会長/水野星闇
事務局長/大森敦夫
事務局所在地/〒181-0015三鷹市大沢2-10-7 TEL090-9389-4821

今後の活動計画

●俳句研究会(いずれも立川子ども未来センター 午後1時から)
令和6年 11月23日。12月14日。

会報「多摩のあけぼの」PDF[2024年5月22日追加更新]

多摩のあけぼの152号PDF 令和6年10月31日発行
多摩のあけぼの150号PDF 
令和6年4月30日発行
多摩のあけぼの149号PDF 
令和6年1月27日発行
多摩のあけぼの148号PDF 
令和5年10月27日発行
多摩のあけぼの147号PDF 
令和5年8月1日発行
多摩のあけぼの146号PDF 
令和5年5月20日発行
多摩のあけぼの145号PDF 
令和5年1月27日発行
多摩のあけぼの144号PDF 
令和4年10月27日発行
多摩のあけぼの143号PDF
 令和4年7月28日発行
多摩のあけぼの142号PDF 令和4年4月28日発行
多摩のあけぼの141号PDF 令和4年1月27日発行

東京多摩地区現代俳句協会とは[2022年5月20日更新]

私たち東京多摩地区現代俳句協会は、東京都の23区と島しょを除く市部と、町、村に居住する会員で構成され、昭和58(1983)年7月に発足しました。
定時総会や俳句大会など主要なイベントは、おもに武蔵野市で行いますが、月例の俳句研究会は立川市で実施しています。その活動状況は、年4回発行する会報「多摩のあけぼの」によって会員の皆様にお知らせしています。
3年毎に募集する「東京多摩地区現代俳句協会賞」、5年毎に発行している会員の合同句集『多摩のあけぼの』の刊行なども、重要な活動です。
また当協会には独自の会歌《多摩のあけぼの》(沢田改司氏作詞、宮川としを氏作曲)があります。多摩の豊かな風土と、会員の連帯を高らかに謳っており、会合の冒頭には全員で斉唱しています。

多摩地区協会への入会は随時受付けています。 
 (現代俳句協会会員で多摩地区に居住されている方(正会員)の会費は無料(申し込み手続きは不要)、それ以外の「一般会員」の方の年会費は2000円です)
 お問い合わせ、ご連絡は当協会事務局へ(0422-30-0934)

俳句研究会にぜひご参加下さい!
毎月行なわれている「俳句研究会」は、土曜の午後の楽しい句会です。
(講師による約1時間の講話のあと、参加者全員の互選による句会と合評)
出句一人3句。会費は1000円です。
初めて参加される方、会員でない方、大歓迎です。
※2022年3月から再開しました。

[お問合せ] 永井潮 TEL 042-492-4516

<令和6年活動記録>[2024年12月16日追加更新]

第四十二回東京多摩地区現代俳句協会俳句大会

 秋晴の十一月四日午後、中央線武蔵境駅北口の武蔵野スイングビル南棟十一階のレインボーサロンに五十七名が参加し俳句大会が開催された。一時半より満田光生広報部副部長の司会で開始。まず会歌「多摩のあけぼの」を小山健介氏、根岸操氏のリードの下、三番まで全員で斉唱。根岸敏三副会長の開会の言葉、水野清闇会長挨拶に続き、来賓の今野龍二東京都区協幹事長、羽村美和子千葉県協幹事長、佐藤久神奈川県協事務局長より挨拶をいただいた。

 続いて秋尾敏現代俳句協会副会長より「碧梧洞と虚子」という現代俳句のルーツについての講演が始まった。碧悟堂と虚子が京都の第三高等中学校に入学した明治二十七年から大正三年までの碧梧洞と虚子の俳句の変遷を引用されながら二人の俳句に対する取り組みの違いを丁寧に示された。両人の特徴を的確に捉えた説明でとても分かり易かった。一言で言えば碧梧洞は近代詩の高みを目指したのに対し虚子は国民文学としての俳句を目指したということである。

 俳句大会は、既に互選により決定した上位二十名までの入賞作品を発表。俳句大会賞は、二十一点獲得の関戸信治氏の「八月の空へ飛べない鶴を折る」。賞状賞品が授与された。続いて二十五名の特別選者による特選賞を発表。直接選者から賞品が手渡され、ご講評を頂いた。

 本部、事務局、各部の連絡事項のあと戸川晟副会長より閉会の言葉があった。

 集合写真撮影後、会場内のレイアウトを変更してアルコール抜きの懇親会を開催し、来賓各位および会員相互の親睦を深めることが出来有意義な時間を過ごすことができた。   (青木 隆記)。

第42回東京多摩地区現代俳句協会俳句大会

 秋晴の十一月四日午後、中央線武蔵境駅北口の武蔵野スイングビル南棟十一階のレインボーサロンに五十七名が参加し俳句大会が開催された。一時半より満田光生広報部副部長の司会で開始。まず会歌「多摩のあけぼの」を小山健介氏、根岸操氏のリードの下、三番まで全員で斉唱。根岸敏三副会長の開会の言葉、水野星闇会長挨拶に続き、来賓の今野龍二東京都区協幹事長、羽村美和子千葉県協幹事長、佐藤久神奈川県協事務局長より挨拶をいただいた。
 続いて秋尾敏現代俳句協会副会長より「碧梧洞と虚子」という現代俳句のルーツについての講演が始まった。碧悟堂と虚子が京都の第三高等中学校に入学した明治二十七年から大正三年までの碧梧洞と虚子の俳句の変遷を引用されながら二人の俳句に対する取り組みの違いを丁寧に示された。両人の特徴を的確に捉えた説明でとても分かり易かった。一言で言えば碧梧洞は近代詩の高みを目指したのに対し虚子は国民文学としての俳句を目指したということである。
 俳句大会は、既に互選により決定した上位二十名までの入賞作品を発表。俳句大会賞は、二十一点獲得の関戸信治氏の「八月の空へ飛べない鶴を折る」。賞状賞品が授与された。続いて二十五名の特別選者による特選賞を発表。直接選者から賞品が手渡され、ご講評を頂いた。
 本部、事務局、各部の連絡事項のあと戸川晟副会長より閉会の言葉があった。
 集合写真撮影後、会場内のレイアウトを変更してアルコール抜きの懇親会を開催し、来賓各位および会員相互の親睦を深めることが出来有意義な時間を過ごすことができた。 (青木 隆記)。

第42回俳句大会入賞作品

〈大会賞〉
八月の空へ飛べない鶴を折る 関戸信治

〈上位入賞句〉
生牡蠣を秘仏のごとく開きたり 桑田制三
禽獣と木の実分け合ひ峡に老ゆ 谷川 治
始発バス乗り込んで来た夏休み 島田啓子
ビリ同士ともだちになる運動会 川崎果連
子雀のくる木と別れ退院す   根岸 操
子にもする少しの遠慮実紫   水落清子
満月を貰い途方に暮れている  國分三徳
ガリ版の句集も混じる曝書かな 永井潮 
塩加減ほどの幸せ豆ご飯    島 彩可

〈大会選者の特選句〉
秋尾敏選
戦争知らぬ老人たちの秋祭      永井 潮
今野龍二選
あつぱつぱ何だかいつも楽しさう   稲吉 豊
羽村美和子選
奥多摩の石の重さよ星祭       秋尾 敏
佐藤久選
山の日や兄の遺影の位置正す     永井 潮
安西篤選
年寄に反抗期来る凌霄花       田口 武
前田弘選
たまごかけごはんの宇宙今朝の秋   谷村鯛夢
吉村春風子選
これからも頼り頼られ団扇風     永井 潮
遠山陽子選
ちょい悪の人生でした唐辛子     桑田制三
三池泉選
八月のたましいねむるまで祈る    佐々木克子
三浦長閑選
母の手の記憶を紡ぐ針供養      小峰トミ子
江中真弓選
大きく漕ぐぶらんこに影追ひつけず  田口 武
津久井紀代選
鬼灯の中はいたつて平和なり     広井和之
神野紗希選
淋しくて唄う金魚がほしくなり    水落清子
宮崎斗士選
みんみんのみんの握力広島忌     麻生 明
水野星闇選
鰯雲妻の手となり書く宛名      野口佐稔
根岸敏三選
ビリ同士ともだちになる運動会    川崎果連
永井潮選
フィナーレは宇宙へシグナル大花火森 本由美子
山崎せつ子選
木槿散る昨日に今日をうち重ね    永井 潮
戸川晟選
子の足に名前書く母瓦礫灼け     野口佐稔
石橋いろり選
徘徊の母よいづこの眉の雪      淵田芥門
小山健介選
烏瓜ごと人手にわたり本籍地     江中真弓
根岸操選
流れ星うすい枕を裏返す       今野龍二
蓮見徳郎選
遠花火合間に深き無言あり      長野保代
大森敦夫選
階段は秋が左手置くところ      羽村美和子
佐々木克子選
塩加減ほどの幸せ豆ご飯       島彩可

第10回俳句研究会

10月26日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事根岸敏三・秋山ふみ子・佐々木克子・大森敦夫・青木隆・山本ひまわり・尾崎太郎
参加者23名
★講話……なし

愚痴こぼす相手なき日の檸檬かな  小野こうふう
踏まれつばなしどんぐりの義侠心  稲吉豊
ふるさとといえば柿の木つるし柿  佐々木克子
秋深し一人歩けば独り言      亀津ひのとり
少女漫画(コミック)の瞳きらりと十三夜
                 満田光生
故郷の地図を眺めて秋燈下     尾崎太郎
幸せを仏に告げて秋日和      水落清子
花カンナ重き祈りの平和賞     田村明通
放課後の囃子稽古や秋深む     山本ひまわり
運動会星形に抜く卵焼       水野星闇
備忘録どこに失せたかすがれ虫   三浦長閑
独り身に孫の手必須秋の暮     飯田玉記
秋出水歯を食ひしばる能登の民   青木 隆
稲刈りをまつ校庭のバケツの田   西前千恵
木犀香る絵本をひらくやうに    秋山ふみ子
秋雨の底点滴はアンダンテ     小山健介
大好きなお姉さんと一緒秋祭    戸川 晟
夕空に群れとぶ椋鳥の影絵かな   松井彰子
蛤に化けたる雀ちゆんと鳴き    大森敦夫
近づきしシンギュラリティ秋思かな 齋木和俊
鰯雲見上げゆっくり歩を進め    山崎せつ子
秋の薔薇淡い少女の顔をして    根岸敏三
紅葉の速さを競う北の山森     本由美子

第9回俳句研究会

9月28日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事根岸敏三・秋山ふみ子・玉木康博・石橋いろり・尾崎太郎・石原俊彦参加者24名
★講話……なし

逡巡の免許返納涼新た      秋山ふみ子
箱ひとつ置き配にして秋の風   亀津ひのとり
新米がはずかしそうに飯になり  水落清子
膝に来る猫の体温十三夜     稲吉 豊
風の盆をどる仕草の車椅子    三浦長閑
番鳩の眠りを包む良夜かな    松井彰子
葛の花淋しき色にこぼれをり   尾崎太郎
目のはしの夫の笑顔や秋刀魚焼く 西前千恵
初紅葉女ひとりの立喰寿司    石橋いろり
名月や盲の犬と愛でにけり    山本ひまわり
ビオロンの響く山寺今日の月   青木 隆
友だちはみんな年寄彼岸花    戸川 晟
線引けばその中に降る「黒い雨」 野口佐稔
身にしむる手厚い介護二週間   飯田玉記
築地塀越えたし越せぬ秋の蝶   淵田芥門
百舌鳥一声弁当箱の箸が鳴る   大森敦夫
そぞろ寒寄木細工の箱開くる   根岸 操
夏惜しむ宇治の庵の青もみじ   吉田さとみ
車窓から唱歌のごとき青田風   森本由美子
敬老日妻は娘と小旅行      石原俊彦
能登豪雨揺れて流され曼珠沙華  高瀨多佳子
園児達風船葛の実にはしゃぐ   根岸敏三
そよ風の独歩の渓谷われの秋   玉木康博
噴石に斃れし人よ天高し     満田光生

第8回俳句研究会

8月24日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事満田光生・秋山ふみ子・玉木康博・山本ひまわり・石橋いろり・亀津ひのとり青木隆・尾崎太郎参加者25名

★講話……なし
赤蜻蛉少し飛んでは考える     根岸敏三
捨つる本十字に結ぶ秋思かな    秋山ふみ子
帰省子の光と風の通る部屋     戸川 晟
打水や寺町三条西上ル       淵田芥門
言の葉は今も直球生身魂      稲吉豊
蟬の声とつと途絶えて六日朝    三浦長閑
象を見し後はラムネの玉の音    小山健介
山の唄いっぱいつめて胡桃の実   水落清子
破れ蓮の風をいなして立ちにけり  松井彰子
やはらかき言葉もて訪ふ新盆会   水野星闇
敗戦忌増加止まらぬ戦災孤児    青木 隆
西瓜割る地球びくともしないけど  佐々木克子
社会人の顔する孫の盆帰省     西前千恵
夏帽子名前浮かばぬ古写真     関 梓
盆用意継ぐものもなくなんとなく  石橋 いろり
風すこしあたりに増える赤とんぼ  山崎 せつ子
葡萄買ふ道の駅にも新紙幣     大森敦夫
かき氷富士山の形阿蘇の形     田村明通
かなかなや夜明けの風のぬるきこと 山本ひまわり
日盛りを夢の如くに百日紅     亀津ひのとり
母の忌の済みぬ太々天の川     満田光生
青空と青芝の間風と黙       石原俊彦
おもだかの咲ける谷戸田の夕まぐれ 尾崎太郎
再会の阿修羅像や繁る奈良     玉木康博
夏の蝶ブルーラインのふわゆらり  高瀨多佳子

第7回俳句研究会

7月20日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事満田光生・秋山ふみ子・玉木康博・根岸操・青木隆・石橋いろり・山本ひまわり
参加者22名

天寿までるてんくるくるあめんぼう 石橋いろり
独り居のそつと紅引く盆の入り   淵田芥門
校正の海泳ぎけり熱帯夜      満田光生
不器用に生きて昭和の冷奴     戸川 晟
大切な昨日がありし木槿掃く    根岸 操
迷惑なものに告白カンナの朱    小山健介
診察券財布に増えて晩夏光     高瀨多佳子
旅鞄しづかに拭ふ晩夏かな     秋山ふみ子
水茄子の歯ごたえ耳に母想う    玉木康博
縁涼し放屁咎むる人もなし     稲吉 豊
輸送機の巨腹頭上を梅雨晴間    亀津ひのとり
牛蛙と互いに知らん顔をして    尾崎太郎
骨たたむことの拙き燕の子     大石雄鬼
天に咲きなほ天を見る合歓の花   山本ひまわり
三代の集ひて囲む大西瓜      田村明通
日焼の子ペットボトルの水被る   三浦長閑
囀も入れて畳んだ男傘       水落清子
之繞のごとく寄せ来る土用波    大森敦夫
背中の汗以下同文の感謝状     小野こうふう
鴨の子の親の後ろを一列に     根岸敏三
屋根たたくドレミファソラシド夕立 西前千恵
国籍を問はず肩組むビール祭    青木 隆

