2013年7月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム ばくだんもはなびもつくるにんげんは 前田霧人 評者: 松下カロ 2013年4月15日午後。ボストンマラソンの華やかなゴール付近で起きた爆発テロは、三人の命を奪い、二百人近い負傷者を出した。犠牲者はみな若く、うち一人は八才の少年だった。街頭監視カメラの働きで実行犯が特定された。銃撃戦 […]
2013年7月11日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 泣きながら青き夕を濯ぎけり 高澤晶子 評者: 松下カロ 数えきれないほどの女性が、夏の宵、泪を流しながら衣を洗い、濯ぎ、そして干した記憶を持っている。陽がようやく傾く頃、びしゃびしゃと水を撥ね、腕に思い切り力を込めて洗濯物を絞る。白く光る飛沫。洗濯機万能の時代でも、女には、 […]
2013年7月1日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム われ遂に富士に登らず老いにけり 川端康成 評者: 松下カロ 富士山が世界遺産に加わることとなった。今夏は例年に増して多くの登山者がこの美しい山を訪れることだろう。富士を詠んだ句は数多いが、これは異色の一作。川端康成の小説『山の音』(1954年)の主人公の心をよぎった遠景の富士で […]
2013年6月21日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 白鳥の正面という妙な位置 宇多喜代子 評者: 大畑 等 宇多喜代子の俳句の特徴は句が生まれる現場を強く感じさせるところにある。更に言えば、作者と対象の接触面から句が立ちあがってくるアクチュアルな感覚に満ちている。この句の「白鳥の正面」が「妙な位置」、これがそうなのである。通 […]
2013年6月11日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム いちじゆくやプラットホームも夢の端 金子 晋 評者: 大畑 等 句集『花骨集』より 。 小さな私鉄の小さな駅。プラットホームの端に無花果が生っている。いつもの駅なのであるが、焦点を合わすでもなく景を眺めているうちに、ああこれは夢の端、夢の続きではないかと思った。このようにこの句の […]
2013年6月1日 / 最終更新日 : 2019年1月24日 gendaihaiku 現代俳句コラム 薄なびく機罐車が曳く四十輌 加藤楸邨 評者: 鈴木八駛郎 加藤楸邨ほど旅の足跡を残した人は少ない。人間の存在の確認と、自己発見をおこなった俳人である。奥の細道紀行、隠岐紀行など、句集作品ほとんどに生きる原点をさぐるための旅の作品が集録されている。 旅は未知の土地、自然、人間 […]
2013年5月21日 / 最終更新日 : 2019年1月29日 gendaihaiku 現代俳句コラム なんという運命ぞ山も木も野分 細谷源二 評者: 鈴木八駛郎 昭和16年、細谷源二は新興俳句弾圧事件に巻き込まれ、2年6ヶ月余の拘留生活の、東京拘置所を出獄したのが、18年6月であった。当時は本土空襲や東京大空襲が始まるときであった。終戦の年の7月14日、源二、父母、妻、子供2人 […]
2013年5月11日 / 最終更新日 : 2019年1月29日 gendaihaiku 現代俳句コラム 十勝野に我立つと四顧の霞かな 河東碧梧桐 評者: 鈴木八駛郎 河東碧梧桐が正岡子規没後、日本全国遍歴を志して東京の寓居を出たのが明治三十九年八月六日であった。東北の各地を経て、翌年の二月二十五日、夷の国、函館に旅の足を踏み入れ、蝦夷地の旅がはじまった。翌日海上を渡り釧路・根室に至 […]
2013年5月1日 / 最終更新日 : 2019年1月30日 gendaihaiku 現代俳句コラム 船医上陸ジャカランタ青い花 金子皆子 評者: 山中葛子 船医と降りるジャカランタの青い森 平成17年80歳。肺の癌が背骨に転位し、痛みの強まる日々の中、6月9日『花恋』により北溟社「詩歌句大賞」を受賞された金子皆子は、21日には、7階の最上階のポスピスに移られた。その部 […]
2013年4月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 霧笛の夜こころの馬を放してしまう 金子皆子 評者: 山中葛子 『花恋』の「白い花白い秋」の章に収められているこの句は、診察治療を受けるために海辺の街に滞在する皆子の部屋の濃密な静けさと繋がってくる。 エレベーターで五階へ冬空ののっぽ 鯛焼き一つ私に秋の窓二つ 誰もいない […]