初夢のなかをどんなに走ったやら 飯島晴子 評者: 宇多喜代子

 ゆっくりと歩く夢というのはめったにないのではないでしょうか。追われたり追ったりしてもはやこれまでというところで目が覚めるというのが、多くのひとの夢体験のようです。初夢だけはそんな思いをしたくないと思っていても、やっぱり「走る」夢をみてしまったというのですから、気の毒なような滑稽なような、飯島晴子独特の奇妙な味わいがあります。ダイアローグのように見えて、じつは独白の哀愁をたたえた句です。
 
評者: 宇多喜代子
平成14年1月7日