会長/原田要三 事務局長/河合秀美
※お問い合わせは、現代俳句協会事務局にお願いいたします。
群馬県現代俳句協会の紹介
群馬県現代俳句協会は、現代俳句協会の群馬県の地区組織として、昭和62年9月北開東地区現代俳句協会の発展的解消に伴い結成されました。
毎年3月末に定例総会と併せて俳句大会を開催するとともに、吟行会を行い、会員相互の研鑽と親睦を深めています。また、俳句大会には近隣の地区協会に講演と選者を依頼するなど県単位の地区交流にも努めています。
令和4年度行事予定(2022/05/24更新)
◇夏の紙上俳句大会
◇秋の吟行会
令和四年十月二日(日)前橋市・大室公園
◇研修句会
令和四年十一月六日(日)前橋市・県庁昭和庁舎 一時半
◇群馬県現代俳句協会大賞募集
未発表作品二十句 締切り令和四年九月三十日(金)
※いずれも詳細につきましては一月十日発行会報、案内書参照
問い合わせ先 事務局・河合
地区会報 (2022/06/22更新)
開催された行事などについては、下記の会報をご覧下さい。
群馬県現代俳句協会会報No.68 2022年6月10日発行
群馬県現代俳句協会会報No.67 2022年1月10日発行
NEWS(令和4年度)(2022/05/24更新)
令和四年度定期総会中止(2022/05/24更新)
令和四年四月十日(日)に予定されておりました群馬県現代俳句協会定期総会は感染症コロナウイルス蔓延防止に鑑み中止となりました。
令和二年、三年に次いで三回目の中止です。会員各位には文書にて令和三年度事業報告、会計報告並びに監査報告、令和四年度事業計画案を郵送、会員全員の承諾を得ることができました。
第三十六回俳句大会につきましては紙上俳句大会に変更しました。困難な状況ですが会員、会員外の五十八名から実に百九十の投句がよせられました。
結果につきましては下記の通りです。
第三十六回俳句大会俳句作品(2022/05/24更新)
現代俳句協会賞
鐘の音をいびつにしたる空っ風 堀越 胡流
群馬県教育文化事業団賞
笹鳴きといふ静けさに歩を入るる 清水 里子
上毛新聞社賞
もともとの一人にもどり豆を撒く 斎藤 一平
毎日新聞社前橋支局賞
ほどほどに生きて卒寿や実万両 水村 幸雄
群馬県現代俳句協会賞
冬帽子この世の釘にかけしまま 狩野 優子
入賞
小気味よき嫁の返事や春隣 橋本 雅子
飛ぶ鳥も地に立つ吾も春夕焼 奈良千恵子
幼らの月へ漕ぎ出す半仙戯 本田 巖
牛小屋に牛の貌出す涅槃西風 武井 波真
泣くために流すシャンソン春の雪 田中 恵子
日の差して五百羅漢も春の貌 保泉 初音
出来る事見つける余生ふぐり咲く 小林けさ子
春ショールふさぐ心を包み込む 田中 恵子
天寿まで母の背を追い麦を踏む 斎藤 一平
退院の腹にしみ入る根深汁 水村 幸雄
草青む脚萎え妻に踏ませたし 野村 紘一
二人して始祖の貌して日向ぼこ 赤堀 琴代
過去未来その真ん中の春日和 芝根 南
※一句抄は、おそれいりますがもう少しお待ちください。
第二十九回群馬県俳句協会大賞 2022/01/31更新
「匹夫なれども」 本田 巖
三寒に耐へ惚けずに四温待つ
もう少し畑で生きたし寒九の雨
反骨の農夫三代虎落笛
初夢に力貰ゐて鍬を持つ
啓蟄や田に遊びゐて八十年
鎌止めて畔に腰かけ初音聴く
鍬を持ち朧の月を背に負ふて
かかさまは姉さん被り初蕨
春祭太鼓の桴は鍬胼胝で
鍬を持つわが生業や田水張る
友逝きて梅雨の重さの骨拾ふ
荒鋤の土塊見てゐる麦藁帽
夕焼を鍬に乗せゆき帰宅せり
老鶯や俺もお前もまだ啼ける
百姓は泥手で汗を拭きをりし
藍浴衣着たれば遺影の父に似て
芋嵐厨にありし火伏札
牛の背を撫でてをりたる秋袷
われ畑に鳥は塒へ秋の暮
産土に声を零して雁の棹
受賞の言葉 本田 巖
第二十九回群馬県現代俳句協会大賞のお知らせを頂き大変嬉しく有難く思っております。正に青天の霹靂の心境です。
吞兵衛仲間の先輩から酒ばかり飲んでいないで、一緒に俳句でもやらんか、と言われ俳句を始めました。
俳句を通じて多くの方々との素晴らしい出会いがありました。俳句の楽しさを教えて下さった先生、俳句の奥深さを教えて下さった先生、そして俳句を愛する先輩との出会いは私の背筋を伸ばしてくれております。平成二十六年には山蘆での飯田秀實氏と花や植物の語らい、そして渋谷道氏との出会いがありました。