第6回俳句研究会

6月22日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 戸川晟・秋山ふみ子・佐々木克子・石橋いろり・大森敦夫・尾崎太郎・
根岸操・青木隆参加者25名

身ひとつで生き抜く術や蜘蛛の糸   松井彰子
未来より今が大事よ額の花      飯田玉記
洗ふ墓失せて故郷の闇しづか     水野星闇
路地裏はゆっくり暮るる額の花    秋山ふみ子
短夜の既読はいまだ付かぬまま    田村明通
五本指ぱつと開ける素足かな     関 梓
人の世のはずれに蛍湧きにけり    尾崎太郎
葉桜や誰に知らそか墓じまい     小野こうふう
七変化カフカのようにめざめた朝は  石橋いろり
少年の妄想りんりん雲の峰      戸川 晟
白扇子一拍置いて白い嘘       稲吉 豊
“もういいかい”声の聞こえる梅雨晴間 石原俊彦
骨董市昭和は遠し夏落葉       根岸 操
枇杷の種黒き瞳に見つめらる     佐々木克子
九条の看板の下燕の子        高瀨多佳子
どくだみも元気良過ぎて嫌われる   松元峯子
梅雨の夜の階(きざはし)きしむ茅舎かな
                  淵田芥門
入梅や手持ち無沙汰の休刊日     西前知恵
子鴨ら餌となる眼前の戦場      山本ひまわり
イスラエル大使館前梅雨滂沱     青木 隆
馬になるべく胡瓜の花は咲きにけり  大森敦夫
郭公の声聴きながら山を見る     山崎せつ子
箒持つにこにこ地蔵若楓       根岸敏三
切支丹殉教の地よ青葉潮       三浦長閑
蜂の巣めく部屋にて仰ぐ夏至の月   亀津ひのとり

第5回俳句研究会

5月18日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 石橋いろり・玉木康博・満田光生・山本ひまわり・亀津ひのとり・尾崎太郎
参加者16名

てを離す稚児の一、二歩夏来る  西前千恵
たまさかの牛の太声麦の秋    稲吉 豊
百年を生きるこの子ら柿若葉   三浦長閑
凡人に生まれ良かった豆ご飯   飯田玉記
菖蒲湯や老いの膚にも全き香   水野星闇
桑熟るる友ら消息散り散りに   亀津ひのとり
ひっそりと一人静や今日大安   松元峯子
網戸の目くづれはじめて母の声  大石雄鬼
立読みに時を忘れて若葉雨    尾崎太郎
車窓ごと若葉よスマホやめようよ 満田光生
天下る受皿の数誘蛾灯      高瀨多佳子
終電車長閑な春に眠りこけ    玉木康博
詰襟の坊や颯爽今年竹      戸川 晟
金属的な青き蝶は心音に     石橋いろり
葉桜やバギー押す手の皺深し   山本ひまわり
しもた屋の女将も老いぬ五月雨  淵田芥門

初夏の吟行会作品 (6月1日正福寺)

 〈上位入選七句〉

善行橋渡れば善人立葵     根岸 操                      

御朱印の自販機もあり麦の秋  尾崎太郎               

だんご屋の忙しく煽る渋団扇  石橋いろり                

花菖蒲色とりどりの風を呼ぶ  亀津ひのとり            

夏雲を置き正福寺の屋根のそり 西前 千恵             

地蔵堂反る軒先は夏空へ    水野 星闇                     

ざり蟹を釣るチビッ子の顔光る 石原 俊彦            

〈一人一句〉

むらさきはかなしみの色花菖蒲  秋山ふみ子          

国宝の寺を巡りて花菖蒲     笹木 弘                      

菖蒲よりメダカに夢中子も父も  森本由美子            

菖蒲まつり小町娘の生一本    戸川 晟                 

国宝やガイド背後の濃あぢさい  大森 敦夫              

蛙鳴くそばの水草揺らしたり   根岸 敏三             

さくらなる名をもらひたるあやめぐさ 山本ひまわり                                                      

里のなかに皺の生まれて菖蒲咲く 大石雄鬼       

幾星霜小地蔵並ぶ初夏に見ゆ   玉木 康博              

薫風や威厳をそなえ正福寺    松元 峯子                

 

第4回 俳句研究会

4月27日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事      大森敦夫・ 秋山ふみ子・玉木康博・小山健介・石橋いろり・青木隆・尾崎太郎
参加者24名

★講話…… 水野星闇氏
「わが俳句事始めと職場句会」

才能といふ名の病蝮草                              小山   健介

迷いなく天を指したる松の芯                     根岸   敏三

のどけしや点滴棒を連れ歩く                     亀津ひのとり

犬に天寿木香薔薇はいま盛り                     稲吉      豊

大き字の地図買う八十八夜かな                  飯田   玉記

お花見は一人ブランコ漕ぎながら               松元   峯子

みどりみどりホップステップもうできぬ      佐々木克子

鶯の声数へつつ谷戸の道                           尾崎   太郎

眠るには力要りたる若葉かな                     根岸      操

満天星や風に星語を弾き出す                     森本由美子

春になる笑い上戸の君になる                     戸川      晟

万愚節すぐに判るも乗ってみる                  三浦   土火

少女らの立ち話桜蕊降る                           秋山ふみ子

平づみの官能小説(くわんのうせうせつ)春をしむ  淵田   芥門

鶯餅指の先より青い鳥                               広井   和之

ウクライナガザ能登花蓮仏生会                   青木      隆

みどりの日皆スマホ見て無言                      満田   光生

夕暮れに乾ぶ葉擦れや竹の秋                      中田   瑛子

追善の無き兄の忌や田水張る                      水野   星闇

非常口よりも小さく潮干狩                         大石   雄鬼

水仙の茎まっすぐに立つ真昼                      山崎せつ子

アウトローの麦の穂あれど俳諧自由             石橋いろり

二筋の飛行機雲が春を呼ぶ                         玉木   康博

春酣朝五時過ぎの青緑                               大森   敦夫

 

令和六年度定時総会・陽春句会

令和六年三月二十三日(土)

於・武蔵野スイングホール

令和六年度陽春句会作品

〈入賞十句〉

つなぐ手は互いの介助春の雲  野口佐稔

葱切つてあと十年は生きてやる 米澤久子

春耕や土は混声合唱団     芳賀陽子

削られし武甲の山も笑いけり  一ノ瀬順子

梅咲いて誰か訪ねてくる予感  蓮見徳郎

なまはげの落していった藁二本 佐々木克子

独り居の父訪ふも旅はじめ   秋山ふみ子

うりずんの海揺れ輸送機の轟音 満田光生

笑うことも泣くこともなき紙雛 笹木弘

どの家も夜が来ている雛祭   好井由江

 

(以下到着順)

ひとり住む母の元気や福寿草   小野こうふう

春惜しむセピア色なす写真かな  三浦土火

十二単の陽光探す春野かな    石橋いろり

湯豆腐のにえばな食し一家言   清水弘一

裾長々と平安のひと梅の香と   川島一夫

行く先は決めず初秋の風の駅   宮腰秀子

図書館の椅子は直角ヒヤシンス  根岸操

春一番心のどこかで待っている  飛永百合子

避難所に届く給水水温む     安西篤

白梅や白の中には何言わん    根岸敏三

つきまとう春愁信号は青     森本由美子

良く老いて梅のあしたを待つばかり 稲吉豊

立春と声にしてみる雨に色    水落清子

カピバラの薄きかんばせ春の風  片倉みちこ

雪国の青い夜明けの地平線    松元峯子

北窓をひらき心のストレッチ   関梓

銭湯の灯りて映ゆる門の梅    大森敦夫

春節や銀座通りに異国の香    山本ひまわり

物の芽の声なき声が聞こえくる  長野保代

三針の時計で春がやって来る   永井潮

煽らるる鷹もわが身も春一番   亀津ひのとり

春空へ枝打つ庭師の命綱     西前千恵

春の猫野生の闇を出入りする   岡田春人

田子の浦今汽笛なる紅き不二   玉木康博

砂山の三つ並んで寒夕焼     高瀬多佳子

春は曙というけどまだ眠い    三池泉

冴え返る諦めぬやう頬を出す   広井和之

大寒や目覚めてすぐの深呼吸   鈴木寿江

横山の見返り峠風光る      尾崎太郎

雲割れて三月兎の子だくさん   有坂花野

花冷えや母連れ出でし日の桜   淵田芥門

土星の環に並べてみたき蕗の薹  佐怒賀正美

鳥帰る陰画の能登を置き去りに  望月哲士

春耕の土黒黒とにおいけり    戸川晟

大提灯から参道の春の雪     小山健介

春一番防空壕へキーウ市民    青木隆

引揚げてよくぞ八十路の春迎ふ  石原俊彦

余寒なほ時には枷となる絆    吉村春風子

半分は眠りにまぎれ梅咲けり   大石雄鬼

冴返る夜や忍び手に友を送る   水野星闇

どんよりと曇りて雪になる気配  山崎せつ子

指で掘る地球の隅の春の泥    前田弘

草青むおもいおもいの視線で   前田光枝

淡雪の水より少し明るきか    大井恒行

職安の前に群る影春浅し     山本みつし

白菜割るや火炎光背顕るる    鈴木浮葉

フェルメールの少女の瞳春の闇  新井温子

元妻の認知が進む春の星     田山光起

ガザの子供の心の冬芽むしる日々 武藤幹

老鶯に誘はれてゆく札所径    諏訪部典子

乳飲み子のあーうー魚は氷に上る 伊東類

両の手で溢さぬやうに雛あられ  大槻正茂

七十七歳桜の洗礼うけにゆく   三浦文子

立春や猫のまなざし猫のちえ   山本徳子

老松の風に抗ひ緑立つ      夏目重美

春雪や母の遺品の筆硯      𠮷澤利枝

惜別の飛翔ととのへ白鳥引く   足立喜美子

頬に髪にミストのような春の雨  石川春兎

人死んで生まれて生きて草萌ゆる 江中真弓

 

〈句会選者の特選句〉

佐怒賀正美選

乳飲み子のあーうー魚は氷に上る 伊東類

芳賀陽子選

鳥帰る陰画の能登を置き去りに 望月哲士

岡田春人選

春耕の土黒黒とにおいけり 戸川晟

安西篤選

つなぐ手は互いの介助春の雲 野口佐稔

前田弘選

春耕や土は混声合唱団 芳賀陽子

遠山陽子選

削られし武甲の山も笑いけり 一ノ瀬順子

冬木喬選

独り居の父訪ふも旅はじめ 秋山ふみ子

三池泉選

春節や銀座通りに異国の香 山本ひまわり

三浦土火選

うりずんの海揺れ輸送機の轟音 満田光生

江中真弓選

なまはげの落していった藁二本 佐々木克子

津久井紀代選

どの家も夜が来ている雛祭 好井由江

大井恒行選

つなぐ手は互いの介助春の雲 野口佐稔

佐々木克子選

つなぐ手は互いの介助春の雲 野口佐稔

水野星闇選

春耕や土は混声合唱団 芳賀陽子

吉村春風子選

北窓をひらき心のストレッチ 関梓

根岸敏三選

人死んで生まれて生きて草萌ゆる 江中真弓

永井潮選

北窓をひらき心のストレッチ 関梓

山崎せつ子選

春耕の土黒黒とにおいけり 戸川晟

戸川晟選

葱切つてあと十年は生きてやる 米澤久子

小山健介選

白菜割るや火炎光背顕るる 鈴木浮葉

根岸操選

老松の風に抗ひ緑立つ 夏目重美

蓮見徳郎選

なまはげの落していった藁二本 佐々木克子

石橋いろり選

鳥帰る陰画の能登を置き去りに 望月哲士

大森敦夫選

白菜割るや火炎光背顕るる 鈴木浮葉

第3回俳句研究会

3月30日(土)立川市こども未来センター

担当幹事水野星闇・秋山ふみ子・西前千恵・

山本ひまわり・石原俊彦・尾崎太郎・

満田光生・亀津ひのとり

参加者22名

★新会長挨拶……水野星闇氏

蜃気楼よりもとほくに生家かな  大石雄鬼

大辞林をさまよひ歩く日永かな  亀津ひのとり

水たまり飛びこす子らや葱坊主  西前千恵

暖かや硯の面の小さき波     水野星闇

逝くときは母が手を引く山桜   根岸 操

図書館の読書老人春眠し     石原俊彦

春北風バス待つ列の乱れけり   山本ひまわり

青鷺の一歩一歩に気迫あり    根岸敏三

白木蓮救急病棟の闇に咲く    石橋いろり

大地ゆれ帰る家なし燕来る    高瀨多佳子

春の宵紅さし指を深爪す     淵田門

桜愛づ人肌燗の一含み      三浦土火

芽木の風えいえいえいと起工せり 小健介

崖(はけ)に草かぐはしいづこより爆音 満田光生

若き日の別れの海や夕霞     中田瑛子

国会中継見るともなしに春の風邪 秋山ふみ子

そんなこと笑いとばして四月馬鹿 戸川晟

春嵐大江戸中の犬どこへ     広井和之

片思い片栗の花うつ向いて    松元峯子

蝌蚪の群泳ぐ水面に昼の月    尾崎太郎

護摩行や齡五百の糸桜      青木隆

春の雷医師の大声アイシーユー  飯田玉記

 

第2回 俳句研究会

2月24日(土)立川市こども未来センター

担当幹事      満田光生・ 玉木康博・佐々木克子・小山健介・ 石原俊彦・石橋いろり・ 尾崎太郎    

参加者24名

物干に背伸する母日脚伸ぶ    高瀨多佳子

紅梅の花の数だけ日の温み    吉村春風子

水仙の風にあらがう気骨あり   佐々木克子

雀来る二月の光柔らかく     尾崎太郎

喇叭水仙壺に海軍カレーの    日稲吉豊

五階まで匂ふ白梅日和かな    亀津ひのとり

白梅紅梅遅速のあつてこそ楽園  広井和之

春鰯こぼして行くよ猫車     三浦土火

盆梅を裸体のやうに部屋に飾る  大石雄鬼

多満自慢嘉泉澤乃井土筆和    満田光生

早春の路地駆け抜けるランドセル 石原俊彦

春宵や彼処に此処に夫の跡    飯田玉記

朝市のきれいに洗う春野菜    戸川晟

寒肥はしょんぼりしている木から撒く 松元峯子

静寂射るひかり一条寒明けぬ   水野星闇

山の上ホテル休業春寒し     青木隆

寒中で寒鰤も怯えなゐ続く    玉木康博

光る風音楽のある天守閣     小山健介

被災地の辛抱を削ぐ別れ雪    山本ひまわり

村いっばい梅の多重奏どの辻も  石橋いろり

(下曽我にて)

