人の死は灯をこうこうと朧なり 和知喜八 評者: 山崎 聰

 知人の訃報に接し、通夜に駆け付けたのであろう。「こうこう」は「皓皓」か或いは「煌煌」か。いずれにせよ、明るく灯が点っている形容であろう。通夜のときの照明は何故か常より随分明るい。
「人の死は」と、真正面から詠い出していながら、「灯をこうこうと朧なり」と、そのときの状況を印象風に云っているだけで、一切の情を述べていない。だから却って作者の衝撃が一層沈潜して、靜かに読者に伝わってくる。
 人間探求派加藤楸邨の弟子らしく、生涯人間の生死や、もののいのちに強い関心を示し続けた。
 
評者: 山崎 聰
平成17年8月29日