俳句は魔物です。俳句に魅せられて十余年、先の見えない樹海もよき師のお陰で少しずつ光が差し込んでいるようです。自分の目で、言葉で、俳句を作る努力を続けていきたいものです。全てのご縁を大事に生きて参ります。
俳句よ、本当にありがとう。
最後になりましたが、選考の労をお取り下さいました先生方に心より感謝し、お礼を申し上げます。
【選後評・選考結果】
第二十九回群馬県現代俳句協会大賞は厳正な選考の結果、前橋市在住の本田巖氏に決定いたしました。応募総数四編の各選考委員の選後評、選考結果は次のとおりです。
中里麦外
今回の応募作品は四編と少ない。しかし、力作が揃った。「匹夫なれども」「墓洗ふ」を推した。
「匹夫なれども」は、日々の生活と人生が高いレベルで作品化されている。
三寒に耐へ惚けずに四温待つ
啓蟄や田に遊びゐて八十年
われ畑に鳥は塒へ秋の暮
「墓洗ふ」は、身内との心の交流が思い深くうたわれた作品が多い。
叱り育てし子に労られ桜餅
父あがめ母をたたへる秋彼岸
「英雄」は、詩眼の確かさとその表現力に注目した。
葉桜や本は帯より古びたり
クリスマスただならぬ世を灯すべし
「成行き」は、さりげなくうたわれた作品が捨てがたい。
成行きにまかす明け暮れ草の花
次回は、より多くの意欲作が登場することを期待したいと思う。
安冨耕二
俳句大賞選考の知らせが来ると今年も僅かになったと感じるが、本年はよいことも少なく気分が沈んでしまう。そんな中で「匹夫なれども」には積極的に生きようとする意欲を感じさせる句があって、ほっとした。
もう少し畑で生きたし寒九の雨
啓蟄や田に遊びゐて八十年
鍬を持ち朧の月を背に負ふて
「墓洗ふ」は思い出に耽けている様子が句より分る。
子の墓を洗ふ夫の背終始無言
蚊帳を吊る子の思ひ出に浸りたく
炉開きや帯にしのばす子の遺影
「英雄」には措辞の好きな句がある。
喚声のはみ出してゐる花筵
姿見に十一月のわたしかな
八月の空を掴めぬ両手かな
「成行き」は
白鷺のふわりと下りて田に紛れ
の句がよかった。
原田要三
「墓洗ふ」は、若くして亡くなったお子さんに対する親の思いを底流に、日常の季節の移り変わりをさりげなく詠んでいて共感した。
叱り育てし子に労られ桜餅
子の墓を洗ふ夫の背終始無言
牛蒡呉るる野良着の膝に泥つけて
「叱り育てし」の句は、厳格な教育方針とその子供から優しく労られる様子に、家庭内の躾の成功例として印象に残った。
「英雄」は、やや観念先行の句が気になる中で、仮名遣いなどに細心の注意をしながら諷詠されている点に魅かれた。
喚声のはみ出してゐる花筵
つまづけば膝の寂しくなる寒露
以下、「匹夫なれども」「成行き」には誤字と仮名遣いに気になる箇所があった。注意して句稿を清書して欲しい。
次回は多くの方の応募を期待します。
堀越胡流
四編でしたが力作揃いで悩みながら熟考した。一位に「匹夫なれども」を選んだ。
反骨の農夫三代虎落笛
啓蟄や田に遊びゐて八十年
われ畑に鳥は塒へ秋の暮
農業というテーマで生活を楽しんでいる。故に衒いのない自然体に魅せられた。
「英雄」の
魂のはぐれてをりし冬の蝶
クリスマスただならぬ世を灯すべし
などの混沌としたところに惹かれた。
「墓洗ふ」
叱り育てし子に労られ桜餅
父あがめ母をたたへる秋彼岸
身内を詠ったぬくもりを感じた。
「成行き」
鉄線やあれこれそれの日常語
一枚の紙に戻れぬ鶴渡る
発想の面白さや普段の生活詠に納得した。
今井 妙
群馬県現代俳句協会大賞というには四編。コロナ禍の影響でしょうか。
一位に「墓洗ふ」を選しました。心惹かれる句を挙げます。
猛暑日を労りあひて老いふたり
苦労せし顔ばかり寄り敬老日
みな母につながる話十三夜
私の父は戦死でした。気丈な母に育てられた私達でした。子供の頃の思い出と一貫して心打たれました。
二位に「匹夫なれども」を選しました。
反骨の農夫三代虎落笛
老鶯や俺もお前もまだ啼ける
力の籠った俳句で気力をいただきました。
三位に「英雄」を選しました。
葉桜や本は帯より古びたり
そうかと頷きながら本棚を見直しました。
四位に「成行き」を選しました。
澟然と今朝の日輪建国日
季語に対して「澟然」が効果的です。
(河合秀美)