止まぬ雨街の灯にじむ二月かな  山崎せつ子

ふる里や毒のなる樹のまた芽吹く 淵田芥門

一面のてふてふ揺らす黒子かな  大森敦夫

春空へ枝打つ庭師の命綱     西前千恵

 第1回  俳句研究会

1月27日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事      根岸敏三・ 秋山ふみ子・玉木康博・

 石橋いろり・石原俊彦・山本ひまわり・ 大森敦夫

 参加者25名

★講話       なし

 

先ず入れし句会日程初暦    石原 俊彦                            

ひとり住む母の元気や福寿草  小野こうふう                             

戦争と地震と火事と初日記   小山 健介                              

雑炊をゆっくりすすり喪に服す 佐々木克子                          

一病といふ息災や耐へて寒   吉村春風子                               

あれこれの想ひも焼べてどんどかな 亀津ひのとり                  

日脚伸ぶ雑木林に耳澄ます   尾崎 太郎                              

しめやかに燗はぬるめの歌心  戸川 晟 (八代亜紀)

急行通過駅の花壇の水仙花   大森 敦夫                             

もぐら塚をよけて歩けり梅白し   根岸 操                         

足なへを託つ逍遙やぶ椿    三浦 土火                                  

スコールの霽(は)れてガムランぐおんぐおん    満田    光生

連れ帰る母の手冱る知らぬ道  淵田 芥門                          

衣ずれの音折りたたみ納棺す  森本由美子

手術成功六日の待合室     飯田 玉記                                                                

冬晴れてからすが横断歩道行く 山崎せつ子                       

熊の子は濡れてこの世にうごきだす 大石 雄鬼                 

G線の音のかそけき寒の入    水野  星闇                            

能登珠洲の意地の再開寒鰤漁  青木 隆                        

一礼し鳥居をくぐる冬麗    松元 峯子                           

いつの間に地べたにゐたる寒鴉 秋山ふみ子                      

体操を見下ろしてゐる寒鴉   山本ひまわり                            

山襞が裂けど聳える白き富士  玉木  康博                          

炊き出しの小豆粥ふっと脱力  石橋いろり                          

松の芯空に向いて伸びらかに      根岸 敏三

第十二回 俳句研究会

第12回 俳句研究会
12月23日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 水野星闇・ 秋山ふみ子・玉木康博・山本ひまわり・ 石原俊彦・根岸操・根岸敏三

参加者21名

惨状は画面の向こう毛糸編む   山本ひまわり
山茶花や硝子のやうな老いごころ 秋山ふみ子
警笛を鳴らし寒夜の貨車の列   松元峯子
病んで知る元気は宝寒椿     飯田玉記
湯豆腐のぐらりと揺れて父のこと 吉村春風子
子どもらの夢は翔平クリスマス  青木 隆
歳を経しよき顔揃う年の暮    石原俊彦
煮凝や打ちあける恋ひとつあり  根岸 操
菰巻きの荒縄をとこ結びなり   三浦土火
自在鉤肴は熊の出た話      小山健介
小間切れの冬至南瓜の売られけり 西前千恵
寒波来る犬が突っ張る玄関口   戸川 晟
終末へ秒針振るるクリスマス   亀津ひのとり
狐火や常闇覆ふ永田町      稲吉 豊
燃え盛る榾火に父祖を思ひけり  淵田芥門
木枯しや人も葉っぱも駆けていく 尾崎太郎
枯萩や直立不動で筋通し     根岸敏三
崖(はけ)下に焚火の煙昇平忌  満田光生
(大岡昇平十二月二十五日)
関東はいつも快晴大寒波     大森敦夫
しらしらと急く風花のゆくへかな 水野星闇
澄み切った天空にぐぐっと大銀杏 玉木康博

第十一回 俳句研究会

第11回 俳句研究会
11月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 根岸敏三・ 秋山ふみ子・玉木康博・
小山健介・ 満田光生・石橋いろり・
山本ひまわり
参加者25名

★講話 董 振華氏
「中国の物差しと日本の物差し」

石段の残り見上ぐる七五三        稲吉 豊
老婆引く老犬の黙冬木立         石原 俊彦
冬ざるるものの一つに風の音       吉村春風子
尽きるまで己をつくす冬紅葉       戸川 晟
鳰(かいつぶり)かほ出す方を見て暮るる 根岸 操
老いてなお家事買物や秋刀魚焼く     松元 峯子
冬ざくらさみしい時は泣けばいい     佐々木克子
星空へ手締めの一本酉の市        中田 瑛子
秋深し病が変えた人生観         飯田 玉記
錦秋を淑女前こぐタンデム車       野口 佐稔
一葉忌洗濯物のよく乾く         満田 光生
鼻唄の八百屋の主人小六月        青木 隆
石蕗の黄になぐさめられている朝(あした)山崎せつ子
黙祷のあとのさよなら冬桜        三浦 土火
足元に冬が来てゐる秋葉原        大森 敦夫
解体の廃材に降る木の葉かな       秋山ふみ子
廃屋の三羽の烏冬日没る         山本ひまわり
不得意なものに運針一葉忌        小山 健介
綿虫の打者の顔にまといつく       根岸 敏三
愛猫と居て言葉要らない冬の宵      小鳥遊 彬
小夜時雨ドアホン越しの回覧板      石橋いろり
よもつへに入りにし者や榾明り      水野 星闇
小鳥は巣に龍の玉は手のひらに      董 振華
集金人より大きな柚子をいただけり    西前 千恵
独酌亭小三治の銘あり燗酒のむ      玉木 康博

第九回俳句研究会

9月9日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事戸川晟・秋山ふみ子・玉木康博・大森敦夫

根岸操・石原俊彦・根岸敏三

参加者22名

★講話 大石雄鬼氏「直喩はだめなのか?ー阿部青鞋作品からー」

晩年の我慢と頑固やっと秋    戸川 晟

うつせみのふかれて長き聖橋   淵田芥門

一口に木曽の秋なり栗きんとん  亀津ひのとり

孫の手の届かぬ痒み台風圏    石橋いろり

爽やかや下書き終えし遺言書   森本由美子

カンナよく咲いたよ母の葉書なり 満田光生

こんにやくのやうな日ざしにカンナ咲く大石雄鬼

再発を告げる笑顔の目に秋思山本ひまわり

ちぐはぐな心模様やつくつくし秋山ふみ子

猛暑日の悪口を言う立ち話松元峯子

無為の日の思ひも秋の風にかな吉村春風子

優しさは強さでもある秋桜飯田玉記

弧を描く3点シュート鷹渡る青木隆

地芝居や二、三来たりてまた去りて大森敦夫

病棟の窓に青空あきあかね三浦土火

多機能を押せど届かぬ流れ星石原俊彦

葉の裏で何やら不穏葛の花尾崎太郎

夕焼や遠望の富士黒黒と根岸操

人間なんて煙たいだけさ火吹竹辻升人

コスモスらバスに手を振る信州路玉木康博

街道の裏道瓢箪の実のたわわ西前千恵

秋初め白鷺一羽餌を捕ふ根岸敏三

 

 第八回  俳句研究会

8月26日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事      満田光生・ 秋山ふみ子・玉木康博・石橋いろり

                  山本ひまわり・大森敦夫

                  参加者22名

★講話       石川  春兎氏   「子どもと俳句」

桐一葉行方の知れぬこの世界   尾崎太郎

角のなき消しゴム一つ処暑の風  石川春兎

古戦場狐の剃刀咲くあたり    小山健介

手に重き形見の時計敗戦忌     石原俊彦

あめんぼのひとかきしてはひと休み 根岸敏三

九月かな確(しか)と定まる物の影  稲吉 豊

気を抜けば我も即身仏の残暑    石橋いろり

加齢です妙に納得秋の空      吉村春風子

小上りに脛うち投げて団扇かな   淵田芥門

廃屋の存在証明紅(あか)カンナ   山本ひまわり

星祭思ひの違ふ夫婦かな      秋山ふみ子

新秋や星雲けぷる辺りより     亀津ひのとり

打水の淫らにながれ生家あり    大石雄鬼

爆音の轟く街の雲の峰       青木 隆

蝉の声すこしさびしくなる夕べ   山崎せつ子

野分くる空欄のなき予定表     根岸 操

CDから昭和の名曲盆の夜       玉木 康博

名月や研ぎ澄まさるる二の鳥居   戸川 晟

母は亡し書類に紛れゐる残暑    満田光生

断捨離で住まいも軽く晩夏なり   飯田玉記

妻入の路地に西日や海に出ず    大森敦夫

都市農家金柑の実のたわわかな   西前千恵

 

第七回 俳句研究会 

7月15日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・玉木康博・石橋いろり・満田光生・
山本ひまわり・石原俊彦・戸川晟・佐々木克子
       参加者19名

★講話・・・なし 
わが影に潜れぬものか炎天下         吉村春風子
同じ物二つ買ひたる暑さかな         秋山ふみ子
息止めて4L西瓜両断す           石橋いろり
鉄砲百合風のうわさに耳すます        松元 峯子
階段の一段ごとの暑さかな          石原 俊彦
鍵閉めたかな炎天を引き返す         飯田 玉記
昼寝覚め一期一会の青畳           小野こうふう
向こうでも句会揚羽を追ってゆき       小山 健介
虎の尾の皆こちら向く日陰道         山本ひまわり
夏帯やゑくぼ咲かせる目の会釈        稻吉  豊
魂魄も溶けだしそうな暑さなる        佐々木克子
検査室の夫待つ廊下西日さす         西前 千恵
溽暑の夜駅に妖婆が立つている        淵田 芥門
夏逝きぬ焦げた根っこの香を残し       森本由美子
月島の朝顔絡む古格子            尾崎 太郎
魚信(あたり)待つ胴衣の男夏の湖       青木  隆                            
外人が一番を切る山開き           戸川  晟
合歓の木が子らを見守り眠る夕        玉木 康博
空家てふ夢の残骸へ緑雨           満田 光生

第六回 俳句研究会

6月17日(土)武蔵野市かたらいの道・市民スペース
担当幹事 秋山ふみ子・佐々木克子・根岸操・蓮見徳郎・
大森敦夫・石橋いろり・根岸敏三
     参加者25名

★講話・・・なし 
葦切や川より低く人住める          江中 真弓
信号の音ぬれてゐる街薄暑          秋山ふみ子
水馬水面の雲を掴みおり           根岸 敏三
何や彼やほど良く忘れ冷素麺         稻吉  豊
徹頭徹尾平和主義です蝸牛          戸川  晟
父の日や顔も知らない父なれど        石原 俊彦
橋いくつ渡れば故郷雲の峰          佐々木克子
サイダーの一気飲み「不採用」を眺めつ    石橋いろり
老鶯の一部始終につきあわず         髙野 公一
白シャツを棲のやうに干す男         大石 雄鬼
枇杷たわわ下宿屋疾うに廃れゐし       淵田 芥門
なるようになる母の口癖さくらんぼ      西前 千恵
ジブリへは上水沿いです桜桃忌        内田 牧人
夏薊銃後の丘となっている          小山 健介
紫陽花に囲まれて食ふ塩むすび        根岸  操
ゆふがほの強靭鉄路搔ひ潜り         山本ひまわり
梔子の錆びゆくまでの逢瀬かな        森本由美子
どくだみの花の明るき朝の雨         尾崎 太郎
谷底へ風が運びし夏帽子           三浦 土火
使はねば忘れゆく季語肝試(きもだめし)    吉村春風子
蔓伸ばし庭の苺も親離れ           大森 敦夫
原書並ぶ牧野の書斎額の花          青木  隆
通り雨また来るといい別れけり        蓮見 徳郎
梅雨なれど女坂ゆかず男坂          玉木 康博
昼顔や日常というやすらぎ          松元 峯子

初夏の吟行会 国営昭和記念公園

ゴールデンウイーク最終日の五月七日雨模様の中、昭和記念公園にて初夏の吟行会が行われました。この公園は、大正十年から陸軍飛行場として使用され、戦後米空軍基地として接収。昭和五十八年に天皇在位五十年を祈念して開園したという立川・昭島両市に延びる広大な国立公園です。立川駅より徒歩十分ほどのあけぼの口そばの総合案内所に十時に集合し、自由散策が始まりました。

立川口ゲートを過ぎると整然としたイチョウ並木が連なり、その先に森を貫く道がまっすぐに伸びています。(乗り降り自由の「パークトレイン」は一時間で園内を一周してくれます。)

この日は雨予報のせいか、森の木々に囲まれた道を歩く人の姿はまばらで、楠の豊かに盛り上がる若葉、山法師や朴の木の白い花などが印象的な森の風景が静かに広がっていました。道はやがて、広い池に出て、水辺に沿って行くと睡蓮の咲く小さな池が。ハーブ園、ネモフィラの丘を過ぎると、ポピーの群落に縁どられた広い野原に。まだ先には日本庭園などあるようでしたが、残堀川沿いの道は、武蔵野の雑木林の小径という趣があり、場所により多様な風景が味わえました。吟行の間、広大な園内は閑散としていましたが、鶯や鳥の囀りに包まれ、草花の息吹きを堪能し、初夏という季節を感じることができました。

句会場は「花みどり文化センター」というあけぼの口側の施設。台地の縁をくり抜いて建てられた、ちょっと洞窟めいた施設です。ガラス張りの壁に囲まれた円形の会議室には、初めての方十名を含む三十三名の参加者が集いました。「花」と「みどり」を織り込むという兼題のため、多種多様の句が集まり、園内の開花状況を互いに知ることができました。一位の和哥月硬香さんは異国の基地の街と表現し味わいを深くした。二位には高校生の西野奏子さんが緑陰の風を詠み、三位には川畑亜紀さんが万緑の小道を詠んだ。上位七人の表彰が行われ、公園オリジナルグッズが景品として渡さました。                            
(尾崎太郎)

第5回俳句研究会

5月13日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事 秋山ふみ子・玉木康博・大森敦夫・石橋いろり

     根岸操・石原俊彦

参加者 19名

 

★講話・・・林 誠司  『おくのほそ道』 

 

