2017年3月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 知らない町の吹雪のなかは知っている 佐藤文香 評者: 竹岡一郎 知らない町はわくわくするものだが、それが吹雪の真っ只中となるとまた話は別で、取り敢えず安宿でも良いから何処かに落ち着きたい。大袈裟に言うなら、知らない町で吹雪に巻き込まれると、街角で遭難という可能性も無きにしも非ず。そ […]
2017年3月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 国破れて三階で見る大花火 佐藤文香 評者: 竹岡一郎 「破れて」は「やれて」と読むのだろう。三階は二階より一寸高い。木造家屋だと普通は二階止まりだろうから、日常ではないところから見ているような、わくわく感がある。いろんなところが綻び破れてゆくこの時代に、日常から少し高い視 […]
2017年2月15日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 凍裂の谺なりけり夜の躰 田中亜美 評者: 中内亮玄 シングルベッドをひとつ置けば部屋の半分も埋まろうかという、学生用の小さなワンルームに住んでいた俺は、寒い夜、真っ暗な部屋でベッドに身を横たえて、カッカと火照る掌を握ったり閉じたりしていた。 身長171センチ、体重は昼 […]
2017年2月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 十日戎食べぬ肉饅二つ買う 武田伸一 評者: 中内亮玄 おう、兄ちゃん。さっぶいなか、ようこんな道端でギターなんか弾きよんな。 世間様は正月や言うて浮かれてはるけど、儂には、初詣もなんもめでとうない。儂には何ンもあらへん。 バブルが弾けて全部飛びよったからな。今さらえべ […]
2017年1月18日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 絹の言葉木綿の言葉賀状読む 宮崎斗士 評者: 中内亮玄 「おい、母さん、嘘だろ。私の年賀状はこれだけかね」 「ええ、さっき孫たちが分けてくれましたよ」 「いやいや、こりゃあないだろう。去年まではこんなに(電話帳を指で挟むようなしぐさを見せ)あったのに」 「はいはい」(笑) 「 […]
2017年1月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 寒卵ジャンバルジャンと泣いてから 栗原かつ代 評者: 松田ひろむ 句意は容易には明らかにならない。「ジャンバルジャン」(ジャン・ヴァルジャン)はいうまでもなく、ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」の主人公の名前。 ジャン・ヴァルジャンといえば、苦難に耐えて、社会の悪やしがらみと苦 […]
2016年12月17日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 狐火があるから行ける外厠 栗田希代子 評者: 松田ひろむ 作者には「百歳の笑まいいただく冬遍路」「石仏のほかは枯れ伏す野と なりぬ 」の句があるように、四国のお遍路は何回となく巡礼している。現代のお遍路は信仰というよりも、癒し、自分探しの旅となっているようだ。それにしても作者は […]
2016年12月2日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 三島忌のうどんはおかめがよろしかろ 鈴木砂紅 評者: 松田ひろむ ライトでかつ刺激的な一句である。二〇〇八年、現代俳句協会年度作品賞のなかの一句。 先行句に 三島忌の帽子の中のうどんかな 攝津幸彦(『鳥屋』一九八六年) 三島忌の帽子の中の虚空かな 角川春樹(「河」二〇 […]
2016年11月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 下京や雪つむ上の夜の雨 野沢凡兆 評者: 守谷茂泰 雪の積もった寒い日、夜更けになって気温が上がったのか、雪を融かす雨が降り始めることがある。その音は夜の静寂をさらに侘びしくさせて、妙に人恋しい気持ちにさせるものだ。「雪つむ上の夜の雨」という描写は純粋に視覚的なものだが […]
2016年11月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 肉体は何の葉ならむ夏終はる 阿部青鞋 評者: 守谷茂泰 「肉体は何の葉ならむ」という措辞から、人間の体が一枚の葉になって、風にそよいでいるイメージが浮かんだ。葉は夏の終わりの陽光を浴びて緑の色を深め、地面に濃い影を落としている。 季節の変わり目を強く意識する時期が一年には […]