2012年3月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム わが桜正面に河原小学校 宇多喜代子 評者: 久行保徳 故大中祥生創刊の「草炎」が通巻三百号に達し、その記念号を昨年七月に発刊。その折の招待作家近詠としていただいた五句の中の一句である。 現代俳句協会会長の宇多さんは、私の住む山口県周南市(当時徳山市)の出身。 昭和十年 […]
2012年2月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 薔薇匂ふはじめての夜のしらみつつ 日野草城 評者: 久行保徳 「ホトトギス」の巻頭を十九歳の京都帝国大学生の時に占めるという、早熟ぶりを発揮した日野草城の、昭和九年に発表された「ミヤコホテル」の中の一句である。 結婚披露宴も、最近では式場の専属司会者が宴を進める時代になった。が […]
2012年2月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 一本落葉松 しみじみ 日傘さす妻で 伊丹三樹彦 評者: 久行保徳 駅前の書店でよく立読みをしていた。今のように立読みが歓迎されない頃であったが、当時のこの店は結構繁盛していて余り気にならなかった。 昭和四十二年の春であったろうか、例のごとく奥まった所にある詩歌コーナーで本日の逸品を […]
2012年1月31日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム お遍路が一列に行く虹の中 風天 評者: 鶴岡しげを 風天は、映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎を演じた渥美清さんの雅号である。本名・田所康雄、昭和三年三月十日、東京市下谷区車坂(現台東区東上野)に生れる。 平成八年(一九九六)八月四日、渥美清さん逝去が報道された直 […]
2012年1月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 秋風の荷とねむりゐる渡り漁夫 高橋麻男 評者: 鶴岡しげを 一句の中に秋の季語と春の季語の入った季重ねじゃないの、と怪訝に思われるかもしれない。無理もない。<秋>は秋の季語であり、<渡り漁夫>は春の季語であるから。 春さき鰊の漁期が近づくと、網元に雇われて、北海道へ渡る漁夫の […]
2012年1月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 砂川の砂の流れの春浅し 大竹孤悠 評者: 鶴岡しげを 砂川の砂の流れの春浅し 大竹孤悠 昭和四十年(一九六五)春のある朝のことである。私はいつものように家を出て、いつもの電車に乗り、いつもどおりの駅に降りた。そして、太平洋と阿武隈山地に挟まれた、細長い地形の工業都市・日立 […]
2012年1月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 元日の大地素足になりにけり 井上弘美 評者: 橋本 直 句集を読んでいて、初読、一瞬意味が分からなかった。無意識に「大地が素足に」と読んでしまったからだ。それはそれで高濱虚子の「年を以て巨人としたり歩み去る」風の比喩とも読め、それなりの面白さはあるが、「大地」はどうもぼんや […]
2011年12月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム ペンギンと共に師走を肱二つ ドゥーグル・J・リンズィー 評者: 橋本 直 ペンギンは漢字で「人鳥」と書く。それはもちろんあのぎこちない二足歩行に由来するのだろう。人間はどうにも種としては孤独で、その寂しさのあまりに「類人猿」だけでは飽き足らず、二足歩行の一事を以てこの鳥を「人」に見立ててしま […]
2011年12月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 山吹や喉がふくれて啼く蛙 高濱虚子 評者: 橋本 直 各務支考『葛の松原』によれば、「蛙飛こむ水の音」を得た芭蕉に、其角が「山吹」を上五においてはどうかと言ったとか。芭蕉はその弟子の進言を入れず、「古池」をもちいてあの一句が成ったのだという。巷間、本意としては蛙が鳴くもの […]
2011年12月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム うつくしきあぎととあへり能登時雨 飴山 實 評者: 柏田浪雅 兜太の「造型論」作句プロセスをもって掲句を鑑賞してみた。 冬の越前をテーマとして出かけた金沢で妙齢の女性に会う。触発された感覚が、「創る自分」の働きにより様々の意識に作用していく。土地の歴史、町の佇まい、華麗なる文化 […]