2016年10月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 葉月葉の日これは雨の日 阿部完市 評者: 守谷茂泰 今年の九月は晴れた日がほとんどなく、毎日雨空の下で、天気予報に並ぶ傘マークをにらみ続けていた。そのためか俳句を読む時も無意識に雨の句に目が止まるようになっていた。 阿部完市氏は雨が好きらしく、「栃木にいろいろ雨のたま […]
2016年10月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 兵なりき死ありき星辰移り秋 文挾夫佐恵 評者: 佐怒賀正美 前回に加えて、文挾さんの戦争体験を総括したもう一つの晩年作を紹介しておきたい。作者の場合、戦争は結婚し長女誕生から間もなく訪れた。戦時中の波乱万丈の生活は、 炎天の一片の紙人間(ひと)の上に 夫佐恵 に始まる。 […]
2016年9月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 艦といふ大きな棺(ひつぎ)沖縄忌 文挾夫佐恵 評者: 佐怒賀正美 こんな句がある。 軍艦が沈んだ海の 老いたる鷗 富澤赤黄男 戦争の悲惨な実態を目の当たりにした当時の若者たちも、戦後七十年が経ち「老いたる鷗」になった。赤黄男の鷗よりもさらに大きな時間を抱え込んだ老鷗は、何を考え […]
2016年9月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 凌霄花(のうぜん)のほたほたほたりほたえ死 文挾夫佐恵 評者: 佐怒賀正美 これまで何気なく愛誦していた句が突然深々と見えてくるときがある。読者の成熟を待っていてくれる句なのだろう。この句もその一つ。ちなみに作者は九九歳のとき句集『白駒』で蛇笏賞を受賞し、翌年百歳で他界した。 「ほたえる」と […]
2016年8月18日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム うつしみの/くらき底ひに/湧く/いづみ 武藤雅治 評者: こしのゆみこ うつしみの くらき底ひに 湧く いづみ 『花蔭論』所収の第一句目の句。全編多行書き。一語一語の言葉の美しさや音が視覚的になって水鏡のような響きを感じた。 『花蔭論』は2 […]
2016年8月3日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 灯が入るみんな空似をして帰る きゅういち 評者: こしのゆみこ 「空似」がなんとも不思議。この「空似」とはいったい誰の何の「空似」?日が暮れて家に灯が入る頃、みんな仲良くにこにこ笑って「またあしたね」等と言い合いながら帰って行く時の明るい顔つきの表情を空似といっているのだろうか。「 […]
2016年7月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム おほまかに父は描かれ九月果つ 嵯峨根鈴子 評者: こしのゆみこ 嵯峨根鈴子さんの第三句集「ラストシーン」所収。この句の父親像がいろいろに読めてしまってとまどう。一般的な読みとして、幼い子どもがお父さんの顔を「おおまかに」眉や目や口を描いたということだろうか。ひょっとしたら顔の○だけ […]
2016年7月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 黄金週間畢(おは)る高嶺に一墜死 馬場駿吉 評者: 木村聡雄 今や、夏休み/年末年始と並ぶ我が国の一大イベントであるゴールデンウィーク(GW)は、他の二つの歴史的バカンスにはない爽やかな気候も加わって、我々にGWには「何を為すべきか」(否、無を為すべき…等々)という大いなる悩みを […]
2016年6月16日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム 土を出て直ぐ松風へ蟻のぼる 秋元不死男 評者: 木村聡雄 句集『瘤』(昭和二十五年)より。休むことを知らない蟻の様子を写した句だが、ここに描かれた「蟻」は巣を出るや、食糧を探すためか反射的に高いところへのぼってゆく。まもなく天辺に達するころには、餌探しはもう旅の目的ではなくな […]
2016年6月1日 / 最終更新日 : 2019年1月11日 admin 現代俳句コラム わが孤絶の 無燈の軍艦(ふね)は脱出せり 富澤赤黄男 評者: 木村聡雄 『黙示』(昭和三六年)の一句。この第三句集を纏めた翌年、六〇歳で他界した。本句集には 満月光 液体は呼吸する 草二本だけ生えてゐる 時閒 など、俳句における抽象性を表現した優れた作品が多く収められているが、掲出の作品はキ […]