獏枕なにがなんでも吉夢とす 宇多喜代子 評者: 寺井谷子

 めでたくも新しき年を迎えられたこと思う。掲句、会長職を引き受けられてからの怱忙を重ねると(勿論、この一句は会長就任以前の作だが)、身につまされるものがある。
 それにしても、現代の女流作家(これも昨今「女流」ではなく、「女性」でなければならないと言われているが)で、「諧」の、それも大振りな「諧」の句を書ける筆頭であろうか。
 「なにがなんでも」という強引を表わす言葉が、「獏枕」と「吉夢」で、豊かな味を醸し出す。同時作であろうか、〈夢に出て誰が誰やら宝船  喜代子〉もある。
 
評者: 寺井谷子
平成19年1月15日