2011年8月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム まだぬくいぬうよ漁火がきれい 宮崎雅子 評者: 野田哲夫 宮崎雅子句文集『ぬう』掲載の句。序文は、竹本健司氏。 <ぬう>は猫の名。初代黒猫<馬次郎>以来、彼女の前を、尻尾を挙げ、斜めに通り過ぎて行った沢山の猫たちの総称でもある。 羽なかばひらいてきたる掠奪者 […]
2011年8月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 萱さむし日本国立療養所 田原千暉 評者: 河野輝暉 物足りないくらいシンプルな構造の句。リズムの良さとで覚え易い。一句中、12音節を一つの施設名で独占させていて、恰も金魚鉢を鯨が独占した様だ。作者には、挺身しての平和運動の旗手として、俳句が人口に膾炙されているが、掲句は […]
2011年7月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 長寿の母うんこのようにわれを産みぬ 金子兜太 評者: 河野輝暉 漱石の俳句に確か、海鼠のように産まれる、というのがあり、その時も驚いたが、掲句には唖然として、無季に気付いたのは暫くしてからだった。「トイレの神様」というこれまた珍奇な歌が若者に受け、昨年のNHK「紅白歌合戦」に初登場 […]
2011年7月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 五月雨や死んでいくにも歯をなおす 貞永まこと 評者: 河野輝暉 死を扱っているのに、こんな靜謐な俳句の表情でいいのかと戸惑う。和辻哲郎の、日本の国民性について語った「しめやかな激情。戦闘的な恬淡」という相反する二重性をこの句に合理化すれば解決がつくのだろうか。瓢水の「浜までは海女も […]
2011年7月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム ぬくめ雑煮や生駒山や山や山や 稲葉 直 評者: 金子 徹 この何とも破調で、くどくどしく思われる<山>の繰り返し。作者稲葉直とは、面識もないが、私の先師岡崎水都との、誌上における書簡往復を読んで惹かれた。 まず、水都は創刊間もない「羚」2号でこの句を、<好きな句だ。“破格豪 […]
2011年6月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 女の靴が離れて脱いである さくら 田中 陽 評者: 金子 徹 桜の下での花見の宴席。敷物の縁にぐるっと並べてある履物、ちょっと間隔をあけて女の履物がある。ほとんどが男で賑やかに騒いでいる中に、遠慮がちに参加している女の姿が垣間見られる。この句の結句、一字空けての<さくら>の配置がみ […]
2011年6月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 転倒のしばらくはこんな静かな地平 岡崎水都 評者: 金子 徹 野を歩いているうちに転んでしまった。仰向けになって、しばらく草の上でじっとしたまま、別世界のように静かな地平の平穏を味わっている。転ぶ前の慌ただしい生活が嘘のようで、転んでみて初めて得た実感である。単なる報告詠ではない […]
2011年6月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 日に一度日当る柱黄落す 柿本多映 評者: 杉野一博 大きな空間を支える柱。その支えている空間は、真暗ではないがかなり暗い。例えば寺院や仏閣などの太い柱が浮かぶ。 そこに日に一度は日光が差しこむ。そしてそれは毎日繰り返される。 向日性の近代建築の空間ではなく 歴史の重 […]
2011年5月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 産衣より孵る少年麦ぼこり 岩尾美義 評者: 杉野一博 少年の誕生。その瞬間への現実の時間的経過や空間の連動はいきなりはずされている。 現実の枠組などは一切関知しない意識が、生命感の溢れるイメージに仕上げられた。 そして<孵る>の文字の使用。みずから殻を割っ […]
2011年5月11日 / 最終更新日 : 2019年2月5日 gendaihaiku 現代俳句コラム 階段が無くて海鼠の日暮かな 橋 閒石 評者: 杉野一博 階段は上下への通路である。それが無い。 また、階段の上は普通明るいが、その下はどんな階段でも暗い。その暗さが無い。 移動する方法のない明るさ。そこに海鼠が曝されたのである。 海鼠は、浅い海から深海まで、所によって […]