抽斗の中の月山山系へ行きて帰らず 西川徹郎 評者: 阿部完市

 抽斗をそっとあける。わが思いの月山山系。私の心の中に聳え連なって月山山系。私はくり返し、私の月山山系に向う。荊軻-中国・戦国時代の刺客、の易水送別の歌などふと思われて、われながら決然として立ち向かう。「壮士ひとたび行きてまた帰らず」である。心鋭く研ぎ澄まして行くのである。抽斗をあける、という日常に、ふとわが心の非日常またわが心為のことを直感して一句。また月山は信仰の山。信仰という人間の心の事など。
 
評者: 阿部完市
平成15年3月3日