会長/春日石疼 事務局長/丹羽裕子

会長挨拶

「相互に学びあい、新世代にアピールしよう」福島県現代俳句協会会長 春日石疼

 先の総会で新会長に選任されました春日石疼です。14年にわたり福島県の現代俳句を守ってこられた鈴木正治前会長の後任として、経験も少なく不安も大きいですが、皆さんのご協力の元、さらに飛躍する福島県現代俳句協会としていきたいと思つています。
 その手始めとして、滞っていた「県協会会報」を復活させました。年に二回程度の発行を目指しています。
会報は原稿や配布など、会員の皆さんのご協力なしには続けられません。皆さんで育てていただきますよう宣しくお願い致します。
 会員相互の研鑽と共に、若い世代に俳句を普及させることが私の大きな任務と考えています。福島は東日本大震災と東京電力福島第一原発の爆発・被曝の影響を今なお抱え、これからもその影響を受け続けると思います。愛する風土とそこに住む人間の思いを、私たちは福島発俳句としてもっと発信してよいのではないでしょうか。福島県現代俳句協会員の誇りをもって、皆で力を合わせて楽しく学びましょう。

福島県協会会報 2022年6月6日追加更新

地区ニュース、会員作品7句、県会員作品一句鑑賞、私を変えた一句、私の好きな季語、新刊案内など

福島県現代俳句協会会報 第15号 2023年・夏
福島県現代俳句協会会報 第14号 2023年・春
福島県現代俳句協会会報 第13号 2022年・冬
福島県現代俳句協会会報 第12号 2022年・秋
福島県現代俳句協会会報 第11号 2022年・夏 
第一回通信句会2句選ほか
福島県現代俳句協会会報 第10号 2022年・春

福島県現代俳句協会会報 第9号 2021年・冬
福島県現代俳句協会会報 第8号 2021年・秋

福島県現代俳句協会会報 第7号 2021年・夏
福島県現代俳句協会会報 第6号 2021年・春
福島県現代俳句協会会報 第5号 2020年・冬
福島県現代俳句協会会報 第4号 2020年・秋
福島県現代俳句協会会報 第3号 2020年・夏
福島県現代俳句協会会報 復刊第2号 2020年・春
福島県現代俳句協会会報 復刊第1号PDF 2019年11月発行

第15号(2023年・夏)会報より 2023年5月24日更新

会員作品7句

「まあいいか」春日 石疼(福島・小熊座)
鶏頭の斃れ地霊となりぬべし
秋空や死があそこならまあいいか
死はいづれ観念と化す冬の霧
「週末」と打てば「終末」冬の雷
枯藤の蔓脈々と土の精
目覚めれば十二月八日かもしれず
三島忌のサクマ式ドロップスからからと

「群青」 北川信弘(白河)
三杯目回転寿司のあさり汁
防人に届け強東風子等の声
天を向き群青歌う巣立つ子等
突き出すはまん丸頭蕗の薹
絵手紙の迫りくる色姫椿
雪虫や二の丸跡の空濠に
函館の夜景はてなく啄木忌

「二十五時」片平 桂司(福島)  
春光にひるむ身体に飛ぶ風船
袖口の汚ごれが目立つ更衣
腎臓の一つはスペア残り鴨
鳥招く柿の木の枝に蜜柑刺し
森林浴地球を食らう虫で居る
鳥雲に遺言めいた日記書く
春の夜の二十五時なる爪と鬚
 
「前のめり」草野 志津久(福島・小熊座)
ついと目をそらせる春の別れかな
黄水仙不在と共に生きるとは
帆船のとび出す絵本実朝忌
淋しいから木枯しの果て見に来たの
監督の子らより若し夏の雲
おしろい花孤独は水には溶けぬ
天竺牡丹一人暮しの前のめり

第12号(2022年・秋)会報より 2022年8月23日更新

会員作品7句

「夏の果」海野 良夫(河沼郡)
河童忌のゆくりなく臭ふ朝の水
河童忌の爪剪り揃え虚しかり
河童忌の打ち水あの世この世へと
餓鬼忌とやラッパ飲みして酔ふビール
プール後の爆睡の吾子の卍なり
終戦日ゾンビを真似て子は飽かず
亡き父のステテコ捨てて夏の果

