2011年11月21日 / 最終更新日 : 2019年2月5日 gendaihaiku 現代俳句コラム ゆびさして寒星一つづつ生かす 上田五千石 評者: 柏田浪雅 第八回俳人協会賞を受けた五千石の第一句集「田園」の序において、秋元不死男をして「後事を託するに足る男」と言わしめた五千石は、確かな歩みで畢生を俳句大衆の指導に尽くした人であった。 掲句は句集の巻頭を飾る一句であり、そ […]
2011年11月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 夕日影競漕赤の勝とかや 高濱虚子 評者: 柏田浪雅 虚子が、大正年代の東京高商(後の一橋大学)と東大の対戦した競漕を見たときの一句である。人間性に幅のある好奇心の強い虚子を彷彿とさせる。 「春風や闘志いだきて丘に立つ」の一句で知られる虚子の大正二年の守旧派宣言は、碧 […]
2011年11月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 雪だるま泣きぬにわかの月あかり 寺田京子 評者: 船矢深雪 冬の北海道雪の多い札幌では、子供達の作る雪だるまが寒夜の戸外にポツンと佇んでいる。子供の遊び相手の雪だるまを大人も一緒になって作り、それが「さっぽろ雪まつり」の雪像展へと発展した。今では国際的な冬のイベントとして内外か […]
2011年10月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 大鷹の空や一期の礼をなす 宇多喜代子 評者: 船矢深雪 大空を悠々と舞う大鷹の英姿に、作者は一期の礼を深々と、それに対して大鷹も一期の礼をする。この表現は作者宇多喜代子さんのために用意された特別の言葉であり、俳人宇多喜代子のwhole life がこの一句から彷彿する。 […]
2011年10月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 絵硝子の裏に木の葉の降りつゞく 桂 信子 評者: 船矢深雪 聖画のステンドグラスを仰ぎながら注がれる光線を受けて佇んでいる作者の胸に去来するものは何だろうか。 ザビエル記念聖堂と前書のあるこの句に魅かれている。 絵硝子を透かしては見えないが、戸外には木の葉が降りつづいている […]
2011年10月1日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 髭白きまで山を攀ぢ何を得し 福田蓼汀 評者: 亀田蒼石 山に魅せられた人が私の近所にいた。でも別にヒマラヤを目指そうとしたわけでもなく登山の記録を作った訳でもない。ただ無性に山が好きだったのである。家庭は裕福ではなく生い立ちはそれなりに複雑であった。わずかな水田と臨時雇など […]
2011年9月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 音楽を降らしめよ夥しき蝶に 藤田湘子 評者: 亀田蒼石 湘子の処女句集『途上』にこの句がある。前書きには「わが祷り」とある。広島に入って原爆慰霊碑に佇み「春疾風供華みつつ頭は垂れざりしか」を詠み十数句の最後に前掲の「音楽を降らしめよ夥しき蝶に」を読んで広島を去っている。 […]
2011年9月11日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 虚子の忌の大浴場に泳ぐなり 辻 桃子 評者: 亀田蒼石 はじめて出あったときその大胆不敵で破天荒なこの句に完全に圧倒さてしまった。しかも作者は女性である。「短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎」竹下しづの女、「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり」三橋鷹女の両句をとっさに思い浮かべた。 […]
2011年9月1日 / 最終更新日 : 2019年2月7日 gendaihaiku 現代俳句コラム 四方霞み野姥は川とひらきあう 森田 廣 評者: 野田哲夫 悠遠のエロス。人と自然との渾然とした交感が、句集の中水のように流れている。 「出雲というトポスが醸しだす血脈の感覚と言っていいのかもしれない。」と句集の帯に書く。 乳遣り女の乳房を蹴って雁帰る 春暁の巨き卵を産 […]
2011年8月21日 / 最終更新日 : 2019年1月31日 gendaihaiku 現代俳句コラム 後ろ来る子が口答へ冬田道 山本小品 評者: 野田哲夫 小学校の教員として、長年小学校に俳句を広め指導して来た作者が、子供たちを対象にした作品に絞って編纂した句集「よい児の四季」の一句。 春雪や片手の猿が校庭に 春の風邪瞳潤ませ無言の子 皆勤賞握る子スキップ春う […]