2016年7月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム おほまかに父は描かれ九月果つ 嵯峨根鈴子 評者: こしのゆみこ 嵯峨根鈴子さんの第三句集「ラストシーン」所収。この句の父親像がいろいろに読めてしまってとまどう。一般的な読みとして、幼い子どもがお父さんの顔を「おおまかに」眉や目や口を描いたということだろうか。ひょっとしたら顔の○だけ […]
2016年7月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 黄金週間畢(おは)る高嶺に一墜死 馬場駿吉 評者: 木村聡雄 今や、夏休み/年末年始と並ぶ我が国の一大イベントであるゴールデンウィーク(GW)は、他の二つの歴史的バカンスにはない爽やかな気候も加わって、我々にGWには「何を為すべきか」(否、無を為すべき…等々)という大いなる悩みを […]
2016年6月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 土を出て直ぐ松風へ蟻のぼる 秋元不死男 評者: 木村聡雄 句集『瘤』(昭和二十五年)より。休むことを知らない蟻の様子を写した句だが、ここに描かれた「蟻」は巣を出るや、食糧を探すためか反射的に高いところへのぼってゆく。まもなく天辺に達するころには、餌探しはもう旅の目的ではなくな […]
2016年6月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム わが孤絶の 無燈の軍艦(ふね)は脱出せり 富澤赤黄男 評者: 木村聡雄 『黙示』(昭和三六年)の一句。この第三句集を纏めた翌年、六〇歳で他界した。本句集には 満月光 液体は呼吸する 草二本だけ生えてゐる 時閒 など、俳句における抽象性を表現した優れた作品が多く収められているが、掲出の作品はキ […]
2016年5月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 春風や川浪高く道をひたし 內田百閒 評者: 花房八重子 桜吹雪につつまれた旭川の土堤沿い、内田百閒記念碑園に石碑のような文学碑が建つ。川向こうに後楽園があり、岡山城も見える。 この土堤には、約300本の桜があり桜並木が続き、満開の頃は車が渋滞する。花吹雪の中で一瞬、異次元 […]
2016年5月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 蟬たちのこなごなといふ終はり方 澤田和弥 評者: 対馬康子 澤田和弥は、昭和五五年浜松市生まれ。早稲田大学俳句研究会などを経て、平成二五年には「天為」新人賞を受賞し、第一句集『革命前夜』を上梓した。 風に吹かれる落蟬を、都会の路上やベランダなどでよく見かける。まだ力が残ってい […]
2016年4月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム またの世は青磁双魚として逢はむ 恩田侑布子 評者: 対馬康子 「俳句はあらゆる境に開かれているはずです。俳句は現実との格闘と、想像力の往復運動をエネルギーとして、三界の馬塞なき荒野を駆ける一馬でありたい」(『余白の祭』)と願う恩田侑布子という俳人は、異才と呼ぶにふさわしい数少ない […]
2016年4月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 鯉裂いて取りだす遠い茜雲 中島斌雄 評者: 対馬康子 中島斌雄は戦後間もない昭和二一年「麦」を創刊。社会性俳句や時代思潮へ積極的に論作を展開し、若い世代を牽引した。同時に現代俳句協会創立に参画し、後に現代俳句協会副会長に就いた。「雲秋意琴を売らんと横抱きに」「雪沁むや戦火 […]
2016年3月21日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 閑さや岩にしみ入蟬の声 芭蕉 評者: 髙野公一 『曾良旅日記』と呼ばれるものには、日記本文の他に「俳諧書留」が含まれている。旅の俳席での歌仙はもとより、芭蕉の単独の発句も書き留められている。市振の章段で「曾良にかたれば、書きとどめ侍る」との一行からも伺えるように、恐 […]
2016年3月11日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 五月雨の降のこしてや光堂 芭蕉 評者: 髙野公一 「三代の栄耀一睡の中にして、大門の跡は一里こなたに有。」に始まる『おくのほそ道』平泉の章の最後に置かれた一句である。それはこの章段を完結させるばかりでなく、『おくのほそ道』という文学空間の最初の大きな句読点にもなってい […]