白牡丹繰返していふことはせず 加藤楸邨 評者: 津根元潮

 一見平凡な相を持つ作者の同じく未発表句だが、<鰯雲ひとに告ぐべきことならず>の同作者の句に似ている。この白牡丹の句も白牡丹だけにイメージを当てて、作者は沈黙を守っているだけなのだ。できるだけ自己表現を抑えて何を言いたいのか。何が真実なのかを、自分で自分に問いかけているように見える。末端の句の技巧を避けて、本質に迫る何故、なぜという自分も含めた問いかけが、作者に特に多い。これは一見平凡に見えて物事の真を問いかけている作者の姿勢が浮き彫りされていると思う。
 
評者: 津根元潮
平成15年5月12日