美しき稲妻となり遠ざかる 石田よし宏  評者: 和田浩一 

 句碑は刈田の向こうに雪の男体山を遙かに望む、栃木市野中町の「魔方陣スーパーカーミュージアム」の庭園に建立された。
 栃木県現代俳句協会の創立時より、会長として二十有余年ご指導いただいた。その感謝を込めて栃木県現代俳句協会により、建立された。
 氏が強く保存を訴えて移築された旧栃木駅舎の脇である。
 栃木は近年は少なくなったが、雷の多い土地であり、稲の結実のときの稲妻は特に多かった。
 句碑に刻まれたこの句は第一句集『炎天の幹』の初期作品として収められている。
 巻頭から六句目のものであるから、二十代後半の作品と思われる。
 復員後、結核を発病し、股関節カリエスを病まれ、二十歳から十年間の闘病生活を強いられた。その闘病生活の中で、当時、石橋病院の院長だった木村三男に師事した。
 そんな青春期の死と直面する生活の中で、生まれたのが、この情感あふれる美しい作品であった。その他の作品には
  氷壁は女の誘ひかもしれぬ
  わがたましひ一つにあらず青芒
  枯れ切ってピカソの天地左右かな
  薄翅蜉蝣とぶ空間のずれを飛ぶ
  つうのこゑ与ひやうの声や涅槃西風
等がある。

出典:『炎天の幹』
評者: 和田浩一
平成23年4月11日