2003年3月3日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 抽斗の中の月山山系へ行きて帰らず 西川徹郎 評者: 阿部完市 抽斗をそっとあける。わが思いの月山山系。私の心の中に聳え連なって月山山系。私はくり返し、私の月山山系に向う。荊軻-中国・戦国時代の刺客、の易水送別の歌などふと思われて、われながら決然として立ち向かう。「壮士ひとたび行き […]
2003年2月4日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 高校野球あり国分尼寺より帰る 武田伸一 評者: 阿部完市 夏になると、毎年甲子園だ。高校野球だ。毎年のことながら、心さわいで仕方がない。少々面目ないが、心これだけ昂ぶるのだから仕方がない。「まあいいか」である。今日は国分尼寺に行った。はるか奈良朝の頃創建された、歴史という時間 […]
2002年12月31日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 無礼なる妻よ毎日馬鹿げたものを食はしむ 橋本夢道 評者: 阿部完市 治安維持法また戦争の只中―橋本夢道は、自らの思い・思想・心のままに、その生涯をつらぬき通した。食料事情の極度の悪化―「なんでこんなもん食わならんのだ。」「こんなもの食わしやがって、うちの女房は・・・。」こんなものしかな […]
2002年12月2日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 節穴をふさぎし指の一大事 久保純夫 評者: 阿部完市 障子の節穴、壁の節穴。覗いてみた。みえた。そののぞき穴をみると丸い。ぎざぎざでまるい。そっと指でさわってみる。ざらざらと指にさわる。それから、その指で穴をふさいでみた。穴に指をそっと入れてみた。考えるほどのことではない […]
2002年11月7日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 体内の水傾けてガラス切る 須藤 徹 評者: 阿部完市 硝子を切る。切られた、その硝子の傷を見る。鋭くて、瞬間という形に見えたりする-その鋭利、その人間の動作・行動の一瞬間ということを寫生して、一句。わが身体・全身を傾けて硝子をきりりと切断する。わが体内の水、生き物の水、そ […]
2002年10月1日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 山山の静止する日や赤ん坊 津沢マサ子 評者: 阿部完市 山は動かない -動かざること山の如し、である。けれども、それ本当かな。本当はあの山この山、いつも少しは動いているんだ、と私には思える。そうに違いない。そして、そんな山たちがほんとにしんと静かになって動かない- そんな日 […]
2002年9月2日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 霧に白鳥白鳥に霧といふべきか 金子兜太 評者: 倉橋羊村 眼前の次第に霧に包まれてゆく白鳥。その白鳥に視点を定めると、回りに立ちこめてきた霧が、動きながらやや深まってくる光景が思い浮かぶ。句中での主観客観のおのずからな切り替えが興味深い。さらに一句全体をつらぬくリズムが、静か […]
2002年8月1日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 花も葉も水にゆだねて水中花 亀田虎童子 評者: 倉橋羊村 水中で開く人工の花や葉が、水中花の見せどころである。箱庭感覚を更に人口的に徹底したものといってよかろう。異次元というほどではないが、ほどほどに、興ざめにならない程度の現実離れが、たのしめるのである。精巧を極めずぎなくて […]
2002年6月3日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム うつむきて尾のある形泉飲む 右城暮石 評者: 倉橋羊村 公園などの水飲み場で、台につかまって立ちながら水を飲む姿を眺めると、尾が垂れていた方がバランスの取れる形に見えるでしょう。この姿勢では、立派な尾を持たないと見すぼらしく、間のぬけた感じになるのです。両手で水飲み台にしっ […]
2002年4月25日 / 最終更新日 : 2019年2月22日 gendaihaiku 現代俳句コラム 枇杷に臍そら豆は口一文字 和知喜八 評者: 倉橋羊村 それぞれ一筆書きのように、枇杷の実とそら豆の特徴をたくみに掴んで表現しています。どちらも初夏から梅雨季にかけて、食卓に現れる食べ物ですが、それだけになじみ深く、主役よりは脇役という存在の仕方も親しめるのです。枇杷の実の […]