幸せの逃げる速さやしゃぼん玉    吉村春風子

足場組む男の背中薄暑かな      石原 俊彦

軒に紙(し)垂(で)神田祭の近き町    尾崎 太郎

捩花やなるようにしかならないの   飯田 玉記

蛇口より水の螺旋や夏来る      伊勢 史朗

水くらげほどに空母の進みゆく    林  誠司

柏餅みんな大人になりにけり     大森 敦夫

新茶汲み八十路の日々を味わいし   根岸 敏三

髭剃りが今の生き甲斐初夏の風    戸川  晟

連休後鉛になってうとうとす     玉木 康博

蟇息がみえないヨガの脚       高瀬多佳子

樟若葉海へと向かう細き道      尾崎 太郎

菜を刻む手もと明るき五月かな    秋山ふみ子

象の花子もゐた園の花水木      西前 千惠

バラの香や吾が青春の悔少し     三浦 土火

マスクとり薄暑の空へ手をひろげ   佐々木克子

転びてもすぐ起くる子や風薫る    根岸  操

ジャズ響く芝生広場や夏来る     青木  隆

樹の上で齧る枇杷の実白き雲     石橋 いろり

第4回 俳句研究会 

4月29日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 石橋いろり・秋山ふみ子・玉木康博・根岸操・
     大森敦夫・山本ひまわり・関 梓
参加者30名
★講話・・・霧野萬地郎氏
『ミャンマー遊覧・俳句とともに』 
笑みといふ無言の挨拶あたたかし      吉村春風子
葉桜や忘れ上手は生き上手         関   梓
かげろうになった人からたよりくる     佐々木克子
病葉になりたくてなったんじゃない     飯田 玉記
ランドセル三つ砂場は春夕焼        山本ひまわり
体温の中にわれあり目借り時        髙野 公一
囀りへパステルカラーのシャツがない    小山 健介
読点のやうにため息春は逝く        稲吉  豊
大リーグのベンチに栄える武者兜      戸川  晟
ふらここに異国の母子の弾む声       西前 千恵
花筏につかぬ花びらありにけり       根岸  操
春蝉や急かされてゐる前頭葉        秋山ふみ子
清明や運河をわたる貨車の列        尾崎 太郎
青し寝息よぼうぼうたる春眠        董 振華
句を持って昭和集まる昭和の日       野口 佐稔
希望という一歩を胸に新入生        石原 俊彦
テキーラを浴びて暫しの花軍        大森 敦夫
腹出して笑ふ兜太や春の寺         亀津ひのとり
年の豆まかずに一人鬼も来ず        白尾 幸子
団塊の世代もぢぢばば昭和の日       三浦 土火
蒲公英や我も路傍の石ならむ        淵田 芥門
すみれたんぽぽ今日は童話を読み聞かせ   松元 峯子
窓枠に治まっている春の色         高瀨多佳子
ビオトープ高層階の蝌蚪の言い分      石橋いろり
今正に田植の頃なりダムの底        辻  升人
学園の林の奥に老鶯鳴く          根岸 敏三
原敬(たかし)像に石割桜散る        青木  隆
春の蠅コーヒールンバを聴いてをり     霧野萬地郎
紫陽花やぐぐんと芽々吹く枯枝に      玉木 康博
馬酔木咲く初摘ダージリン淡苦き      木村  萄

初夏の吟行会

日 時  令和5年5月7日(日)
場 所  昭和記念公園 花みどり文化センター
参加者  33名

上位入選十句
万緑やかつて異国の基地の街         和哥月梗香
緑陰や風はかたちをすぐかえる        西野 奏子
万緑にさらわれてゆく小道かな        川畑 亜紀
いつだって女は強し姫女菀          根岸  操
葉桜や胸の深くにある軍都          小山 健介
トリアノンまで新緑の奥へ奥へ        満田 光生
囀りやはぐれて一人花めぐり         石橋いろり
どこまでも歩ける靴よ花茨          高瀬多佳子
横道にそれて一灯著莪の花          宮腰 秀子
刻々と緑濃くなり雨催い           山口 萌黄

一人一句
ジョグの人みどりに溶けてまた現わる     石原 俊彦
姫女菀犬に引かれて万歩計          池田 麻衣
掌にふれてみどり失う皐月雨         髙野 公一
新緑や大樹に抱かれ心解く          泉  信也
摘み取ろうか白詰草をしばし観る       玉木 康博
緑広がる昭和の遠い遠い           戸川  晟
葉桜や六十にして「罪と罰」         石川 春兎
パークトレイン緑の闇に消えゆきて      多田 文代
おおばこの花のかんむり戴冠式        押見 淑子
曇天に泰山木の花ふたつ           根岸 敏三
山法師一緒に詠おう今日の幸         松元 峯子
雨催いみどりいっぱい滲みたる        山崎せつ子
雨催い群れるを嫌うタンポポは        中山 愚海
のんびりと連休末日けしの花         南行ひかる
昭和平成令和を生きし樹々若葉        池田めだか
我ひとり銀杏若葉の並木道          尾崎 太郎
噴水や万の緑を溶かしこむ          亀津ひのとり
遠景のビル喰ひ荒らす青葉かな        大森 敦夫
えごの花大樹の陰に枝ひとつ         山本ひまわり
子どもらと並ぶネモフィラ夏来る       青木  隆
白クローバー粉まいたよう芝おおう      森本由美子
緑風や残る三年如何生きる          三浦 土火
立川の雑踏離れ夏来る            関   梓

第3回 俳句研究会 

3月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 満田光生・秋山ふみ子・玉木康博・
根岸操・大森敦夫・石原俊彦・
根岸敏三
参加者 17名
★講話・・・吉村春風子 氏
「西行の生涯とその歌」 
ふらここやゆっくり大人になればいい    飯田 玉記
夕ざくら米炊ける間を歩きたり       根岸  操
砂の城少し崩して春の潮          大森 敦夫
をさな子の高さに舞ふや紋白蝶       秋山ふみ子
落ち椿老いた花びらまだ白き        玉木 康博
風光る薄紅をまたひいてみる        高瀨多佳子
陽炎を出てくる猫と目があえり       佐々木克子
病棟に季節を運ぶ春帽子          石原 俊彦
生きるとは何かに出合う春の野辺      宮腰 秀子
菜の花や野道に午後の日の温み       尾崎 太郎
不器用に生きて八十路や郁子(むべ)の花   吉村春風子
珈琲がぽこぽこ沸いて花に雨        亀津ひのとり
河川敷投げ打ち走り花盛り           青木  隆
青柳や太極拳は湖を向き          満田 光生
「菜種梅雨ですね」新聞の集金来      西前 千恵
蝙蝠の住処は昔の防空壕          根岸 敏三
蛇穴を出て日光浴を楽しめり        松元 峯子

令和5年度  定時総会・陽春句会

令和5年3月12日(日) 於 武蔵野スイングホール  

コロナ禍も漸く終息の兆しが見え始め たこの日、令和5年度定時総会と陽春句 会が開催された。満田光生幹事の司会によ り会歌「多摩のあけぼの」を斉唱した後、 吉村春風子会長の挨拶で開会された。  ご来賓の神奈川県協・尾崎竹詩会長、千葉県協・長井 寛副会長よりご祝辞をいただいた後、議長に石原俊彦氏、副議長に関 梓氏 を選出し議事に入った。
第一号議案 2022年度事業報告
第二号議案 2022年度収支報告及び会計監査報告
第三号議案 2023年度事業計画案
第四号議案 2023年度収支予算案
(第一号及び三号議案は石橋いろり事業部長、同二号は根岸操経理部長、佐々木克子監査役、同四号は根岸操経理部長が報告) 以上右の議案が審議され、原案通り、 承認、可決された。なお、第4号議案の 事業収入案について例会費の値上げ等の 質問があり、吉村会長より、幹事会で検 討する旨回答した。 その後、休憩を挟み陽春句会に入った。 今回の投句数は54句、特別選者による選句、 披講、成績発表が行われ、入賞者に賞品 が手渡された。なお、今大会の最高得点者に 永井潮副会長の句が、また特選賞の一句に 多摩地区最年少会員で中
学3年生の西野奏 子さんが選ばれたことは明るい一駒であっ た。 (石原俊彦記)

高得点句

1大根の今日と明日とに切られをり 永井潮 11点

2ものの芽のひとつ一つにある力  吉村春風子 9

3陽炎が出迎えに待つ無人駅    蓮見徳郎 9

4推敲を重ねる一字笹子鳴く    長井寛 7

5帰り来てひとりの春の灯をともす 江中真弓 6

6花の絵のマンホール踏む二月かな 秋山ふみ子 6

7無心とはただ歩くこと春の尾根  宮腰秀子 6

8老化とはあの白梅が遠いこと   野口佐稔 6

9流氷やさまざまな声ひびきあふ  根岸操 5

10陽炎はもみくちゃスクランブル交差点 飛永百合子 4

陽春句会特選賞
尾崎竹詩撰  陽炎はもみくちゃスクランブル交差点 飛永百合子
長井寛撰   吾というはるけきものに芒の穂    髙野公一
前田弘撰   吾というはるけきものに芒の穂    髙野公一
遠山陽子撰  花の絵のマンホール踏む二月かな   秋山ふみ子
冬木喬撰   座蒲団に猫睡りおり雛の間      蓮見順子
三池泉撰   そっと手をにぎる感触春の恋     清水弘一
三浦土火撰  推敲を重ねる一字笹子鳴く      長井寛
江中真弓撰  ものの芽のひとつ一つにある力    吉村春風子
髙野公一撰  ご飯炊いてわれ九〇の祝とす     川島一夫
吉村春風子選 大根の今日と明日とに切られをり   永井潮
根岸敏三撰  みつあみが四人こしかけ春の暮    西野奏子
山崎せつ子撰 ものの芽のひとつ一つにある力    吉村春風子
戸川晟撰   大根の今日と明日とに切られをり   永井潮
小山健介撰  大根の今日と明日とに切られをり   永井潮
根岸操撰   推敲を重ねる一字笹子鳴く      長井寛
蓮見徳郎撰  帰り来てひとりの春の灯をともす   江中真弓
水野星闇撰  大根の今日と明日とに切られをり   永井潮
佐々木克子撰 ものの芽のひとつ一つにある力    吉村春風子
石橋いろり撰 臘梅や時間が淡く透きとおる     山崎せつ子
大森敦夫撰  帰り来てひとりの春の灯をともす   江中真弓

 

第二回 俳句研究会 

2月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 石橋いろり・秋山ふみ子・山崎せつ子・
     山本ひまわり・満田光生
     参加者27名
★講話  夏目重美[俳句文芸と縄文文化との邂逅試論]
大仏の見震いひとつ春寒し        石原 俊彦
日の匂い風の匂いや梅八分        松元 峯子
しらぬ間といふ刻のあり落ち椿      吉村春風子
鼻歌はダンプの窓の早春賦        山本ひまわり
寒明ける乗換駅に正誤表         前田  弘
春うれし歩きスマホの女子を抜く     野口 佐稔
多羅葉(たらよう)の葉うらに「へいわ」風光る    根岸  操
雪解風港の隅の倉庫寄席         小山 健介
八海山久保田澤乃井獺祭         満田 光生
きらめいて水水鳥に食べられる      髙野 公一
ふらここや老女は一人風を切る      森本由美子
野火走る地の神火の神従えて       佐々木克子
ぺんぺん草手つなぎ鬼のふと孤独     石橋いろり
一ミリの萌黄の宇宙木の芽時       高瀬多佳子
今日終る落葉ゆっくり踏みしめて     山崎せつ子
春の雪母が思ひを積むやうに       三浦 土火
よたよたと猫の這ひ出る炬燵かな     関   梓
朝食の津軽の記憶蜆汁          夏目 重美
雑踏を見はなして来た犬ふぐり      前田 光枝
ホモ・サピエンスに核の狂気や春寒し   亀津ひのとり
囀や一樹に寄するベビーカー       秋山ふみ子
花ミモザ矢鱈尾を振る門の犬       稻吉  豊
春三日月どこまでもゆけ999      青木  隆
夕さりて薄氷光る谷戸田跡        尾崎 太郎
状況の思うに任せぬ春の泥        戸川  晟
足痛の夫を連れ出す梅見かな       西前 千恵
幾重にも大小水輪鴨親子         根岸 敏三

第一回 俳句研究会 

1月28日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 根岸敏三・秋山ふみ子・玉木康博・
     石橋いろり・関梓・根岸操・石原俊彦・
     山本ひまわり
     参加者30名
★講話に替わり出席者全員の近況報告
一片の薄氷にある風のあと        吉村春風子
空つ風更地に残る流し台         尾崎 太郎
いつか読む本を並べて去年今年      秋山ふみ子
水が出て湯の出る暮らし御慶かな     野口 佐稔
冬晴れやあつけらかんと人の逝く     三浦 土火
たっぷりと老人になり初詣        前田  弘
厨より妻のハミング四日かな       小山 健介
凍轍父の語りし俘虜の日々        水野 星闇
寒茜輸血されゆく水平線         森本由美子
梅ふふむほめあって見る知らぬ仲     水落 清子
老人の歩く速さの冬の川         根岸 敏三
冬落暉ビルの隙間に嵌り込み       山本ひまわり
好きだから抱かえて帰る葱の束      戸川  晟
追ひかける記憶のかけら寒に入る     関   梓
蠟燭とお堂の声明(しょうみょう)寒揺らす       玉木 康博
避難するとしたら葉牡丹の中       前田 光枝
枯芒まっすぐ立ちて風さがす       山崎せつ子
寒梅や百姓一揆処刑塚          満田 光生
コロナ禍も早や四年目か初暦       石原 俊彦
剥ぐ音のいさぎよきかな初暦       越前 春生
日向ぼこ袖の毛玉は目の敵        稲吉  豊
破魔矢もていくさの欝を払ひたし     亀津ひのとり
まどろみの途中で春とすれちがう     佐々木克子
友よ旧臘(きゅうらふ)死出の旅人(たびと)になりしとぞ     淵田 芥門
枯葉舞う古きシャンソン口遊む      松元 峯子
寒つばき卓にほどける蕾かな       根岸  操
ジャングルジム乗る子廻る子風光る    西前 千恵
厳寒の星90秒からの選択肢(終末時計)  石橋いろり
電気ガス値上りの中寒波来る       青木  隆
大寒や車のあとにまた車         大森 敦夫

過去の活動記録

令和4年度

第40回東京多摩地区俳句大会

 武蔵野の紅葉も色づき始めた11月5日(土)、武蔵野スイングホールにて、二年間コロナで流れていた俳句大会を開催した。53名の参加を得て、会歌『多摩のあけぼの』作詞の沢田改司さん/作曲の宮川としをさんを偲びつ斉唱。来賓の山本敏倖東京都区会長、徳吉洋二郎千葉県副会長、芳賀陽子神奈川県事務局長より40周年を迎えたことの祝辞を頂戴。歌人であり宮中歌会始選者である今野寿美先生により「近くて違う俳句と短歌」と題してご講演いただいた。

今野寿美先生の講話
若い頃に感銘を受けた句と短歌を一対にして、打楽器的な俳句/弦楽器的な短歌という宇多喜代子さんのコメントを引用しつつ、その一つ一つの魅力を熱くお話しいただき、最期の質疑応答コーナーでは多くの質問がでた。休憩をはさみ、576句の作品集が配られ、互選による入選30句と特別選者による特選賞の表彰式が行われた。投句者には若い中学生もおり、期待をこめて特別奨励賞を急遽設けた。ただ、句会運営側のミスで、時間配分をコロナ前の懇親会があるつもりで設定してしまい、大幅に時間が押してしまった。今野先生の講評のみとなってしまい、来賓や参事の方がたからの講評を伺うチャンスを逸してしまったことは残念でならない。運営側として汗顔の至りである。この場で関係各位にお詫びし、今後の課題として、プラスに生かしていきたいと思っている。  (石橋いろり)

