負の数(すう)の幾桁もある夏の草 和田悟朗 評者: 安西 篤
第五句集『法隆寺伝承』所収。作者は化学者で、長年、物質や数式に馴染んできた。だから、物を見るときも、物質の構造や運動としてみるところがあるようだ。
この句の「夏の草」を「負の数の幾桁もある」ものとみる見方には、作者独特の詩的直感があることは紛れもない。夏草の、やや暗みを帯びた雑然たる繁茂ぶりに、エンドレスに続く負の数をみてとつた。一見、混沌としか見えぬ夏草の繁みに、ある記号的な秩序を見ようとしている。それは雑然とたち騒いでいる一群でありながら、一つの時間的な変化さえ感じられる記号の順列でもある。そんな詩的直感に作者はたえず誘惑されるようだ。それが和田俳句の個性を形成している。
この句の「夏の草」を「負の数の幾桁もある」ものとみる見方には、作者独特の詩的直感があることは紛れもない。夏草の、やや暗みを帯びた雑然たる繁茂ぶりに、エンドレスに続く負の数をみてとつた。一見、混沌としか見えぬ夏草の繁みに、ある記号的な秩序を見ようとしている。それは雑然とたち騒いでいる一群でありながら、一つの時間的な変化さえ感じられる記号の順列でもある。そんな詩的直感に作者はたえず誘惑されるようだ。それが和田俳句の個性を形成している。
評者: 安西 篤
平成19年7月30日
平成19年7月30日