「はつ夏のこども」髙市 宏(郡山・桔槹/小熊座)  
青き踏む満一才の足のうら
母と子の散歩くねくね猫柳
こどもが嘘ついて咲きたる柿の花 
はつ夏のこどもが土管駆け抜ける
よだれ掛けして頬ばれるさくらんぼ
ママの手より魔法のやうなしゃぼん玉
父の日の父の足裏踏む子ども

「鎮魂」柴田郁子(いわき市・岳)  
気嵐の立ちて鎮魂勿来沖
雪紐にはぐれ雀がただ一羽
桃花水大山祇神も笑まひをり
海光る勿来関の初桜
滝桜千年の蕊降らしけり
六月や戦下万物欷歔満つる
狼の眼みつめる夢幻荒野

「余寒空」春日石疼(福島・小熊座)  
ある日静かに爆煙あがる蒸鰈
春北風の一撃狐目の男
鶴引きにけり荒涼の戦地へと
武器!武器!と叫び雪間に斃れたり
土壙掘り埋める兵士百千鳥
瓦礫また殖やす地球よ余寒空
青き空黄の麦秋の国のこと

「真砂女の忌」久保羯鼓(福島・小熊座/藍生)
世を遠く生きたる思ひ土筆摘む
春暁の靴音高く生きてゐる
生者死者落花の中を通り過ぐ
熱帯夜抱擁解かぬ道祖神
黒沼へ梅雨を引きずるごと暗し
万緑のほてり鎮むる豪雨かな
海のもの天麩羅にする真砂女の忌

「ぐるぐる」阿部ゑみ子(福島・小熊座)
蝶の香と思う茅の輪をくぐるとき
蝶の道たどりて茅の輪抜けられず
心臓の形の曲輪揚雲雀
かっこうや岩(く)座(ら)には小さき洞一つ
信じたき方へぐるぐる金魚たち
指先を昼の蛍の一巡り
安達太良山は定点我の春蝉の

福島県現代俳句協会第一回通信句会 2022年4月

三十四人の皆さんが投句
久々の通信句会でしたが、多くの会員が投句してくださいました。投句されなかった会員にも選句をしていただき、草野志津久さんの句が10点句で一位、池田義弘さん・宗像眞知子さん・久保鞨鼓さんが6点句で続きました。
(句は選句番号順)
寒明くる父の遺影に見守られ    江井芳朗
裸木に感情線の息づかひ      平子玲子
残された祈りの一手春寒し     櫻井潤一
かなしみの器(うつわ)となれり春満月  池田義弘
人住めず陽炎となる双葉町     大河原真青
凍蝶や風評は小雨のように     清水茉紀
雪の呼吸土の呼吸と折合う日    五十嵐進
どの道も誰かの家路春の星     草野志津久
桜吹雪来世も人に生れるか     柴田郁子
桃の節句いのちひとつを眠りをり  佐川盟子
墓守のライオン咆哮木の根明く   鈴木正治
瞑想(めいそう)と睡(ねむ)りのあはひ蟇(ひきがへる) 鈴木満喜子
裸の王鳥の巣を踏みにじりけり   永瀬十悟 
辛夷咲く湯灌(ゆかん)の父の髭を剃る  服部きみ子
囃子なく戦の知らせ雛祭り     丹羽裕子
初詣裏参道も浄らかに       渡部 健
メガソーラーの真ん中に墓地鳥帰る 宗像眞知子
啓蟄や地上は疫病(コロナ)蔓延中    宇川啓子
明日来る原発がヒト危むとき    植木國夫
ミラノコレクション佐保姫の裾長し 湯田一秋
乳飲み児の流し目に会ふ春うらら  唯木イツ子
校歌抜く卒業式や粛々と      鵜川伸二
鳥の影曳いて机上のかぎろへり   春日石疼
雪の日が子は好き先生やさしいと  海野良夫
どの枝にも漲る朝春隣       鈴木亜由美
切干の皺皺の溝母が在る      カズオ
眼裏に飼う蝶と毒今朝は蝶     八島ジュン
世を遠く生きたる思ひ土筆摘む   久保羯鼓
春泥を匍匐 肩甲骨と銃      高市 宏
啓蟄や八十路の夢を沸々と     石澤 遥
浸す手を死の断片の触るや花    斎藤秀雄
三・一一ニュース数多の風化かな  浅田正文
湯豆腐のいさぎよさ老いのたのしさ 佐藤保子
後ろへと漕いでボートもふらここも 阿部ゑみ子