大会賞    花火終え夜空を星に返しけり     永井 潮

大会賞の永井潮氏(左)

入賞     父の世は父が持ち去り敗戦忌     下田峰雄
       ドクターの椅子半回転「風邪ですね」 川崎果連
       満月やどのわたくしを連れ出すか   山本敏倖
       男郎花つまらなそうに群れている   高野公一
       江の島は海の音から秋になる     石原俊彦
       お月様地球は青きままですか     関戸信治
       児の笑顔もう向日葵になっている   飛永百合子
       焼きいも屋ほかほか声を置いてゆく  吉村春風子   
       せっかちな母の動線夏座敷      鈴木砂紅

特選賞  
今野寿美選  ぷーちんの眉間に誤植底雪崩   並木邑人
山本敏倖選  空蝉と捻子が一本落ちてゐる   田口武
徳吉洋二郎選 お月様地球は青きままですか   関戸信治
芳賀陽子選  夏座敷床に野の風活けてある   田畑ヒロ子
安西篤選   勤労感謝の日ネクタイが長すぎる 徳吉洋二郎
前田弘選   私が二人いる日や終戦忌     永井潮
遠山陽子選  大家族だったこの家残る虫    尾崎竹詩
冬木喬選   炎昼や男勝りという歩調     飛永百合子
三池泉選   老翁に口笛返す少女かな     岩下三香子
三浦土火選  秋天へ届け供養の護摩太鼓    坂間賀世子
江中真弓選  リンゴ剥くただそれだけの平和かな  田邉彬
髙野公一選  空蝉と捻子が一本落ちてゐる   田口武
吉村春風子選 菖蒲園いつしか傘が杖となり   根岸操
根岸敏三選  花火師の人生咲かす夜空かな   永井潮
永井潮選   モナリザの田んぼアートや稲の秋 尾関英正
山崎せつ子選 露草や洗いざらしの朝が来る   島彩可
戸川晟選   青葡萄群れる頃にはママになる  加藤祐子
小山健介選  露草や洗いざらしの朝が来る   島彩可
根岸操選   行く秋や多摩に檜皮の匂濃く   三浦土火
蓮見徳郎選  柿捥ぎて空に余白の生れたる   吉村春風子
水野星闇選  金木犀祖母の文箱に金釦     石橋いろり
佐々木克子選 山の声水のこゑ聴くもみぢ狩り  水野星闇
石橋いろり選 花火終え夜空を星に返しけり   永井 潮
大森敦夫選  行く秋や多摩に檜皮の匂濃く   三浦土火

特別奨励賞  福引の五等のバスボム月涼し   西野奏子


講師・今野寿美先生と来賓(後列)・会長

東京多摩地区 秋の吟行会 

令和4年10月1日(土)府中市郷土の森博物館

快晴の空の下、27名の参加者を得て府中の郷土の森を吟行しました。多摩川の北側に位置し、ハケの地形を利用して清らかな水路がめぐらされており、そのせせらぎと、樹々や草花に癒されました。プラネタリウムや展示室を擁する本館から欅並木をゆくと明治の村役場、郵便局、学校などが復元されており、句材は豊富だったよう。並びの旧民家の美蔵のカフェや土日限定の拉麺屋、出店の団子屋など、食欲も満たされたのではないかと思います。 永井潮さんの「段丘の日をこぼしつつ水澄めり」の一言に尽きる、光・水・風を存分に享受した一日でした。  (石橋いろり)

第7回 俳句研究会 

7月23日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 根岸敏三・秋山ふみ子・玉木康博・石橋いろり・関 梓・満田光生・稲吉豊
参加者23名
★講話・・・吉村春風子  
「ウクライナ侵攻下における俳句・短歌・川柳」
審判の声の抜けゆく雲の峰       永井  潮
朝顔やきのふを忘れけふを生く     根岸  操
炎天に電柱の影縮みをり        笹木  弘
夕間暮れ溶けて現る黒揚羽       石原 俊彦
朝顔市抜けて己の歩にもどる      吉村春風子
婀娜(あだ)なまま凌霄の花掃かれをり  山本ひまわり
枇杷むくや毎年語るエピソード     関   梓
藻刈舟池に青空戻したり        根岸 敏三
終活をと思へど夫は蚊帳の外      西前 千恵
寄り道をしてもしなくても狗尾草    前田 光枝
百日紅また用のない人に会い      前田  弘
露草の藍になじんでいる時間      山崎せつ子
長焼きをみんなで分けて土用丑     三浦 土火
国葬が小糞と聞こえる溽暑かな     依田しず子
分断はアメーバーのごと半夏生     石橋いろり
水音のしづかな厨夏のれん       秋山ふみ子
多摩川の河口焦して夕焼くる      長澤 義雄
居ても犬何もなくても蟻の列      稲吉  豊
夏負けと言い二人前たいらげる     飯田 玉記
夏氷ワインで浸す眠れぬ夜       大森 敦夫
骨揚げや蝉啼き泪枯れ果てゝ      淵田 芥門
麦の穂が倒れる平原救え民       玉木 康博
松蝉や土人形の斎(ゆ)庭(には)舞(まひ)  満田 光生

第6回 俳句研究会

6月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 根岸敏三・秋山ふみ子・玉木康博・満田光生・大森敦夫・石橋いろり・山本ひまわり
参加者28名
★講話・・・市川 春蘭  「無季俳句考」
籐椅子の座り心地も形見なる      越前 春生
海の色二つに分かる沖縄忌       満田 光生
八月や人を柱と数へたる        櫻本 愚草
残る歯で父の日と云ふ噛めぬもの    稲吉  豊
反抗期なかったように実梅落つ     佐々木克子
真直ぐといふすがしさの夏木立     吉村春風子
万緑の中しばし真空の時間       松元 峯子
はしと打つ老婆手練の蠅叩       三浦 土火
この道は曲らない道桜桃忌       戸川  晟
父の日と言ふてうなぎの贈物      長澤 義雄
後朝の琵琶の余韻や蝉丸忌       大森 敦夫
中央線北岳そびえ甲斐涼し       玉木 康博
老いてなほ知は塵ほどの古書の黴    淵田 芥門
蜘蛛飛んで新天地という次の枝     依田しず子
一つ捨て一つ身軽に夏の夕       関   梓
到来の朝採りコーンをまるかじり    西前 千恵
言い訳の半分聞きし生ビール      笹木  弘
追善の無き兄の忌よ濃紫陽花      水野 星闇
夏木立木陰一枚二百畳         亀津ひのとり

東京多摩地区現代俳句協会 初夏吟行

6月11日(土)小金井市の滄浪泉園とはけの道を辿り萌え木ホールにて開催。
コロナ禍の梅雨空の中、3年振りの吟行は25名が参加。此処は大正期、犬養毅首相により名付けられた友人の別荘で、武蔵野の面影を残す深緑が心地良く、はけと湧水を生かした泉園の水琴窟の音を聞いたあと、はけを下り野川沿いを歩き自然を大いに享受した。

上位入選作品

1位の松元峰子氏(左)
 
清水汲みしばし言葉を洗いけり 松元峰子
人恋ふや暗き森より紋白蝶   根岸 操
新緑の深き黙切る鳥の声    山本ひまわり
昏がりへ誘ふ石段青葉風    秋山ふみ子
紫陽花や下れば上るハケの坂    亀津ひのとり 
緑陰の歳月重し甃滑る     依田しず子
青楓千年絶えぬハケの水    稲吉 豊
射るような視線背後に木下闇  三浦土火
武蔵野の名水育ち蚊に刺さる  竹田和明
梅雨晴間スニーカーを締め直す 石橋いろり       

第5回 俳句研究会           

5月28日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 石橋いろり・大森敦夫・戸川晟・水野星闇
     参加者33名
★講話・・・前田 弘 
鈴木石夫全句集「裏山に名前がなくて」を読む

誰からも離れていたい白日傘      門野ミキ子
筍のまだ生きてゐる重さかな      越前 春生
覚えないから忘れないぎしぎし     前田  弘
ラムネ飲むあの音この音転がして    水落 清子
春が逝く一切合切そのままに      永井  潮
どくだみの団結力に惚れました     前田 光枝
海は今紺の静けさ夏はじめ       三浦 土火
青時雨光こぼして鷺の佇つ       石橋いろり
冷酒酌む父の知らざる齢生き      吉村春風子
生垣に一筆書きの「薔薇どうぞ」    宮腰 秀子
真ん中はまとも蚕豆の三兄弟      稲吉  豊
柿若葉すこし濃い目の茶をいれる    山崎せつ子
朝顔に名前をつけし「元気くん」    根岸  操
独り酌む葉桜の夜は人肌燗       淵田 芥門
のらぼう菜多摩の横山見て育つ     飛永百合子
雲の峰町は名前を二度替えて      大森 敦夫
寝ねがてに父母の声聞く籠枕      水野 星闇
吊皮に逞しき腕更衣          戸川  晟
頬杖の指にしめりや蝸牛        松元 峯子
人類の立ち位置見えぬ青葉闇      依田しず子
塀際の八重のどくだみ白の濃き     山本ひまわり
青(あお)甘蔗(きび)の道自転車を港まで  満田 光生
雨上る町に乱舞の夏つばめ       亀津ひのとり
まるまると育児順調鯉のぼり      飯田 玉記
飛び乗りてひと時扇ぐ薄暑かな     石原 俊彦
鬼灯や花を落としてまだ緑       根岸 敏三
夕照へ羽搏くしぶき通し鴨       長澤 義雄
万緑の中リフトで降る高尾山      西前 千恵
B円統治御高配の果てチャンプルー   櫻本 愚草
肩先をかすめて駅の夏燕        秋山ふみ子
和菓子屋の紺ののれんや街薄暑     佐々木克子
聖五月なんじゃもんじゃは風の中    関   梓
白つつじドレスに映えて笑みの新婦   玉木 康博

第4回 俳句研究会

4月23日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 根岸操・秋山ふみ子・玉木康博・戸川晟・飛永百合子・大森敦夫・関 梓
参加者30名
講話 水野星闇氏「健吉と万太郎『句歌歳時記』に見る万太郎句」 
薫風へ投網のようにシーツ干す     永井  潮
囀りや笑ひすぎたる春キャベツ     関   梓
青葉若葉身体に浮力加わりぬ      松元 峯子
これからが本当の私花は葉に      戸川  晟
持て余す心の波や花うつぎ       吉村春風子
たんぽぽは咲いただろうかウクライナ  飛永百合子
本質はどこに玉葱むきにけり      根岸  操
ゆでこぼすパスタの匂ひ菜種梅雨    秋山ふみ子
人様に云へない動機遍路笠       稲吉  豊
あれ〜〜の会話もどかし日永かな    三浦 土火
乳飲み児預けお兄ちゃんの入学式    飯田 玉記
入学式手を挙げて渡る父母祖父母    淵田 芥門
早起きや雨戸開ければ春がゐた     大森 敦夫
桜餅を供え無心の般若経        石原 俊彦
たらちねの母をおもえば燕くる     佐々木克子
古池の水面くろぐろ蝌蚪の群      長澤 義雄
傍観を咎めるごとし春嵐        山本ひまわり
花冷や卍(かぎじゅうじ)とZの一字      石橋いろり
花は葉に行きと帰りはちがう道      前田 光枝
古書捨てて書店の遠し犬ふぐり      野口 佐稔
甘咬みをまだ許されて初桜        依田しず子
冴返る夜は一献の高清水         水野 星闇
花みずき駅まで続く通勤路        根岸 敏三
エスカレータ私と花びら乗せて行く    宮腰 秀子
春灯こころの澱も流れけり        西前 千恵
断捨離を始め蛙の目借時         満田 光生
砲身に桜蕊降る雨もまた         大槻 正茂
花みずき頭上の空気かろやかに      山崎せつ子
鳥飛ばずマリウポリの春地下の人     玉木 康博
花水木今来た道を引き返し        前田  弘

東京多摩地区現代俳句協会 令和4年度定時総会・陽春句会

日時 令和4年4月9日
会場 武蔵野スイングホール11階 レインボーサロン
総会参加者27名
陽春句会投句(43句)

永井副会長挨拶

戸川議長・前田副議長

東京都区、千葉県、神奈川県の会長を来賓にお迎えし、令和4年度の総会・陽春句会が、4月9日に武蔵野スイングホールにて3年ぶりに開催された。開会に先立ち、全国の地区協で唯一の地区会歌「多摩のあけぼの」(作詞・沢田改司、作曲・宮川としを)を斉唱し、意気軒高を示した。議案においては、収支報告、事業計画案などが承認され、事務局長の交代が報告された。その後、和やかな雰囲気のうちに句会が開催され、来賓、大会選者の選により賞を決定。第一位には賞状と賞品、上位入賞者及び特選賞受賞者には賞品が授与された。なお恒例の懇親会は、新型コロナウィルス感染防止の観点から中止とした。

雛あられ手に乗るほどの幸でよい   吉村春風子     

春灯や指が旅する地図の上      長野保代       

鉛筆にかすかな木の香日脚伸ぶ    飛永百合子 

春の雪むかしと昔すれちがふ     水落清子           

戦車ごと包んで飛ばせシャボン玉   石橋いろり

陽炎に手足を付ける振付師      山本敏倖       

弾く人と行く人春の駅ピアノ     玉木康博           

前の世も次の世もなく雪こんこ    髙野公一 

花嫁を待っている庭花辛夷      尾崎竹詩       

囀や人は言葉を紙の上に       根岸 操   

手づくりのひひなと語る母の老い   夏目重美     

空つぽの体育館に花吹雪       大森敦夫   

雪しづりつぐらの主の耳ぴくり    三浦土火 

公園を横切る日課仏の座       前田光枝

第3回 俳句研究会

3月26日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 大森敦夫・秋山ふみ子・玉木康博・稲吉豊・石橋いろり・関 梓・白尾幸子
参加者 31名
講話 日野百草氏「評伝 赤城さかえ」

