2008年12月21日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 蟋蟀に似て来し母の語り口 さいとう白砂 評者: 阿部完市 蟋蟀・こおろぎが、静かにまたにぎやかに鳴きはじめる秋口。謡曲「松虫」―秋の虫たちの、口を揃えての鳴き声のありさまを、古の機織りの音にひきくらべながら、<きりはたりちょう つづりさせちょう きりぎりす蜩(ひぐらし) 色々 […]
2008年12月21日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 日記買う余命限りの無きごとし 守田椰子夫 評者: 阿部完市 昨年の十二月半ば、十五日の夜半。呼吸困難、胸内苦悶などと、教科書にあるとおりの自覚症状。救急車がよばれて、三十分ほどのS病院に入院した。担架にのせられて、運ばれた。ふと見上げた夜空。星がきらきら。「あれ、きれいですな」 […]
2008年12月11日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 木葉髪あはれゲーリークーパーも 京極杞陽 評者: 宇多喜代子 よきアメリカの良心の象徴であったゲーリークーパーを見てきた世代の一人である私には、切なくも身にしみる「木葉髪」である。「あはれ」が、あの善良なアメリカ人を演じて右に出るものはないといわれたクーパーになんとよく似合うこと […]
2008年12月1日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム まつぴるま河豚の料理と書いてある 京極杞陽 評者: 宇多喜代子 「書いてある」が「食いに行く」ではまことにつまらなくなる。この「書いてある」のおかしさ。この作者の天然のおおらかさが、おかしさがサラリとでていて、じつに好もしい。さてさて、京極杞陽は「まつぴるま」にこの「河豚の料理」を […]
2008年11月21日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム アドルムを三鬼にわかつ寒夜かな 横山白虹 評者: 宇多喜代子 アドルムは催眠鎮静剤だが、大量に飲むと命を落とす。戦後の一時、アドルムによる自殺がはやった。そんなことを思い出しながらこの句を読むと少なからずぞっとするが、何のための使用であれ、医師としての白虹ならではの句である。 句 […]
2008年11月19日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 墓標立ち戦場つかのまに移る 石橋辰之助 評者: 谷山花猿 「俳句研究」第五巻十二号(昭和十三年十二月号)掲載。年間自選作品としてだされたもので、無季の戦火想望俳句である。このころ、辰之助は新宿帝都座の照明係をしており、西東三鬼・石田波郷・高屋窓秋らが遊びに来てはニュース映画を […]
2008年11月11日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 冬の夜の湯槽の底を踏まえゐる 日野草城 評者: 宇多喜代子 句集『花氷』を読み返していて目についた句。この風呂は、たぶん五右衛門風呂だろう。鉄製でできた湯船が熱くなるので、底板を両足で「踏まえ」て身を沈める。いまほどの暖房設備がなかったころ、冷えたからだを芯から温かくするのは、 […]
2008年10月30日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 母さんは夕焼を着て産んだ 横須賀洋子 評者: 村井和一 夕焼に包まれての出産。出産の時刻は潮の干満に関係があるといわれるが、この句の出産は夕刻。 気象上、夕焼の翌日は晴天になるといわれる。夕焼に包まれての出産には明るい明日が予告されているかのようだ。 「夕焼を着て」とい […]
2008年10月17日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム ばか、はしら、かき、はまぐりや春の雪 久保田万太郎 評者: 村井和一 にぎり鮨のネタづくしのような句。作者の遊び心だろう。寿司屋のカウンターでこれらの貝類をつまみにいっぱい酒を飲んでいるような情景が思い浮かんでくる。 「ばか」は、ばか貝の身、「はしら」は貝柱のことだが、ばか貝の柱も珍重 […]
2008年10月7日 / 最終更新日 : 2019年2月21日 gendaihaiku 現代俳句コラム 真夏日の指鉄砲に敵機なし 佐藤晏行 評者: 村井和一 第2次世界大戦の太平洋戦争で、日本がアメリカに無条件降伏をしたのは、昭和20年の暑い夏の8月中旬であった。 その数日前まで日本の各都市は米軍の爆撃機B29が落す焼夷弾の空襲にさらされていた。B29の機影を照らすサーチ […]