鶴が来る山河にまじる偽山河 澁谷 道 評者: 宇多喜代子

 鶴が渡来する季節にきちんと鶴が来る。これがまことの「山河」というものだと思うのです。ところが、いつしかまやかしの山河があちこちに出来はじめ、真贋の見分けのつかなくなった目を持つ人たちが「偽山河」に嬉々として群がるようになりました。だけど鶴の目はごまかせません。この句はべつに「偽山河」を告発している句ではないのですが、「鶴」という孤高の趣を持つ候鳥を置いたことで「偽山河」の「偽」を大きく見せる句になりました。
 評者: 宇多喜代子
平成13年12月3日