これ以上優しくなれぬ桜餅       飛永百合子

うららかや外階段は猫だまり      佐々木克子

新卒の孫の名刺に風光る        戸川  晟

おたまじゃくし手足出しても争はず   日野 百草

ウクライナ憂ヒ大和ノ麦ヲ踏ム     三浦 土火

口紅の減らぬコロナ禍春が来た     山崎せつ子

みまかるに程良き花の三分かな     越前 春生

しあはせは気づかずに過ぐすみれ草   根岸  操

教壇を去る日間近よひこばゆる     満田 光生

遠国の人々思ふミモザの黄       秋山ふみ子

駅ピアノさらりと弾いて鳥雲に     関   梓

先頭に鉄腕アトム鳥帰る        髙野 公一

花冷えや待合室の椅子の数       前田 光枝

寒明ける不用不急のぼくですが     前田  弘

春泥やチャイコフスキーの不協和音   石橋いろり

呼ばれたるやうな幻覚椿落つ      稲吉  豊

廃校の校歌の石碑涅槃雪        大森 敦夫

曼陀羅に安寧祈る落椿         河井 時子

白菜の重石が沈み女性デー       永井  潮

沈黙の白シクラメン娘の残業      岡崎たかね

砲弾の火煙がかくす朧月        野口 佐稔

戦火とふ拡がる春愁国を越へ      吉村春風子

両の手で包む紫陽花の弾力       宮腰 秀子

東風吹かば肩をすくめる浪江町     玉木 康博

花冷えや老婦人らの高笑い       山本ひまわり

幼子のトーマス機関車風光る      西前 千恵

眉引(まよびき)の多摩の横山春霞      松元 峯子

花に暮れ桶の浅蜊のみな触手      淵田 芥門

薄墨の刷かれ暮行く春の海       石原 俊彦

川蝉やいつもの岩の指定席       根岸 敏三

梅の花狭い近道闇照らす        白尾 幸子

 

過去の活動記録

<令和3年活動記録>

◇第11回 俳句研究会 11月27日(土) 立川市子ども未来センター
担当幹事:根岸敏三、秋山ふみ子、佐々木克子、水野星闇、大森敦夫、山本ひまわり、根岸 操
参加者:28名
講話:富山ゆたか氏 「写真と俳句」

人におくれ歩くたのしさ落葉路    佐々木克子
生き足らぬ者のにぎはひ冬の街    富山ゆたか
日に当てるだけの神輿を引き出せり  永井  潮
何するも先ずひとり言冬に入る    石原 俊彦
沖合は今日も白浪大根干す      三浦 土火
出合ひより別れが多し枇杷の花    越前 春生
瞬いてともる街灯雪催        稲吉  豊
追伸の余白に友の秋意あり      飯田 玉記
虚飾なき冬木が好きとなる齢     吉村春風子
秋高し父の遺品の二眼レフ      前田  弘
才媛の素顔ののぞく焼鳥屋      亀津ひのとり
久しぶり会えばそのまま冬日和    戸川  晟
湯豆腐や断酒の日々の箸重し     根岸 敏三
枯葉降る降るいちにちがすぐ終る   山崎せつ子
平凡な日々こそよけれ冬紅葉     白尾 幸子
あらあなた着いたらしいわ冬銀河   大槻 正茂
小春日にリボンをかけて送ろうか   水落 清子
返事した順から選ぶラ・フランス   飛永百合子
丹前に巻かれ畳に転がりぬ      大森 敦夫
一茶の忌消息を追う勇気なく     前田 光枝
フルートの疾走枯葉舞ひ上がる    満田 光生
小春日や家族総出の庭じまい     河井 時子
蛇穴に入る再起動してゐたる     根岸  操
太陽のほむら溶けだす夕しぐれ    長澤 義雄
断捨離とはさびしき言葉冬の月    秋山ふみ子
信楽の狸腹より濡れそぼつ      山本ひまわり
秋冷や手水に映る己が貌       淵田 芥門
地震ふかく過ぎて広野は冬の闇    水野 星闇

◇第39回東京多摩地区現代俳句協会 俳句大会
令和3年11月6日、武蔵野スイングホールで開催予定であった表記大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で会場での大会は中止とし、通信による俳句大会となりました。参加者の互選と特別選者選により次の通り入賞作品が決まりました。(受賞は一人一賞とさせていただきました。)
入賞作品
〈大会賞〉
磨ぎ汁をゆっくり流す敗戦忌     平山 道子
〈入賞〉
保育所に灯る一室ちちろ虫      みどり
秋の灯の一つに帰る杖の音      下田 峰雄
蜩や鼈甲飴が透きとおる       髙野 公一
縄文の雨の匂ひに蓮ひらく      永井  潮
旧姓に戻りましたとサングラス    関戸 信治
空蝉や誰も戻って来ない道      國分 三徳
少年は脱皮の途中春休み       秋山ふみ子
抽斗から取り出す翼星月夜      杉本青三郎
やさしさを形にすれば秋桜      佐々木克子
未亡人とはひどい言葉ね沙羅の花   松元 峯子
銀河垂る高粱畑逃げ来し夜      満田 光生
切手でも買ひに出やうか更衣     稲吉  豊
マスクして人をおそれて夏果てる   戸川  晟
鶏頭の赤心中村哲逝きぬ       夏目 重美
一枚の空に鰯が群れている      依田しず子
新刊の帯がするりと長き夜      水落 清子
豆ごはんいい一日の予感して     原田惠津子
玉簾父の顔して来る息子       西前 千恵
沖縄忌十三歳の朗読詩        岩下三香子
熱帯夜古い輪ゴムの顔でいる     髙木 暢夫
立葵きりりと今日が動き出す     山崎せつ子
母訪へば灯さぬ門の虫の声      淵田 芥門
繋ぐ手のある安心の大夕焼      飛永百合子
あんなにも咲きこんなにも落椿    成戸 寿彦
人形も筆箱もセルロイド 夏     吉田 典子
花菜風翼が生えそうで猫背      なつはづき
風は秋福耳に触れさせてやる     田口  武
タリバンも月の光に眠るらん     加藤 佑子
木戸銭は仮想通貨や村芝居      川崎 果連

大会選者の特選作品
   山本 敏倖 選
生身魂いちばん低い場所にいる    川崎 果連
 
   並木 邑人 選   
鶏頭の赤心中村哲逝きぬ       夏目 重美

   安西  篤 選
磨ぎ汁をゆっくり流す敗戦忌     平山 道子

   前田  弘 選
切手でも買ひに出やうか更衣     稲吉  豊

   金谷サダ子 選
風鈴鳴る人の気配の無い町に     宮腰 秀子

   津沢マサ子 選
この世からはみだしている曼珠沙華  佐々木克子

   遠山 陽子 選
人形も筆箱もセルロイド 夏     吉田 典子

   冬木  喬 選
マスクして人をおそれて夏果てる   戸川  晟

   三池  泉 選
貰い鳴きする蟬もいてあの日くる   永井  潮

   三浦 土火 選
衣食住足りて蓑虫独居中       原田惠津子

   江中 真弓 選
少年は脱皮の途中春休み       秋山ふみ子

   髙野 公一 選
サスペンスドラマみたいなかき氷   島田 啓子

   吉村春風子 選
繋ぐ手のある安心の大夕焼      飛永百合子

   根岸 敏三 選
菊人形疲れ見せたる殿の肩      成戸 寿彦

   永井  潮 選
たをやぎの牡鹿の瞳神事終ゆ     夏目 重美

   山崎せつ子 選
この世からはみだしている曼珠沙華  佐々木克子

   戸川  晟 選
みんみんにせかされていて無職なり  関戸 信治

   小山 健介 選
片蔭を辿り仏教伝来す        國分 三徳

   大友 恭子 選
あんなにも咲きこんなにも落椿    成戸 寿彦

   根岸  操 選
新刊の帯がするりと長き夜      水落 清子

   蓮見 徳郎 選
蜩や鼈甲飴が透きとおる       髙野 公一

   水野 星闇 選
遙かなるムー大陸から土用波     古田  亨

   佐々木克子 選
秋の灯の一つに帰る杖の音      下田 峰雄

   石橋いろり 選
母訪へば灯さぬ門の虫の声      淵田 芥門

   大森 敦夫 選
庭下駄の焦げんばかりや立葵     原田惠津子

<令和2年活動記録>

第11回 俳句研究会
11月28日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 戸川晟・秋山ふみ子・根岸操・石橋いろり・佐藤八重子・関 梓・山本ひまわり・満田光生
参加者 27名
★講話・・・小山健介氏 「コロナ禍の中で」

小春日や猫が耳掻く後ろ脚      稲吉  豊
捨つるもの持たぬ気楽や着ぶくれて  吉村春風子
黄落を埠頭へ急ぐ水素バス      小山 健介
焼芋屋見ているだけのハイヒール   前田  弘
柿おちば老樹の実なほ熟し得ず    淵田 芥門
穭田やほんとだったか母の恋     大槻 正茂
両の手に不義理いっぱい散紅葉    石橋いろり
目を遠くして冬の日につつまれる   山崎せつ子
山茶花や老いは時々ついてくる    前田 光枝
思い出の多き実家の花八つ手     根岸 敏三
古本も岩波新書も秋の暮       宮腰 秀子
リモートのくぐもる声や火恋し    秋山ふみ子
行く末を計れぬ今朝の寒さかな    山口 楓子
子のほかはレンタル七五三写真    永井  潮
枯木立真白き富士を従へて      山本ひまわり
木枯や足のもつれを抱き上げる    佐藤八重子
木守柿ひとつひとつに雀来る     根岸  操
大川は橋つぎつぎに都鳥       満田 光生
セーターの膨らむ翳の円乳かな    水野 星闇
また一人友の空席年流る       白尾 幸子
託されし後事のあまた花八手     関   梓
シャンパンの小気味よき音七五三   戸川  晟
きかぬ子の晴れ着一丁前七五三    石原 俊彦
紅葉高まり山の神集まりぬ      大友 恭子
福島の身もだえ続け秋を染め     櫻本 愚草
トランプさん鬼滅のマスク有りますヨ 三浦 土火
太陽にまみれて歩く冬の園      長澤 義雄

第2回 俳句研究会 
2月22日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・佐々木克子・水野星闇・根岸操・佐藤八重子・大森敦夫・石橋いろり・関 梓
参加者 35名
★講話・・・望月哲土氏 「わき道・より道 おくのほそ道を遊ぶ」

まんさくやコントラバスは牛の声  稲吉  豊
ふくふくと命生まれる春の土    松元 峯子
旅立ちと言いかえ送る春の葬    永井  潮
木の芽草の芽表情筋は動き出す   石橋いろり
多喜二忌や土はしづかに雨を吸ふ  根岸  操
一枚の花菜畑がやわらかい     山崎せつ子
春ショール何かいい事ないかしら  西前 千恵
野水仙膨らんでくる海と風     小山 健介
子持鱈雪に寝かせて朝の市     越前 春生
咳一つすれば席空く電車なり    三浦 土火
白梅にはにかみの色ありにけり   秋山ふみ子
凧 いわきの海を空に聞け     櫻本 愚草
口外をしないと約束とろろ汁    大友 恭子
うぐいす餅粉吹く娘(こ)らの恋ばなし 河井 時子
摘めば又あは雪つみぬ蕗のたう   淵田 芥門
その時利休侘助と命名す      飯田 玉記
ウイルスに春の巨船は崩れゆく   関   梓
下萌に寝そべって聴く地の鼓動   石原 俊彦
取り敢えず空気をたたき石叩    前田  弘
雪解川ただようている眼と眼と眼  佐々木克子
盃に日差しいっぱい梅見酒     長澤 義雄
試着用鏡の前に春立ちぬ      戸川  晟
(はる)北風(きた)の出番ぞウイルス吹き飛ばせ 吉村春風子
紅椿呑み込む濤よ為朝忌      満田 光生
落椿落ちた所に固まりし      根岸 敏三
船星の甲斐の峠に吊されり     大槻 正茂
節分草地を這うようにして活写   宮腰 秀子
コロナ乗せ赤い国から春疾風    笹木  弘
ひとまずは平和のかたち小正月   川島 一夫
居酒屋で学べよ愚妻木の芽和    望月 哲土
雪解風そはかたむきて吹くといふ  水野 星闇
草萠やスパイクの咬む球技場    山口 楓子
私鉄驛靴磨かれて朧月       大森 敦夫
つばさ距離保つ電線見上ぐ春    佐藤八重子
一家に二人が暮らす花椿      髙野 公一

第1回 俳句研究会
1月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・夏目瑶・根岸敏三・石橋いろり・飛永百合子・関 梓
参加者 40名
★講話・・・戸川 晟「小唄の中の俳句等」

大根やしみじみ母性ある白さ    鈴木 浮葉
剣玉の音止みて雪良寛忌      大森 敦夫
虚飾なき冬木が好きとなる齢    吉村春風子
食堂の小母さんだった三が日    飯田 玉記
猿回し見てから足が軽くなる    新井 温子
振袖の襷きりりと弓始       戸川  晟
天辺の一個は月となる榠樝     宮腰 秀子
浜焚火一揆のごとく囲みけり    越前 春生
国会中継炬燵の猫が居なくなる   稲吉  豊
しあはせはこんなものかも餅雑炊  米澤 久子
大寒や二枚一度にシャツを脱ぐ   永井  潮
老妻は夫のAI冬ぬくし      関   梓
マスクマスク銅鑼に大口開く獅子  小山 健介
夜の更けて小正月ねと妻ぽつり   野口 佐稔
埋火や燃す文殻に失せぬもの    淵田 芥門
声出して駅名読む児春隣      近藤 斗升
何となく顔見知りなり初がらす   亀津ひのとり
四角の部屋四角に掃いて寒に入る  秋山ふみ子
大勢の中の孤独や冬すみれ     水落 清子
これ以上華にはなれぬ冬桜     長澤 義雄
遠い目をして一月の樹の声を聞く  山崎せつ子
雪女泣かせて多摩の夜明かな    三浦 土火
氷雨降る無声映画のような街    松元 峯子
鬼夫婦連れ添ううちに福寿草    石橋いろり
煮凝の鮒の目玉に見詰めらる    夏目  瑶
バックパスすまし顔する赤海鼠   大槻 正茂
トーストにコメダのあんこ女正月  根岸  操
じいちゃんのズボンを掴む冷たき手 山本ひまわり
初雪やみちのくは詩を生み易し   飛永百合子
初場所の小兵に湧ける桟敷かな   山口 楓子
冴ゆる夜や胸に真珠のネックレス  西前 千恵
群れ鴨の幹線道路横切った     佐藤八重子
喪帰りの川風頬に初時雨      水野 星闇
野鳥立つ生ける矢先の実千両    尾関 英正
初風呂や天籟と朝日満ちるなり   玉木 康博
初暦いい日を印(しる)す〇(まる)あまた 河井 時子
釣堀に横並びたる冬帽子      根岸 敏三
乳飲み児の天使の笑顔日向ぼこ   白尾 幸子
人違いされて泣き顔初詣      前田  弘
ひとまずは大根の茹汁のよう    川島 一夫

<令和元年活動記録>[2020年1月20日追加更新]

第12回 俳句研究会 12月21日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事 秋山ふみ子・夏目瑶・小山健介・大森敦夫・戸川晟・関 梓
参加者 32名

