落日の獣身を寄せ嘆き合う 三谷 昭 評者: 寺井谷子

 新興俳句事件を身を以って体験し、「暗鬱の抒情」と評される初代協会会長三谷昭。冬の気配を感じるようになると、いつも〈暗がりに檸檬泛ぶは死後の景〉と共に胸中に吟ずる。
〈昭和22年の作。戦後の飢餓状態に置かれた民衆の、弱い者同士が身を寄せ合って生きていく日々の暗さ。それを具象化するために、もの言わぬ獣の姿を借りた〉との自解が残されている。
 
評者: 寺井谷子
平成18年11月2日