当協会は、2026年3月14日(土)、第43回兜太現代俳句新人賞(50句)の最終選考会を、「日本記者クラブ」にて公開の形で開催。
最終候補3作品について活発な討議を行い、下記のとおり最終決定致しました。
今回の応募総数は61編でした。

🏆第43回兜太現代俳句新人賞
 内野義悠「雨滴の窓」50句
 髙田祥聖「ゐしころ」50句
      
🏆第43回兜太現代俳句佳作
 後藤麻衣子「へその緒」50句

選考委員(順不同)

◎特別選考委員
小林恭二、穂村弘

◎選考委員
杉浦圭祐、瀬間陽子、董振華、仲寒蟬、成田一子、堀田季何

表彰式

2026年3月21日(土)午後2時より
東京都台東区「東天紅」上野店にて開催の令和8年度定時社員総会の席上にて顕彰。

🏆受賞作品

👤内野義悠(うちのぎゆう)

雨滴の窓

淡雪や繋ぐ手に海抜がある
野火を見し夕べだんだん血の濁り
菜の花忌帰船がずつと瞳の奥に
蝶きつとかすめた略歴のどこか
親しさや春の障子の穴そのまま
つくしんぼ発語のはじめ聞き逃す
点鐘や思ひすごしの朝を寝て
なりゆきに終はる禁煙水温む
春キャベツざくりまだ真つ白な部屋
素描点描古巣ほどけて息の凪ぐ
六弦の終の震へに海市立つ
風船の逃げゆくまぶしさの右手
撫でられてわかる このまま陽炎へる
本能を追ひ抜けば雷身籠りぬ
シナプスのちぎれゆくとき火蛾の聲
半醒の浅瀬をさつと翡翠が
アッパッパ汐の往き来をあしうらに
血縁の脆さを言へばほうたる来
クーラーの風向き変へて血判す
虹消ゆるはやさよ戸籍抜けにゆく
泣けぬ汝に削り氷の嵩高すぎる
黙契の午後なり蜘蛛の囲に一翅
解釈は岐れ蝙蝠低く飛ぶ
未満の夜瓶の闘魚の相隣る
さぼてんの萎れの花が朝を透く
ミスタッチひとつ流星ざんと降る
代用魚かがやく二百十日かな
竹伐るほどに上澄みに棲む心地
手鏡を伏せむ小鳥が来ますやうに
ずつと妬心ひとつながりの林檎の皮
二科展の汝の腕が半島に見ゆ
柿干してゆつくりきのふまで帰る
風炉名残不意の小雨を濡れて来る
因む土地因む血筋へそれぞれ霧
鳥を撮るときの心音冬隣
眼ぢからのゆるみ枯野の入口は
点景をたとへば蟷螂の枯れを
山眠る自画像とほく吾を離れ
くだら野へ悍馬放てる情事かな
説く唇や雪に気づかぬふりもして
狐火のとまる膨らみきつた肺
うつろひや浜のくぢらの屍へ陽
鶴の影降りるささめき撹しつつ
生ぬるい懐炉暗算投げ出して
日を跨ぎつづく通話や遠くに火事
くうらりと湯豆腐ゆらぐ鎮火報
焼芋を割りゐてなんとなく和解
あくび噛む聖樹ふつうの木にもどる
ホットミルク雨滴の窓を浅眠り
遍歴の涯の毛布に包む身よ

本名:内野義悠(うちのよしひろ)埼玉県在住
1988年 埼玉県生まれ
2018年 作句開始。炎環入会
2020年 第25回炎環新人賞。炎環同人
2022年 第6回円錐新鋭作品賞 澤好摩奨励賞
2023年 同人誌豆の木参加
    第40回兜太現代俳句新人賞 佳作
    第6回俳句四季新人奨励賞
    俳句同人リブラ参加
2024年 第1回鱗kokera賞
    俳句ネプリ メグルク創刊
2025年 炎環退会
    第15回百年俳句賞優秀賞
一般社団法人 現代俳句協会会員
公益財団法人 俳人協会会員

👤髙田祥聖(たかだしょうせい)

ゐしころ

ストローで耕すシェイク春浅し
王将のたまに働く霞かな
ふらここの順番待ちに付きあひぬ
はくもくれん影は安心して踏める
花びらをつまめば指のあたたかさ
記念写真みんな桜に背を向けて
黄塵万丈たましひは常に独唱
点として刺繍生まるる春の夜
かざぐるま風なきときをくつきりと
春の雲あれは精神的な吐瀉
花水木泣くときもある笑ひ皺
釣堀を花屑掬ふばかりかな
世界一舌打ちが下手ところてん
小さき団扇挟まれてゐるお品書き
火の逸り風の逸りの鵜舟かな
濡れてきて浴衣を躊躇はず絞る
雷の根を張り巡らせてゐて荒野
昼寝より目覚めて人を攫ひし眼
ギロチンの後にゼリーの生まれけり
閉ぢてやるにも目蓋のなき金魚
玉葱や右眼は左眼に逢ひたし
撮られては撮りかへしをる水着かな
サイダーのこきふをぢつと見てゐたり
時の記念日蜂蜜をさかさまに
向日葵に向日葵疲れありさうな
髪洗ふみづはいつ眠るのだらう
秋暑し授乳のかほの俯ける
鈴虫の虫の部分を辞めたがる
耳いつも開きつぱなし秋の草
秋風やもなかに屋根と床のあり
爽やかに茶碗の鶴をひとまはし
天高し絵筆に忘れやすき色
ゲルニカとなるにもありふれたからだ
澄むみづに触れてみるみる元のみづ
飲むほどにみづの傾く大花野
ままごとの一日短し吊るし柿
青虫のまつするまつすると歩む
活版に横文字のあり烏瓜
冬鳥や直訳といふ遠回り
封筒に字の透けてゐる漱石忌
わが家に猫ゐし頃の隙間風
糊代のわづかに雪を待つてをり
雨降つて音の底なる冬座敷
場所取りの苦手な氷柱かもしれぬ
湯豆腐や正しきひとは昼に生き
どてら着て友らにどてら流行らしむ
鯛焼やいまは指輪の似合ふゆび
母の手の木にも花にも似てペチカ
後付けの探梅行となりにけり
水引の粗く刷られて春を待つ

本名:髙田大介(たかだだいすけ)神奈川県在住
1987年 神奈川県生まれ
2019年 いつき組参加
2022年 楽園俳句会入会
2024年 俳句同人リブラ加入
2025年 俳句雑誌noi誌友
    俳句ネプリAKANTHA加入