平成26年度 第32回現代俳句新人賞 岡田 一実(おかだ・かずみ)
岡田 一実(岡田 眠)
・昭和51年9月5日、富山県富山市生まれ。
・平成18年(2006)、作句を始める。俳誌「いつき組」賛同。
・平成22年(2010)、第三回芝不器男俳句新人賞城戸朱里奨励賞受賞。
・平成26年(2014)、第三回大人の句集を作ろうコンテスト優秀賞受賞。
・現在、現代俳句協会会員、「俳句百年計画」賛同。
「浮 力」 岡田 一実
密封をたのしく生きる鷹柱
木の実降る常世の渦の眩しさへ
椋鳥は遠景を胎動とせよ
しひたけの白いところが怖くなる
靴箱・傘・無花果・箒・みな不在
黒ぶどう嚥下のすゑの明るくて
体育の日の育たない柱たち
管くぐる狼しろがねに濡れて
肺胞も八手も咲くがよろしかろ
山茶花のみるみる散つて見頃の江戸
底冷やみづを大きくふるはす木
パステルを暗く沈める寒い画布
ひかり降る寒さへ犀の口ひらく
書割の冬空はがしては雪が
死んでゐる以外は生きてゐる海鼠
君の見る森に寒鴉とゐた時間
双六を三つすすんで絶滅す
羽子板や婚期くるまできれいでゐる
玉針の玉ぞ春めく展翅の蝶
梅にうぐひす骨格に肉まつはるよ
紙風船この世の風を吐きて浮く
町ぢゆうに靴ある春の景色かな
入学試験四部屋に分かれゐて心臓
いちめんのなのはないちめんを裂いて鳥
羽根あれば羽根の浮力と水の春
初花や膚は光源を讃えけり
麗らかさ昨日見し鞠けふに照る
籠絡は梔子の朽ち初めし際
やはらかき灰とも火蛾に火の移り
にんげんに潮めぐりゐる溽暑かな
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※略歴は受賞時点のものです。