第11号(2022年・夏)会報より 2022年4月27日更新

会員作品7句

「小鳥来る」 植木國夫(福島・小熊座)
除染袋の番号巨き流れ星
廃炉へと戦士となりて櫨紅葉
鉄柵が囲む赤宇木小鳥来る
冬眠のくちなは眠れぬ夜もあろか
狐火や髑髏のひそと語りだす
童子童女の墓盛りあぐる霜柱
靴紐の縦結びして鬼房忌

「月光」 清水茉紀(福島・海原)
点滴に花の吐息も混ざってる
弔いやおぼろのような嬰の耳
落暉首までつまってる夏の蘭
「天国の青空」とふ朝顔母が這う
赤い月新書のような君が逝く
冬の香水足裏立たす屍室
月光の原発貨物列車がよぎる

涅槃西風」 池田義弘(福島・暖響、街)
おめおめと生き永らへて利休の忌
駄句駄句を丸投げにして月夜のポスト
返らざる刻や冬菜の茹であがる
生れたての春月コロナ禍を生きる
雪解雫至福の句集読みてをり
地球の裏に殺戮の民涅槃西風
草履穿いて駆けたき春野逝かれかし

「避難生活」 浅田正文(金沢・秋)
何気なく昨日のつづき大旦
初夢も無きし未明の目覚めかな 
おとといもきのうもきょうも雪を掻く
金沢の佐保姫未だ眠りおり
雪掻きや肩幅のみの小径つけ
復興のニュースばかりや三・一一
雪解けて無垢から戻る汚れかな

第10号(2022年・春)会報より 2022年2月25日追加更新

会員作品7句

「雪がまた」 大河原真青(郡山・小熊座、桔槹)
腐木踏み明日へ分け入る冬の鹿
月球に未踏山脈大根干す
東北は鬼門と呼ばれ海鼠噛む
冬苺まつろはぬ民鬼と化す
朽野ねむらせイマジンを口遊む
ダイヤモンドダスト聖母に翼あり
産土の穢土隠さんと雪がまた

「心の芯」 渡部 健(千葉県・暖響、藍生)
愁思とてフクシマは吾が心の芯
サクランボの中にフクシマの友便り
フクシマへ切なく鳴けり蟬時雨
緑陰に母乳あかごのふくよかさ
日焼けせる腕こくこくと血圧計
白髪となりし弟梨を剥く
葭切の明日は明日はと今日を鳴く

「むさかりの絵馬」 鈴木正治(福島・暖響、鈴の会)
むさかりの絵馬の剥落鳥雲に
雲食べて亀は思考の咽伸べ
津波の碑沖夕焼けは泣けとごと
滝壺に溺れし蝶と十年過ぐ
生や死や音楽バスが花野行く
すさまじや死者に抜身の鉈を置く
冬オリオン歩数占いポストまで

「秋一列らんぱん」 平子玲子(いわき・ロマネコンティ俳句ソシエテ)
線量を測りて捨てる稲を刈り
支持政党なしに印せる秋灯下
花八ツ手一列らんぱん破裂して
秋雷の美しすぎる自爆かな
晴れ渡る白鳥の空大ビュッフェ
ジャックアンドベティと声に開戦日
玉手箱開けるのに佳き冬日和

「種火」 服部きみ子(福島)
散りて後骨片となるチューリップ
直向きに生きた昭和や冷奴
象の目のやさしさに在る敗戦忌
特老の待機百人鰯雲
ピノキオの鼻のふくらむ日向ぼこ
狐火に種火を貰ふひとり住み
生命線延ぶる二人の根深汁

「朧」 八島ジュン(福島・小熊座)
九階へボタン桜の枝で押す
どこまでが此岸であるか夕桜
クローバー少女の日々がうずくまる
スカートの似合わぬ姉や柿の花
腑の奥までも春大あくび
おぼろ夜の象の軽さを量りけり
春の暮昭和映画の未来都市

2021年度NEWS 詳細は県会報PDFをご覧下さい。

◇10月24日、県現俳主催・第2回吟行句会「須賀川に芭蕉の足跡を追う」を開催しました。
〈主な当日の句〉
杉の実や出水ありたる滝の辺に 高市 宏
秋日傘まわせば遠くなる男   草野志津久
犬塚の犬の目のなき秋土用   大河原真青
石仏の皺のあらはに冬支度   鈴木亜由美
秋深し死に行く蠅は金色に   丹波裕子
ウルトラの父秋光を束ねをり  植木國夫
白鷺の佇ちて定まる滝の秋   永瀬十悟
龍淵に潜む乙字の左方かな   藤巻 淳
乙字ヶ滝の乙どのあたり秋麗  佐川盟子
風流のはじめに拾う軒の栗   石澤 遙
新松子地球の罅は滝となり   宗像眞知子
墓碑銘は自死と記さず冬隣   春日石疼

