後ろ来る子が口答へ冬田道 山本小品  評者: 野田哲夫

 小学校の教員として、長年小学校に俳句を広め指導して来た作者が、子供たちを対象にした作品に絞って編纂した句集「よい児の四季」の一句。
  春雪や片手の猿が校庭に
  春の風邪瞳潤ませ無言の子
  皆勤賞握る子スキップ春うらら
  居残りの児に教室の亀の鳴く
  子等去んで月の乗りたる三輪車
子供たちは健康で明るくなくてはならない。温かく優しい校長先生の眼差し。

 次々転任する先の小学校で、俳句を教材に指導した。
 教職を退いて13年、今なお小学生たちの俳句指導に力を緩めず、
 警察学校の主事として若い警官たちを、
 刑務所の篤志面接委員として服役者達を、
 俳句をもって心の豊かさを導く。

 一方、海外旅行に出かけては、五日程で三百を超える句を持ち帰る多作。
  冬耕の女サリーを巻き直す
 平明にして余韻のある句、伝統的な文語表記、真・善・美の作風を師に厳しく教えられたと云う。

「子供俳句は、別のジャンル」の言葉には説得力がある。

出典:『よい児の四季』平成15年5月刊
評者: 野田哲夫
平成23年8月21日