2006年12月5日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム マラソンのおくれた首を消さずに振る 林田紀音夫 評者: 寺井谷子 ’06年の喜びの一つに、「林田紀音夫全句集」刊行がある。待ちかね、遂には海程社の「戦後俳句作家シリーズ」の薄い一冊を(このシリーズは賞賛に値する)宝と抱くのみか、と思っていたところへの刊行であった。宇多喜代 […]
2006年11月2日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 落日の獣身を寄せ嘆き合う 三谷 昭 評者: 寺井谷子 新興俳句事件を身を以って体験し、「暗鬱の抒情」と評される初代協会会長三谷昭。冬の気配を感じるようになると、いつも〈暗がりに檸檬泛ぶは死後の景〉と共に胸中に吟ずる。 〈昭和22年の作。戦後の飢餓状態に置かれた民衆の、弱い […]
2006年10月16日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 父の日をお前は誰と哀します 永井一朗 評者: 寺井谷子 九月に開催された第20回「村上鬼城顕彰全国俳句大会」で、私が特選に採った一句である。群馬県、高崎市を挙げて支援している大会で、実行委員長を吉田未灰氏が務めておられる。同時に既発表作品30句を対象とした「村上鬼城賞」も発 […]
2006年8月31日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 秋風のまん中に山羊つながれる 富田敏子 評者: 田中不鳴 句集『ものくろうむ』に収録の句。帯の吉行和子抄出10句、跋の小宅容義鑑賞22句の中にこの句はない。従って私の鑑賞眼が有名俳人と違って、まともでないのかも知れないが、この句私の眼を捕えて離さない。言葉に寄り掛からず、機知 […]
2006年8月3日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 広島や卵食ふ時口ひらく 西東三鬼 評者: 田中不鳴 三鬼が被爆後の広島を訪れたのは、所用で江田島へ行った帰りの昭和21年の夏。その頃構想を得たか、作られたと思われる。三鬼の自句自解では「未だに嗚咽する夜の街。旅人の口は固く結ばれてゐた。うでてつるつるした卵を食ふ時だけ、 […]
2006年7月10日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 歩き続けて蛞蝓と並びけり 桑原三郎 評者: 田中不鳴 休まずにずっと歩き続けて来たのだが、この世で一番歩みが遅いと思っていた蛞蝓に、追付き並んでいただけだった。句意はそうだが実際に足で歩いて来たことでは勿論ない。蛞蝓を偶然見たときに、その遅さと自分の来し方が、脳裏で響き合 […]
2006年6月1日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 悪友や遠くで鳴らすラムネの玉 見學 玄 評者: 田中不鳴 友にも色々あるが親友と悪友が一番身近ではあるまいか。なかでも悪友は最も心にかかる存在だ。辞書では、親友‥仲がいい友人、うちとけてつき合っている友だち。悪友‥交際して身のためにならない友人、悪い友だち‥‥となっている。悪 […]
2006年4月27日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 分け入っても分け入っても青い山 種田山頭火 評者: 田中不鳴 自由律の句。没後の昭和46年に山頭火著作集が編まれ、俳人に加え一般の人の間にも、一寸した山頭火ブームが巻き起こった。その中の注目句。滴るような夏の山、緑を分けて行く実感。自然謳歌が共鳴されたのかも知れない。でもこの句怖さ […]
2006年4月3日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 蝶湧いて磐城平の馬鹿天気 田中不鳴 評者: 田中不鳴 厚かましくも自句である。説明を要さない程平明。昭和55年作で、誰も疑問を呈さなかったが、作者の私だけが磐城平の呼称に疑問を持っている。磐城は福島県のいわき市から白河あたりを指す。平は山間の平地だから、地図にある磐城平は […]
2006年3月6日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 夏痩始まる夜は「お母さん」売切です 加藤知世子 評者: 鈴木石夫 作者は加藤楸邨夫人。明治42年生れ。夫の楸邨は大柄であったが、この人は女性としてもやや小型であった。その小柄が、人並以上に家事を処理し、子育てをこなし、なおかつ数々の文学的業績を残している。世のすべての母親がそうである […]