霜の夜や母の肌衣に名札縫ふ    淵田 芥門 
注連飾る父の残せし釘の穴     根岸 敏三
何かを摑み落ちている片手袋    松元 峯子
サイパンの砂の小壜や十二月    新井 温子
煤逃げの夫や土産を提げてくる   根岸  操
独りになってより山茶花の多弁   戸川  晟
短編の父の一生開戦日       永井  潮
遺すものあまたかかえて去年今年  佐々木克子
居酒屋の席にも序列おでん酒    吉村春風子
山茶花や信玄道という直線     小山 健介
霜柱廃炉の影をざくと踏む     櫻本 愚草
能面の紐をきりりと近松忌     長澤 義雄
山眠るゆっくり話せばわかること  水落 清子
裸木の思索を破る着信音      関   梓
寒の雨喪中葉書にペットの名    石橋いろり
都電降りゆらり狐火入る小路    大森 敦夫
いつの間に小松菜好む姑と似る   佐藤八重子
朝練の靴ひも結ぶ寒さかな     山口 楓子
用なしの軽き身を置く冬日向    河井 時子
街中をポインセチアに荒らされる  山崎せつ子
今日も掃く落葉の好む我が門辺   夏目  瑶
初時雨聞こえぬ耳のわが心音    川島 一夫
埋み火の形(なり)祖父祖母のありしとぞ  水野 星闇
何事もなき日々のまま年暮るる   山本ひまわり
ポインセチア無音の部屋のアクセント  秋山ふみ子
母と娘(こ)のスキップ歩き街師走   西前 千恵
たつぷりと食うてでつぷり寒雀  三浦 土火
綿虫や生命線の短き掌        大友 恭子
酔うた振り恋した振りの暮の街  石原 俊彦
巻き果つる暦あらたな余生在り  飯島  智
八十路して不逞の輩おでん酒   飯田 玉記
目を見張る大樹の眼寒昴       髙野 公一

秋の吟行会
令和元年11月30日(土)  江戸東京たてもの園
快晴にめぐまれ34名の句友が集まりました。園内は江戸から昭和に至る30棟ほどの建造物が移築復元されています。建物を詠み、また降りしきる落葉の中、初冬の景を詠み、句材に恵まれた吟行会でした。 (関 梓・記)

  上位入選十句
今わたし冬日の江戸に里帰り     石原 俊彦
万世橋交番今日の迷子の落葉来る   佐藤八重子
落葉径奥まで行かば神隠し      松元 峯子
引退の都電にしばし日向ぼこ     野口 佐稔
武蔵野のむかしを透いて冬木立    藤原はる美
でこぼこの明治の玻璃戸冬もみぢ   秋山ふみ子
音といふ残らざるもの木の実落つ   吉村春風子
昭和遠し子宝湯へとペア・マフラー  稲吉  豊
浅き冬明治の午砲(ドン)は静まれり   関   梓
写真館頭(ズ) より冬日の自然光    水野 星闇    
  一人一句
着信や冬の都電は動かざる      大森 敦夫
たてものは生きもの木の葉降りやまず  芹沢 愛子
古民家の囲炉裏の匂ひ麦育つ     根岸  操
紅葉かつ散る遠き明治の冬館     西前 千恵
午砲(ドン)のある広場の昼餉冬紅葉   中田とも子
居酒屋の燗酒一杯九十円       根岸 敏三
木の実踏み後悔してる靴の底     水落 清子
足音の師走へ続く風の道       佐々木克子
冬麗や檪大樹の黄金色        夏目  瑶
菰巻の帯しめ亀の型なり       小川 夏葉
緋と燃えしノムラモミヂの一途かな  山口 楓子
紅葉かつ散り薬缶ゆたんぽ喋り出す  石橋いろり
薄暗き部屋にイロリの影ゆらり    伊藤 雅信
こも巻の松の平らか令和なり     宮腰 秀子
赫々(あかあか)と囲炉裏燃ゆ香や江戸農家 河井 時子
先人の知恵語り継ぐいろり辺     白尾 幸子
土間で炊く湯気のびのびと家充たす  遠藤 路子
大釜の今か今かといろり端      戸川  晟
紅葉映え手漉きガラス戸鮮やかに   椋  周二
ふるさとの縁側のよう吊し柿     飛永百合子
木の実雨明治のリズム連れてくる   宮崎 斗士
秋高し吸った空気が声になる     永井  潮
紅葉かつ散る是清の生きた家     小林 育子
茅葺の低き軒先大根干す       三浦 土火

第11回 俳句研究会 
11月23日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・玉木康博・山崎せつ子・蓮見徳郎・石橋いろり・根岸操・佐藤八重子
参加者 31名
★講話・・・松田抱空 「句集と童謡・唱歌」

洗いすぎたような半生木の葉髪      永井  潮 
帰り花うしろの正面もういない      蓮見 徳郎
叱られて風がほどよい冬はじめ      松田 抱空
枯れ落葉舞い込むように欠礼来      野口 佐稔
手さぐりの余生に描く冬桜        大友 恭子
バス停にお知らせ一枚冬ダイヤ      根岸 敏三
寒林を自在に歩き八十歳         前田  弘
団栗は独り歩きをして困る        飛永百合子
タピオカの黒きストロー クリスマス   根岸  操
海鼠噛むふと悪心の芽生えたる      稲吉  豊
緒方貞子さん難民の子と冬の虹      石橋いろり
木の葉散る幽かなる音聞き分けて     長澤 義雄
安達太良の空の青さや葱育つ       大槻 正茂
突風やラガーのやうに身を構ふ      尾関 英正
霜月や親子ときには他人めく       越前 春生
里芋の鍋蓋踊る夕まぐれ         三田村伸子
背泳ぎをしてみる冬の温泉場       鈴木 浮葉
風神は遊び足らずを木枯に        吉村春風子
冬の田や鍬に凭(もた)るる従兄(あに)の影 山本ひまわり
ワイパーの挟む木の葉や文のごと     秋山ふみ子
畳替へ女房にはかに古りにけり      三浦 土火
霜月の水に流せぬことのある       佐々木克子
団栗の太っちょ痩せっぽ独りぽっち    関   梓
袋の中訳ありりんごの溜息        松元 峯子
柿点描農婦鍬持ち朝日課         玉木 康博
残る虫厨に近く存(ながら)へて      水野 星闇
あの二人別れ模様の冬の駅        石原 俊彦
かたわらは雨に滲んで石蕗の花      山崎せつ子
此処に死ぬ冬蝶いろのなき野辺に     淵田 芥門
遠富士の初冠雪や刈野けむり       佐藤八重子
マスクかけおしゃべり奥さんやりすごす  蓮見 順子

第10回 俳句研究会
10月26日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事  秋山ふみ子・佐々木克子・夏目重美・飛永百合子・大森敦夫・根岸操・佐藤八重子
参加者 43名
★講話・・・宮崎斗士 「兜太晩年」

記憶の川削ぎ取ってゆく野分かな   抜山 裕子
長き夜の一燈が生む一行詩      越前 春生
冬がもうすぐかけ算の一の段     新井 温子
紅玉の保守本流の酸味かな      稲吉  豊
両神山に遠吠えをきく月夜かな    三浦 土火
安寧に川は流れよ稲刈れよ      髙野 公一
居ない猫まだ抱いている母冬へ    宮崎 斗士
そぞろ寒行く所なき汚染水      中島 秀次
燕帰るよう兜太師は原郷へ      芹沢 愛子
ポケットにハザードマップ金木犀   野口 佐稔
国訛ないようであり衣被       佐々木克子
一斉に選句の黙や秋深し       秋山ふみ子
月ひとつ夜ごと名を変え十三夜    大友 恭子
豊かさは父母との暮し秋夕焼     水落 清子
樹の下の一本だけの曼珠沙華     山崎せつ子
熱の子に犬添ひ寝する秋時雨     山本ひまわり
秋深む風の便りにも消印       前田  弘
草千切れ魚(うお)影もなし神の旅   山口 楓子
鰯雲果ては彼の地か舞鶴港      石原 俊彦
木道の木目渦巻く百舌の声      大槻 正茂
ちちははに追いつけそうないわし雲  飛永百合子
気ごごろの知れた仲間や初紅葉    西前 千恵
病室の空は四角よ鰯雲        夏目  瑶
よく笑ふ部活の帰りゑのこ草     夏目 重美
草紅葉踏まれていよよ意を通す    吉村春風子
ハイヒール地底のホームに蚯蚓鳴く  関   梓
烏賊秋刀魚高騰されどおんぶ蝗    川島 一夫
忘れ音や月の剣を手水鉢       佐藤八重子
石段にあえぐ参詣夕紅葉       尾関 英正
生垣にまじる芒の二三本       河井 時子
三日月に私の悩みをひっかける    松元 峯子
冬晴れやうろこ光りの心字池     長澤 義雄
月天心シートの隙間のぞき過ぐ    櫻本 愚草
外に出でむ狗尾草の乱舞中      水野 星闇
言の葉の夢まぼろしや都鳥      根岸  操
新米の産地大文字包装紙       根岸 敏三
闇重く心の隙にきりぎりす      戸川  晟
がらんどうの頭の中をいとど跳ぶ   永井  潮
一瞬に大樹を隠す山の霧       飯田 玉記
元気かと朝の電話や枯葉散る     白尾 幸子
白獅子のピースサインやいわし雲   大森 敦夫
螻蛄鳴くや荒れ屋の裏の一塊の土   淵田 芥門
断捨離箱の片隅や土瓶蒸し      石橋いろり

第9回 俳句研究会
9月28日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・玉木康博・大森敦夫・根岸操・戸川晟・佐藤八重子・関 梓
参加者 39名

★講話・・・網野月を「表現における禁じ手は何か?~クラシック音楽の演奏と季語の共通性~」

新酒酌む父の知らざる齢生き      吉村春風子
最後なる兄の新米届きけり       中島 秀次
包装紙きっちり畳む今朝の秋      水落 清子
小鳥来る何か告げたき埴輪の目     越前 春生
交換手人の言葉で秋繋ぐ        櫻本 愚草
新涼の何かが違う朝の音        山崎せつ子
武甲山いつか平らに鳥渡る       亀津ひのとり
穴惑などと人間偉そうに        髙野 公一
虫すだく自衛隊の風呂のれん      石橋いろり
走り蕎麦無口の人が故郷(くに)自慢   戸川  晟
衣被つるり故郷ひき寄せる       西前 千恵
紅の濃き方が正面桃供ふ        稲吉  豊
夕顔や切れた電話の向こう側      大友 恭子
秋涼しするりと解ける片結び      秋山ふみ子
縁あれば碌でなしでも藪枯らし     網野 月を
彼岸花家族のやうにかたまりて     根岸  操
透明な風に遊ばれ秋桜         飯田 玉記
蘊蓄も薬味のひとつ走り蕎麦      石原 俊彦
草の花名もなく咲いて傘寿かな     河井 時子
秋の宵歎異抄など出してみる      山本ひまわり
秋茄子を肴に嫁が煮浸しへ       尾関 英正
言の葉を夕べに捨てる白木槿      松元 峯子
新月にある温もりや闇に闇       大森 敦夫
曼珠沙華すっくと人を欺かず      佐々木克子
書きよどむインクの滲み秋深し     佐藤八重子
生まぬ子を育てし母に感謝する     玉井 吉秋
頼まずとも研がれている刃新豆腐    関   梓
長き夜や人それぞれに人おもふ     永井  潮
ポヨポヨのおなか押し込む秋モード   三浦 土火
静けさや燕帰りし余呉の湖       夏目 重美
コスモス咲くこの先いずれ灼熱か    川島 一夫
月明の木道しるき尾瀬ヶ原       長澤 義雄
門口の水引草の白と紅         山口 楓子
紫苑(きく)手向けけふ初めての独り言  淵田 芥門
旅立ちぬ天の川へと旧き友       鈴木 浮葉
蜩や天に向かって駆けのぼる      白尾 幸子
だれかさんの小さい秋を見つけたい   新井 温子
ちちろ鳴く母は忙しく台所       根岸 敏三
秋出水この季語飛ばす超暴雨      玉木 康博

第8回 俳句研究会 
8月24日(土)武蔵野市かたらいの道・市民スペース
担当幹事  秋山ふみ子・佐々木克子・根岸敏三・水野星闇・根岸操・大森敦夫・稲吉豊・飛永百合子
参加者 36名
★講話・・・吉村春風子 「私見による俳句と短歌の違い」

老人の咀嚼八月十五日         越前 春生
ふた言の問ひにひと言冷奴       永井  潮
美術館は秋の器と思ひけり       秋山ふみ子
鳴かざれば己失ふ法師蟬        吉村春風子
万緑や足湯に十指遊ばせる       蓮見 徳郎
団扇風ゆるし合ふとはこんなこと    水落 清子
いくたびの土曜日があり百日紅     飛永百合子
新聞を畳み直して夏が逝く       山崎せつ子
今生の妻はこの人秋茜         三浦 土火
八月や幼なじみの真空管        前田  弘
銀座朱夏ガラスのビルの旗艦店     高坂 栄子
八月や妻はは祖母としての黙      新井 温子
螇蚸跳ぶ遠近眼鏡の視野越えて     稲吉  豊
雨垂れの一音一音秋に入る       根岸 敏三
豊穣のうねり案山子の得意顔      山口 楓子
ぼくは見て妻見ていない流れ星     大槻 正茂
戯れごとをかはす扇子の香の甘し    淵田 芥門
ばば抜きをして婆(ばば)となり夜の秋  根岸  操
知らぬ間に腿に青痣虎が雨       松元 峯子
脚光は浴びたことなし手に花火     鈴木 浮葉
敬老日自己申告の回覧板        西前 千恵
道端で俺を踏めとや秋の蟬       大森 敦夫
月観てる姉に少女の戻りたる      飯田 玉記
かき氷憲法談義しばし止む       戸川  晟
乱れ萩ゆっくり過ぎる五能線      蓮見 順子
越後平野に母と子四人敗戦日      野口 佐稔
欅(けやき) 櫟(くぬぎ) 楢(なら) 武蔵野の風涼し 内田 牧人
虚・虚・虚・虚と山ほととぎす身は虚ろ 櫻本 愚草
暁暗の空に道あり鳥渡る        長澤 義雄
繊月の宙に鎌おく熱帯夜        関   梓
八木節の声吸い込まる祭空       石原 俊彦
錠前の鍵みつからず秋に入る      飯島  智
青芒心底人を憎めない         佐々木克子
青空へゆるりと浮かぶ黒揚羽      玉木 康博
盆の客葬家達者を愛でにけり      水野 星闇
鳥人間潮風つかみ夏の空        石橋いろり

第37回東京多摩地区現代俳句協会俳句大会
令和元年7月13日(土)於・武蔵野スイングホール

 梅雨未だ明けやらぬ中、東京多摩地区現代俳句協会の俳句大会が開催された。出句者154名、投句数898句であった。
高らかに会歌をうたふ花の昼 操 (永井潮特選)のように恒例の会歌斉唱、司会は戸川晟副会長、根岸敏三副会長が開会宣言をされた。
 吉村春風子会長の挨拶、中村和弘先生はじめ、ご来賓の柏田浪雅本部幹事長、今野龍二・都区協総務部長、渡辺和弘・神奈川地区協副会長、並木邑人・千葉地区協会長の各氏よりご祝辞を賜りました。

