2013年12月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 蟬の羽開かず柩車行方知れぬ 小泉八重子 評者: 吉田成子 小泉八重子という名前を頭に刻みこんだのは、氏の第一句集『水煙』が出版された頃、およそ40年前である。先輩がこの句集の作品を絶賛して、是非読むようにと貸してくれたのである。当時私はまだ初学の段階で、しかも所属していたのは […]
2013年12月11日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 兎の仔みんな黒くて夕涼み 飯島晴子 評者: 吉田成子 兎の毛は褐色、灰色、白、黒などいろいろあるらしく夏毛は褐色で冬には白くなる種もあるという。しかし神話の「因幡の白兎」は勿論、イギリス童話の少女アリスを不思議の国へ誘ってくれるのも白兎である。そんなこともあって兎といえば […]
2013年12月1日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 地震あとの春待つ顔を上げにけり 桂 信子 評者: 吉田成子 「阪神淡路大震災」後まもない頃の作品である。この地震は当時大阪北部の箕面に住んでいた桂信子に少なからず被害をもたらした。揺れが治まってすぐに安否を尋ねる電話をしたところ「大丈夫です」と意外なほど落着いた返事が返ってきた […]
2013年11月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 流れ行く大根の葉の早さかな 高濱虚子 評者: 國定義明 国語の教員だったせいか、俳句大会の選句の前の校正の役を毎年のように依頼される。最近揉めたものの一つに「扇風機(器)」がある。電気機器には一般的に「機」と付すが、小中学生の部で「私にはふり向かないね扇風器(●)」を入選に […]
2013年11月11日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 夜が淋しくて誰かが笑いはじめた 住宅顕信 評者: 國定義明 白血病のため27年前、1986年25歳で夭折した岡山市生まれの俳人顕信が広く世に知られようとしている。香山リカ精神科医による中央公論新社からの三冊、一周忌刊の彌生書房からの顕信句集『未完成』に始まる。2002年フランス […]
2013年11月1日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼 評者: 國定義明 2010年10月、国民文化祭(俳句)が岡山県津山市で開催されたとき、案内を受けて三鬼生家を訪れた。西東三鬼生誕の地の石柱の横に「枯蓮のうごく時来てみなうごく」の句碑がでんと置かれてある。場所は吉井川堤の地続きの南新座に […]
2013年10月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 鉄骨を空へ足すかなしみも汚れ 林田紀音夫 評者: 恩田侑布子 むかし庶民は、民草とも青人草ともいわれていた。水流のほとりで、草や木とともにみどりの集落をつくった。木は亭々と空にそびえるが、草は風になびき、地べたと親しい。人もまた水を引いて稲と苦楽をともにした。木陰に憩うことはあっ […]
2013年10月11日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム いつもかすかな鳥のかたちをして氷る 対馬康子 評者: 恩田侑布子 富士の裾野にはあまたの溶岩洞窟がある。そのうちの、ひとけのない一つに入る。天井からしたたる雫が、岩棚の上に一滴ずつ結氷し、洞穴に吹き込む風の向きによって、ふしぎな形をなしている。昼なお暗い洞窟を照らすヘッドランプに、か […]
2013年10月1日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 百年は死者にみじかし柿の花 藺草慶子 評者: 恩田侑布子 てらてらと光が庭先にこぼれる。田舎にはあちこちに柿の木がある。あらゆる新緑の中で、もっとも記憶に深く身近な木。葉をさっと天ぷらにすると、ぱりっとした歯ざわりに、ほわっとした甘さがにじむ。花は秋には実になる。柿をもいでし […]
2013年9月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム むらさきに犀は烟りて大暑なり 中村和弘 評者: 柳生正名 第3句集「東海」より。2010年の作を集めた「気流」の章に収められている。 同集には 馬の背に朝鮮半島灼けており 舟虫の熱もつ岩を祀りおり など、盛夏それも炎天下で詠まれたとおぼしきものに特に印象的な作が […]