◇第74回福島県文学賞俳句部門・正賞に草野志津久さん『月の暈』・奨励賞に八島ジュンさんが選ばれました。おめでとうございます。

◇4月18日、令和3年度県現俳総会開催しました。

◇新役員
顧問   鈴木正治
会長   春日石疼
副会長  江井芳朗 池田義弘
     大河原真青(新)
会計   植木國夫(新)
事務局長 宇川啓子
同 次長 阿部ゑみ子 高市 宏(新)
監事   木幡テイ 丹波裕子(新)
地区代表 久保羯鼓(県北)石澤遙(県中)加藤征子(県南)
     平子玲子(浜通)田中雅秀(会津)

【過年度の行事など】

◇令和元年度福島県現代俳句協会総会開催

5月26日福島市民会館にて令和元年度総会が開催されました。昨年2月の大会以来1年ぶりの総会開催で、前事務局長の健康上の理由による辞任とその後の協会本部との相談の経過が報告されました。平成二十年度会議決算と令租元年度会計予算、令和元年度事業計画が提案され、事業計画については新体制での執行となるため「参考案」
とし、全ての案件が承認されました。
顧間に鈴木正治前会長が就任し、新役員体制が以下のように承認されました。
会長   春日 石疼(新)
副会長  江井 芳朗(新) 池田 義弘(新)
事務局長 宇川 啓子(新)
同 次長 佐藤 弘子(新)
会計   大河原政夫(新)
監事   鈴木満喜子(再) 木幡 テイ(新)

◇秋田市で現代俳句東北大会開催
 〜いわきの長岡由さんが最高賞〜
 第二十二国現代俳句東北大会が9月28日、秋田市で行われました。福島県からは春日石疼会長、宇川啓子事務局長が参加しました。
 講演は現代俳句協会副会長の高野ムツオ氏。『兜太―晩年の俳句』と題して、金子兜太の遺句集『百年』中の句を挙げながら、兜太の世界観を語りました。兜太を支えるものは戦争体験であり、風土への思いであり、戦争体験は過去の事ではなく、現在の生き方とリンクしていること、さらに未来への視点を持っていると話されました。また狼・鮫・柿など意外に兜太の題材は限られているが、あるがままの姿で存在しているように詠まれていると話され、聴衆は大きな感銘を受けました。
 いわきの長岡由さんが「骨といふあたたかき父拾ひけり」が最高賞の現代俳句協会賞を受賞しました。長岡さんは「骨になりても母は怪しぞ雪降らす」で、講師の高野ムツオ氏の特選にも選ばれ、ダブル受賞でした。県内作家の作品では唯本イツ子さんの「水鏡にうつっているのは春愁」が講師入選句、当日吟で春日石疼さんの「秋田まで電波届かず紅葉渓」が講師並選句に選ばれました。
 次回開催は令和二年九月に青森を会場に行われます。次年度開催の抱負を「オリンピツクに負けない大会にしよう」と語られた青森県協会長の泉風信子さんが秋田大会翌日に急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。

◇祝!現代俳句協会賞 永瀬十悟さん
 「『三日月湖』を読んで  植本国夫」
 第一句集『橋朧』から五年半、『三日月湖』は、子供たちの生きる未来へ俳句を通して伝えたいとの作者の熱い思いで編まれている。
 氏は、東日本大震災から僅か二か月余で作った「ふくしま」五十句でみごと角川俳句賞を受賞。
「どういう力の持ち主か見てみたい」(長谷川櫂)、「この作品を皆さんに見せたい」(正木ゆう子)とその選者に言わせたほどだ。
  逢ひに行く全村避難の地の桜
  廃屋となりたる牛舎燕来る
  桜満開どこかでだれか泣いてゐる
  村ひとつひもろぎとなり黙の春
  目かくしのままの雛よ標葉郷
  除染袋すみれまでもうニメートル
  塞がれしポストの目や去年今年
  コスモスや片付けられし墓百基