枇杷に臍そら豆は口一文字 和知喜八  評者: 倉橋羊村

 それぞれ一筆書きのように、枇杷の実とそら豆の特徴をたくみに掴んで表現しています。どちらも初夏から梅雨季にかけて、食卓に現れる食べ物ですが、それだけになじみ深く、主役よりは脇役という存在の仕方も親しめるのです。枇杷の実のくぼみを臍というのも妙味のあるとらえ方ですが、一方のそら豆の「口一文字」も、その表情のポイントをしっかりと特徴づけています。省筆の面白さに巧まざるユーモアがあるのも見どころです。
 
評者: 倉橋羊村
平成14年4月25日