2017年7月15日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 父の死や布團の下にはした銭 細谷源二 評者: 森野 稔 昭和16年に理不尽な新興俳句弾圧事件に巻き込まれた作者は、2年6ヶ月あまりの拘留生活を経て18年6月に東京拘置所を出ても世間の目は冷たく生活は困窮を極めた。「このままでは餓死するだけだから」との妻の助言を得て焼け野原の […]
2017年6月23日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 爆音や乾きて剛(つよ)き麦の禾(のぎ) 中島斌雄 評者: 秋尾 敏 明らかに「爆音」と「麦の禾」は対比的に描かれている。空をつんざく戦闘機(であろう)の爆音に対抗するように、剛直に育った麦の禾の景が広がっている。 作者がこの「麦の禾」を「抵抗する民衆の意志」などと自注してしまったため […]
2017年6月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 流木の焚火のなかに国生まる 大畑 等 評者: 秋尾 敏 この国の祖先は、おそらくは皆、どこからか流れ着いたのである。土着の〈国つ神〉でさえ、流浪の過去を持っていたに違いない。むろん、その「国」と呼びうる共同体が形成される以前の話である。 浜に流れ着いた人々は身を寄せ合い、 […]
2017年5月19日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 人が通る野分がとおる山頭火 松本勇二 評者: 森須 蘭 最近では、気候変動著しく、今年の台風第1号は、5月の初旬に、もう発生したという。日本には影響しなかったが「野分」の季語も秋ではなくなりつつあることを実感する昨今。 さて、ここに詠まれている種田山頭火は、10代の頃から […]
2017年5月8日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 夏みかん酸つぱしいまさら純潔など 鈴木しづ子 評者: 森須 蘭 伝説の鈴木しづ子が生誕して、約百年になる。残っているものは、美しい写真姿とその俳句だけ。昭和27年9月15日付の俳句が、その消息の最後である。大正8年生れ、『春雷』『指輪』と20代のうちに二冊の句集を出し、姿を消した。 […]
2017年4月17日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム ゆきかうロボットもまた旅人なり 川名つぎお 評者: 森須 蘭 ロボットを一句の中に詠み込むのも珍しいし,詠み込む方もかなり革新的な心構えがなければならないことだろう。それもそのロボットもまた「旅人」であると、芭蕉の精神を継いでいる。このロボットが人の心を持つ所以である。 もとも […]
2017年4月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 三日月に浅瀬はくだらないところ 佐藤文香 評者: 竹岡一郎 「くだらないところ」と言い切るところに妙に感動し、涙するのはなぜなのか。夜空は晴れていて、三日月が掛かっている。浅瀬は優しい音を立てている。多分、作者以外に人はいない。これが満月でも半月でも新月でも、三日月よりは重い。( […]
2017年3月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 知らない町の吹雪のなかは知っている 佐藤文香 評者: 竹岡一郎 知らない町はわくわくするものだが、それが吹雪の真っ只中となるとまた話は別で、取り敢えず安宿でも良いから何処かに落ち着きたい。大袈裟に言うなら、知らない町で吹雪に巻き込まれると、街角で遭難という可能性も無きにしも非ず。そ […]
2017年3月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 国破れて三階で見る大花火 佐藤文香 評者: 竹岡一郎 「破れて」は「やれて」と読むのだろう。三階は二階より一寸高い。木造家屋だと普通は二階止まりだろうから、日常ではないところから見ているような、わくわく感がある。いろんなところが綻び破れてゆくこの時代に、日常から少し高い視 […]
2017年2月15日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 凍裂の谺なりけり夜の躰 田中亜美 評者: 中内亮玄 シングルベッドをひとつ置けば部屋の半分も埋まろうかという、学生用の小さなワンルームに住んでいた俺は、寒い夜、真っ暗な部屋でベッドに身を横たえて、カッカと火照る掌を握ったり閉じたりしていた。 身長171センチ、体重は昼 […]