講演する中村和弘現代俳句協会会長

 記念講演は現代俳句協会会長・中村和弘先生の「加藤楸邨のシルクロード」会場には「陸」編集長の大石雄鬼氏によりシルクロードの映像と音楽も流された。
 休憩後、成績発表に移り、大会賞をはじめ三十位までの入賞句と特別選者の特選句が顕彰された。大会賞の佐々木克子氏が受賞者を代表して謝辞を述べられた。その後、ご来賓はじめ大会の特別選者に講評を戴いた。句の核心を突いた選評は句友が一堂に会する俳句大会ならではの貴重な場であった。大森敦夫・事務局次長の閉会の辞をもち大会は滞りなく終了し、その後の懇親会も旧知の又新しい句友との和やかな交流の輪が広がった。(関梓・記)

〈大会賞作品〉
万緑の点となるまで歩きたい     佐々木克子

〈大会選者の特選句〉
 中村 和弘 選
かがり火の炎で濡れるかたつむり   玉井  豊
 並木 邑人 選
冷蔵庫別居の是非を入れてある    川崎 果連
 渡辺 和弘 選
万緑の点となるまで歩きたい      佐々木克子
 今野 龍二 選
あじさゐや二泊三日の流離譚      稲吉  豊
 沢田 改司 選
花菖蒲水に疲れて雲を見る       前田  弘
 安西  篤 選
父の日やちちそつくりの訛聞く     宇賀いせを
岩崎清太郎 選
啓蟄や動く歩道にのつかつて      秋山ふみ子
 岡本 久一 選
保育所はおやつの時間広島忌     かわにし雄策
 金谷サダ子 選
独りといふ自由に似てる花疲れ     藤倉 頼江
 田村  實 選
青空をつかんだ梅から咲き出しぬ    岩田  信
 遠山 陽子 選
ひろしま忌赤子のものが流れ来る    沢田 改司
 冬木  喬 選
今生きてゐるといふこと汗の玉     清水万ゆ子
 前田  弘 選
夜桜を燃える絵本と見ていたり     安西  篤
 三池  泉 選
さえずりをききわけているおじいさん  佐々木克子
 柏田 浪雅 選
ボクサーの父へ束ねて姫女菀      佐藤 映二
 江中 真弓 選
大いなるマンネリズムとしてバナナ   城内 明子
 三浦 土火 選
逢ひに行く今年も木曽へ夏帽子     吉村春風子
 佐々木克子 選
ポトフ煮て昔ばなしの山眠る      水落 清子
 水野 星闇 選
誰彼の尻見てすすむ潮干狩       永井  潮
 吉村春風子 選
二月尽日記に余白殖えはじむ      永井  潮
 根岸 敏三 選
本家よりすこし大きな墓洗ふ      小池つと夢
 永井  潮 選
高らかに会歌をうたふ花の昼      根岸  操
 山崎せつ子 選
逃水が逃げこむ遮断機が下がる     足立喜美子
 稲吉  豊 選
花火だねそだね静かなダージリン    戸川  晟
 戸川  晟 選
胎動を感じたあの日のチューリップ   水落 清子
 小山 健介 選
改元の五月ウィリアムテル序曲     永井  潮
 大友 恭子 選
天国をぐっとひきよせ曼珠沙華     戸川  晟
 根岸  操 選
過ぎし日日すべてうべなふ春嵐     西   遥
 蓮見 徳郎 選
半熟の太陽沈む春岬          高木 暢夫
 石橋いろり 選
冬りんご留守番の子の耳聡き      君塚 恵子
 大森 敦夫 選
積雪の光背後に爪を切る        高橋 宗史

37回 俳句大会 入賞作品
雛壇の一番下にアンパンマン      小坪亭ゑん
缶詰を開ければ海よ多喜二の忌     市川 春蘭
大いなるマンネリズムとしてバナナ   城内 明子
先のこと妻がぽつりと言ふ端居     吉村春風子
一斉に万の黙祷蝉時雨        かわにし雄策
春キャベツ切れば一面笑ひ皺      山下 遊児
恐竜に戻るクレーン朧月        原田えつ子
銀の匙青いカヌーとなるメロン     越前 春生
空間のあやとりをする螢かな      山本 敏倖
元通り畳めぬ新聞五月来る       永井  潮
ぶらさがるほかに術なしからすうり   今野 龍二
釣忍どこへも行かぬ人に買ふ      青木 絢子
コーヒーは吾が句読点日脚伸ぶ     高坂 栄子
年輪の育つ音して山眠る        國分 三徳
胎動を感じたあの日のチューリップ   水落 清子
疲れたら方言で良か五月病       原田 洋子
蕗の筋すうっと新しい人生       大西  惠
夜桜を燃える絵本と見ていたり     安西  篤
蛇口から春がとびだす小学校      岩田  信
小春日を付録のようにおばあさん    髙野 公一
フクシマを歩いた白靴の痛み      松元 峯子
口紅の少しはみ出る目借時       島田 啓子
しやぼん玉街なかにあるけもの道    柏田 浪雅
母の日の自由時間を使ひ切る      小峰 桃香
つまらない人だと言われ蚊を叩く    川崎 果連
古茶新茶出来ないことが増えてゆく   藤倉 頼江
売り声も風に泳がせ金魚売       蓮見 徳郎
花菖蒲水に疲れて雲を見る       前田  弘
なかなかのブラックホール春炬燵    加藤 三朗

第7回 俳句研究会 
7月27日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事  秋山ふみ子・佐々木克子・永井潮・小山健介・玉木康博・飛永百合子・関 梓
参加者 38名
★講話・・・夏目重美 俳句における前衛と漂泊~闇の超越と達観と未来と~

片蔭に先住権のやうなもの     稲吉  豊
海霧深し島が迷子となっている   小山 健介
忘れたき事は忘れず夏蜜柑     関   梓
声かけてふれて明日捥ぐミニトマト 水落 清子
祖母からの風は低くて奈良団扇   石橋いろり
禿頭に雌の蚊妻の平手打ち     淵田 芥門
曝す書のふはりと落ちし正誤表   越前 春生
吊革に目瞑り祷るヒロシマ忌    野口 佐稔
帰省子の大の字に寝る青畳     河井 時子
梅雨寒や確かめられるフルネーム  飛永百合子
七曜を確かむ生活ところてん    大友 恭子
初デート花火の間合い長かりき   中島 秀次
セミ図鑑見て蝉を聞く都会の子   水野 星闇
セミナーを出で夏蝶と成る少女   早川恵美子
風の盆閑かに空を切る十指     新井 温子
金魚玉プロコフィエフのニ短調   大槻 正茂
氾濫の川を見ている青胡桃     佐々木克子
氷水グランドよぎる大薬缶     山口 楓子
貝風鈴籠の赤子の指動く      三浦 土火
夏蝶の翻りつつ色こぼす      秋山ふみ子
私のための嘘を下さいきりぎりす  戸川  晟
楸邨忌己が影追い坂上がる     山本ひまわり
育児終え非正規なんです夏の空   川島 一夫
夫と居る心の闇を螢とぶ      永井  潮
さはさはとスカート夏空の交差点  根岸  操
傘さして土木実習男梅雨      亀津ひのとり
耳よりな話耳から消えて秋     前田  弘
逢うたびに色逃げてゆく濃紫陽花  松元 峯子
向日葵の曇りの日には肩凝りし   根岸 敏三
忘れたい忘れてならない終戦日   飯田 玉記
汗拭いて散歩の犬と目を合わす   山崎せつ子
立飲みのきゆつと喉鳴る鱧の皮   米澤 久子
棘まみれ捻れ者の胡瓜捥ぐ     夏目 重美
砂浜に手掘り温泉月涼し      長澤 義雄
メロン来るいつもの律儀な顔も連れ 西前 千恵
夏の星水底うつす孤独かな     白尾 幸子
カロライナジャスミン青々梅雨の晴 玉木 康博
東海の蟹のたわむれ泡を吹く    櫻本 愚草

第6回 俳句研究会 
6月22日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事 秋山ふみ子・佐々木克子・小山健介・山﨑せつ子・大森敦夫・根岸操・石橋いろり
参加者 39名
★講話・・・霧野萬地郎氏 「サファリ(旅)と俳句」

辣韭剥く一年分の寡黙かな        中島 秀次
大夏野そのまた先のオホーツク      長澤 義雄
欲しきもの年ごとに減り茄子を植う    永井  潮
含羞も止り木も死語太宰の忌       亀津ひのとり
納得の免許返納五月晴          新井 温子
来し方のひとつは触れず水中花      稲吉  豊
若者がただ集まって渋谷夏        山崎せつ子
水にある万緑深し鯉の口         髙野 公一
肩書のなき気安さよ夏帽子        越前 春生
断捨離や声すき通る夏座敷        栗田希代子
青葉風フルートの音跳ねまはる      満田 光生
捩り花今日こそ言おうか言うまいか    飯田 玉記
誰にでも「長い(ロング・)お別れ(グッドバイ)」街薄暑 野口 佐稔
十薬や封印したきこといくつ       秋山ふみ子
沈黙の闇重くする河鹿かな        戸川  晟
悩みごと葉裏に秘める蓮浮葉       根岸 敏三
コンドルは夏空を恋う檻の中       松元 峯子
街薄暑ポケモンとなる飴細工       小山 健介
南西風や摩文仁の丘の海鳴りぬ      夏目 重美
病床の妻への手紙螢籠          石橋いろり
末の子の嫁ぐ日きまりこあぢさゐ     大槻 正茂
父の日やサイズ細めの綿パンツ      根岸  操
雲間より顔洗ひたて梅雨の月       鈴木 浮葉
新記録伝えるラジオ青嵐         水落 清子
ハンカチをたゝみたゝみて愚痴つづく   河井 時子
落款の角(かど)が欠けたる夏の富士    大友 恭子
緑蔭や包丁を研ぐ音のして        山口 楓子
遠雷や父の口髭濃かりけり        佐々木克子
梅雨空や老いし前座の初高座       霧野萬地郎
払うても払うても貧乏かづら       三浦 土火
父の日や苦瓜じつと出番待つ       関   梓
私にも白化現象梅雨に入る        川島 一夫
麦の秋スマホに囲まれ文庫読む      白尾 幸子
さみだるゝ夜や悼む句をいかで詠む    淵田 芥門
一列に育つ茄子(なすび)や都市農家    西前 千恵
梅雨晴間子等の湧き出る小公園      石原 俊彦
残雪に雛追う雷鳥霧を抱く        櫻本 愚草
昼寝覚普賢乗せたる象の牙        大森 敦夫
みどり得て田の面に映る越の雲      水野 星闇

第5回 俳句研究会 
5月25日(土)立川市子ども未来センター
担当幹事  夏目瑶・秋山ふみ子・稲吉豊・根岸操・関 梓・戸川晟・玉木康博
参加者 39名
★講話・・・髙野公一 「おくのほそ道」のテキストについて

片陰を出で片陰に入る安堵      秋山ふみ子
ポケットの馬券嘶く薄暑かな     髙野 公一
物言はぬ埴輪に夏の来たりけり    三浦 土火
サングラスあなたが遠くなる真昼   山崎せつ子
いがぐりが蛇口に並び髪洗ふ     山口 楓子
塗り立ての登山者ポスト山開き    石橋いろり
寿命など平均するなほうほたる    前田  弘
噺家の箸にも櫓にもなる扇子     河井 時子
父在らば共に酒酌む初鰹       越前 春生
負はれたる兄の背中や子供の日    水野 星闇
たましひの乱舞とおもふ夏の蝶    根岸  操
昔から助六寿司よ祭笛        稲吉  豊
木曽に雨軒を彩る濃紫陽花      尾関 英正
宝石の音や浅蜊を量り売る      永井  潮
御代替り時の踊場蝶の舞ふ      櫻本 愚草
とべるかなでんでんむしのひとりごと 水落 清子
朝風の爽やかにして新生姜      穴原 達治
落し文受けとる人の今はなし     根岸 敏三
サングラス森羅万象やわらかし    飯田 玉記
間が持たぬ夫の親族五十雀      鈴木 浮葉
はや夏日都心のロッカー封鎖され   関   梓
えご散るや陸軍伍長某の墓      亀津ひのとり
糺の森五月の鷹のひそむかな     佐々木克子
初がつお呼び声荒き漁師町      大友 恭子
夏ハーレーダビットソンの爆音    松元 峯子
黒南風や木々大ゆれて空を掃く    夏目  瑶
夏涼し約束の日の河童橋       戸川  晟
冷蔵庫でなくて良かった捜し物    佐藤八重子
浮いて来いロヒンギャの子のテント小屋 夏目 重美
わがことよ高齢運転はぬけどり    野口 佐稔
いつの間に大人の顔に花は葉に    石原 俊彦
源義の遺墨や玉を解く芭蕉      米澤 久子
テーブルにせまりくるごとカサブランカ 西前 千恵
佐賀路行く黄河のごとき麦の秋    白尾 幸子
飼はるるも縁あるものや大金魚    大森 敦夫
鮎鮨や書院造りの座敷席       長澤 義雄
散り花や寄り合い談合田水張る    玉木 康博
煙吐くよう春光しのぐ氷川丸     川島 一夫
滝壺に脈打つ精の蒼白し       淵田 芥門

初夏の吟行会
令和元年5月11日(土)  府中市郷土の森博物館
 風薫る五月。総勢三十二名の参加者を得て吟行会を行いました。当日は好天に恵まれ、新緑の郷土の森には明治・大正・昭和初期などの数棟の文化財もあり、広場や水遊びの池には幼児らがあふれ、そのエネルギー迸る映像に佳句が生まれました。喧噪を抜けると鳥の声渡る寂とした空間に若葉風が。四季折々楽しめる郷土の森は再訪したいと言う声も多く聞かれました。句会場は、博物館内の会議室にて。嘱目二句、五句互選。 (石橋いろり記)

  

 上位入選十五句
赤帽黄帽万緑の句読点       佐々木克子
令和なる今日の一会や森五月    吉村春風子
夏立つや拭き磨かれて箱階段    藤原はる美
青梅を拾うひかりを拾うごと    髙野公一
子どもから先に夏来る声高く    有坂花野
裸婦像の筋肉保つ聖五月      関  梓
青葉風ハケの団子の焦げ具合い   夏目 瑶
麦秋や父の算盤五つ玉       根岸 操
まくなぎを払う役場のパンフレット 新井温子
言葉待つ句帳に走る蟻の黒     稲吉 豊
夏草や丸く石敷く祭祀跡      米澤久子
竹皮を脱ぐや代官平右衛門     夏目重美
青葉風ときをり止まる水車かな   秋山ふみ子
全裸とはいかず若葉の森林浴    三浦土火
水音と水の匂いの竹の秋      山崎せつ子

(蓮見 徳郎)