マラソンのおくれた首を消さずに振る 林田紀音夫 評者: 寺井谷子

 ’06年の喜びの一つに、「林田紀音夫全句集」刊行がある。待ちかね、遂には海程社の「戦後俳句作家シリーズ」の薄い一冊を(このシリーズは賞賛に値する)宝と抱くのみか、と思っていたところへの刊行であった。宇多喜代子の支えを受けての福田基の偉業である。
 ペシミズムといわれる紀音夫の無季作品。それは掲句の「消さずに」にも色濃い。一人「無季俳句」の道を走りつづけた紀音夫の姿を、この一句に重ねて胸を痛くする。
 
評者: 寺井谷子
平成18年12月5日