り止まぬよ雨月
蟹の腹いつか哀しくなるいのち
欲望のついでに雪を掬ってみる
寒落暉その淋しさを食い繋ぐ
孔雀啼く虹を激しく咀嚼して
肺まで雪染みてポケットに拳ある
線路というにわかに冷えた親子かな
眼ふたつ冬のブランコ揺れはじめ
僕を見てと見てと少年風を打つ
冬の雷ガシャンと散った足の指
横顔を擦りむいている冬の風
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※略歴は受賞時点のものです。