2019年4月18日 / 最終更新日 : 2019年4月18日 gendaihaiku 現代俳句コラム 実南天ときに農奴のにおいかな 中村和弘 評者:堀之内長一 中村和弘句集『東海』(2012年)より。中村和弘氏はいわずもがな、現代俳句協会会長で、田川飛旅子が創刊した『陸』の主宰である。 唐突である。ぎくりとする。農民や百姓とは訳が違う。農奴なのである。農奴解放という言葉もあ […]
2019年4月1日 / 最終更新日 : 2019年3月18日 gendaihaiku 現代俳句コラム 木の根明く胎児はなにを見てをるや 宮坂静生 評者:清水逍径 半年間雪に埋もれる雪国の人々には春が待ち遠しい。少しでも早く黒い地面を出すために、昔は道路の「雪割り」をやった。その黒い地面を歩くことが雪国の人々の春を実感する第一歩であった。豪雪地の雪もいつかは消えてしまう。里から雪 […]
2019年3月18日 / 最終更新日 : 2019年3月18日 gendaihaiku 現代俳句コラム はらわたの熱きを恃み鳥渡る 宮坂静生 評者: 齊藤泥雪 静生の主宰誌の標榜は「地貌とからだ感覚を通してうたう」というものである。本句では地貌はともかく、からだ感覚の方は標榜どおりと言えるだろう。はらわた(腸)は俳句にときおり登場するが、人間および魚の場合が多い。古くは「櫓の […]
2019年2月5日 / 最終更新日 : 2019年2月7日 gendaihaiku 現代俳句コラム れんぎょうに巨鯨の影の月日かな 金子兜太 評者: 松本勇二 第十一句集「皆之」に所収された一句。連翹の黄色がまずは目に浮かぶ。その黄色は春真っ盛りを象徴する黄色だ。それに合わせたのが巨鯨の影。このスケールの大きさは兜太先生でないと書けない大きさでまさに面目躍如。また、この二者の […]
2019年1月10日 / 最終更新日 : 2019年2月7日 gendaihaiku 現代俳句コラム 猪がきて空気を食べる春の峠 金子兜太 評者: 渡辺誠一郎 大分前のことだが、秩父に足を運んだことがあった。武甲山を眺め、秩父神社に詣でた。秩父へ向かう列車に揺られながら、山並が遠くまで続く風景のなかに、ふとこの句の情景が思い浮かんだ。山並の稜線に猪の幻影を見たような気がした。 […]
2018年12月15日 / 最終更新日 : 2019年2月7日 gendaihaiku 現代俳句コラム 両手挙げて人間美し野の投降 金子兜太 評者: 宮崎斗士 一九七二年(昭和四十七年)発行、兜太の第四句集『暗緑地誌』所収の一句。 『暗緑地誌』のあとがきに「五年まえの夏、緑林と田の熊谷に移った。(中略)それから現在まで、東京とのあいだを往来し、日本列島のどこかを歩き、地球上 […]
2018年11月20日 / 最終更新日 : 2019年1月5日 admin 現代俳句コラム 湾曲し火傷し爆心地のマラソン 金子兜太 評者: 高岡 修 他誌の同様の特集にも書いたことだが「金子兜太の一句」とするとき、私はどうしても掲出の句を選ばざるをえない。西東三鬼の、 広島や卵食ふとき口ひらく とともに、戦後を代表する俳句としているからである。 偶然だが、共 […]
2018年10月25日 / 最終更新日 : 2019年1月6日 admin 現代俳句コラム 合歓の花君と別れてうろつくよ 金子兜太 評者: 池田澄子 兜太の一句を選ぶのは難しい。所謂、代表句と言いたい作が余りにも多いからだ。そのことをもって金子兜太なのだと思う。 俳句の主題も、言葉の種類も、言葉の使い方、表現法も様々で、夫々の魅力を発散している。そのことが、時代と […]
2018年10月1日 / 最終更新日 : 2019年1月6日 admin 現代俳句コラム よく眠る夢の枯野が青むまで 金子兜太 評者: 恩田侑布子 初読のとき、兜太の辞世だ、と直感した。現実の死までにはまだ二十年もあったが、兜太の俳諧自由は、八十を前に自分自身に引導を渡していたのである。 すぐ連想するのは芭蕉の終焉の 旅に病で夢は枯野をかけ廻る であり、 […]
2018年9月5日 / 最終更新日 : 2019年1月6日 admin 現代俳句コラム 青春の「十五年戦争」の狐火 金子兜太 評者: 大牧 広 「十五年戦争」、資源をまるで持っていない日本が資源獲得のため米英に戦争しかけた財閥のため長の自己保身のため、自分の国の弱さ貧しさを顧みず昭和六年の満州事変から昭和二十年の敗戦の日のまでを「十五年戦争」と呼ばれるのであっ […]