山山の静止する日や赤ん坊 津沢マサ子 評者: 阿部完市

 山は動かない -動かざること山の如し、である。けれども、それ本当かな。本当はあの山この山、いつも少しは動いているんだ、と私には思える。そうに違いない。そして、そんな山たちがほんとにしんと静かになって動かない- そんな日でもごそごそ動いている赤ん坊。身体、手足動かす。そしてそんな赤ん坊が、大人になる。人間という生き物になって、そのからだ、心動かして騒がしい。生活だ、不幸だなどとうるさい。そんな人間、すなわち私たち。
 
評者: 阿部完市
平成14年10月1日