とびからすかもめもきこゆ風ゆきげ 金尾梅の門 評者: 十河宣洋

 昭和23年の作品。俳句はもっとやさしく書くべきではなかろうかという作者の思いが込められている。このころの梅の門には、かな書きの作品が多い。学校では昭和22年4月からひらかなが採用され、新聞などもひらかな・現代かな遣いに変わっていった。
 厳しい冬から春へは、戦争から解き放たれた人々の生活を冬から春へ変えるものであった。春の訪れを心待ちにしていたもろもろの生き物の期待感がこの句にはある。生き物と共生する人間の心情が流れている。
 季節の移ろいと時代の移り変わりが見事にマッチした作品である。
 明治33年(1900年)7月17日富山県生まれ。大須賀乙二、高田蝶衣、臼田亜浪に師事。昭和27年上京、角川書店入社、34年小学館入社。現在の角川文庫、小学館の辞典類などは梅の門の発案といわれている。昭和55年12月9日歿。
 昭和22年俳誌「古志」創刊、昭和27年「季節」と改題。没後、井口荰子、田辺加代子と継承されたが平成20年年終刊。
 句集『古志の歌』『鳶』『烏』『鷗』『鳰』
 昭和34年現代俳句協会顧問。

出典:『金尾梅の門全句集』

評者: 十河宣洋
平成27年11月1日