内田 啓『雲の五月』(自筆サイン入)現代俳句の100冊[76]

汽笛まだ筑紫の中に残りいて すみれ愛す臍下丹田まで降りて 草餅や雲になるため汽車に乗り 反目の白い蛾となり夜つくる ありありと日蔭の月日石蕗の花 炎天の声とならねば鎖鳴る いたむ傷もてば菖蒲の葉に力 蛞蝓やひとの世の底あ […]

句集『ユリウス』佐々木貴子

  著者の葛藤と否定精神  肯定精神が目まぐるしく錯綜し  作者の最も秀れた映像感覚は  この句集全句に共通している  ──中村和弘(序文より) バラ咲いてひどく自由な昼下り 夏の都へ拝啓冬の国より恋 紫陽花の […]

和田悟朗『諸葛菜』[13]

秋の日の仁王は高き幼児なり 手も足も昔なりけり諸葛菜 椀中に豆腐崩れる冬景色 螢光るとき眼前の石やわらか いなずまのとどく土上に葱直立 雪の馬立ちつくし完き記憶の鰤 青天を黙読する貨物置かれ 砂漠に妻匂う一直線に真黒に […]

『寺田京子全句集』

寺田京子は、圧倒的な言葉の強さを持つ作家である。 同時代にこのような言葉の質を持つ女性作家は稀有だろう。林 桂(「栞」より) 解題/江中真弓 後記/宇多喜代子 栞/林 桂 【宇多喜代子 選 十句】 旱の夜おんなじ貌の鰈焼 […]

岡田由季『犬の眉』

第67回角川俳句賞受賞 岡田由季 第一句集『犬の眉』 もし俳句をつくっていなかったら、 当然に見過ごしてしまっていたに違いないような 事柄・瞬間・感触・感動などのひとつひとつが、 岡田由季という俳句作家の眼を通して、 俳 […]

堀田季何『星貌』

堀田季何第三詩歌集 楽園帰還雪に言語を置き捨てて 「ラリる?」「ろれるりら、ラリる!」 《第二詩歌集『亞剌比亞』日本語原句全九九句 附録掲載》 やはらかくまるく妊る砂漠かな 置き捨てられた《言語》とは何か 多言語多形式で […]

堀田季何『人類の午後』

堀田季何第四詩歌集 リアリティとは、 「ナチは私たち自身のやうに人閒である」 といふことだ。(ハンナ・アーレント)    一九三八年一一月九日深夜   水 晶 の 夜 映 寫 機 は 碎 け た か に始まる352 句を […]

小川双々子『異韻稿』現代俳句の100冊[29]

人類の歩むさみしさつちふるを 月蝕のあたま翳りて男立つ 鷹の天かの防人は射られたる 農夫口あけて花火の傘下にゐる 葱すべて折れたり何を全うせし 石もて打て穴惑ひ水渡れるを 稲刈りに風がとろりとやってきて たとへば梅咲く黙 […]

幡谷東吾『即離集』現代俳句の100冊[18]

縣境の一水を経て風青し ピノキオがひとり起き出す砂日傘 ひとごゑの霧にむすばれむとするいたはり 白菊の白の黄菊の黄の寂寞 鈴懸の鈴のこんなに青い土曜日 新聞紙(かみ)の香のぬくきをさしぬ固き戸に 転轍手英霊(たま)かへる […]