蟬たちのこなごなといふ終はり方 澤田和弥 評者: 対馬康子

 澤田和弥は、昭和五五年浜松市生まれ。早稲田大学俳句研究会などを経て、平成二五年には「天為」新人賞を受賞し、第一句集『革命前夜』を上梓した。
 風に吹かれる落蟬を、都会の路上やベランダなどでよく見かける。まだ力が残っているのか時折バタバタしたりする。仰向けになった蟬のなきがらは、水分のない木の葉のようである。時間が経てば、人に踏まれ、あるいは箒で掃かれ、こなごなになるのかも知れない。「蟬が一匹こなごなになって死んでいる」という客観ではなく、どの蟬も自らの意思で行方を処しているかのような、言い換えれば作者の内面のカオスが蟬に投影され、独自に映像化されている。
  卒業や壁は画鋲の跡ばかり
  風船を割る次を割る次を割る
  海色のインクで記す修司の忌
 卒業の日、不要な予定表やポスターなど外し部屋を一新する。だが壁に画鋲の穴がいくつも残っている。青春の苦々しさ、透明さ。
 写生俳句の真髄は、目の前にある事実の提示から詩的因果関係を瞬時に見つけだせるようになることにあるだろう。そして、詩としての「諧謔と哀愁」は、万物のいのちを知るところに描かれる。
 彼は超結社の仲間も多く、季刊誌「のいず」を立ち上げ、これから大いなる活躍が期待されていた。その矢先、心酔していた寺山修司の忌に合わすように、平成二七年五月に突然訃報が届いた。
 澤田和弥という俳人が三十代の若さで逝ってしまったことは、俳壇の未来にとって残念でならない。俳句という短詩型の地平を共に目指す覚悟が彼にはあったはずなのである。

出典:『革命前夜』

評者: 対馬康子
平成28年5月1日